Dr.ギャップ
2023-11-16 22:36:03
72744文字
Public 二次創作短歌オンリー歌会
 

2023二次創作短歌オンリー歌会(メイン歌会)

2023年秋に開催した二次創作短歌オンリー歌会(メイン歌会)の参加作品とコメント一覧です(参加申込順・敬称略)。

企画詳細→ https://privatter.net/p/10391147
企画用ハッシュタグ→ #二次創作短歌オンリー歌会


石ころ


葡萄より美しい目をした君に言葉ではなく薔薇のお菓子を


【選評コメント】
★葡萄より美しい目という言葉と薔薇のお菓子の対比が森茉莉先生の作品や70年代の少女漫画のような耽美な雰囲気でとても好み。──じゃしんちゃん

●詠み手の方が考えた原作と違っていたら恐縮なので既知の作品と極力重ね合わせないようにしていましたが、この歌だけは瞳を「葡萄」に例えた迷言を残したキャラクターが思い浮かび、最後まで離れませんでした。
彼はこのような気持ちを抱きつつさらっと素敵なお菓子を出してきそうなキャラクターのため、思わず和んでしまいました。作品を間違えていたら申し訳ありません。
葡萄に目、薔薇にお菓子と食べるものと食べられないものが対になっていてとても素敵です。──海月雪夜

●トレイ・クローバー!!!!誰をたぶらかそうとしているんですか!!?!???!(大好きです)──南天

●情景が圧倒的に美しいです。なんとなくですが騎士と騎士が想いを寄せる姫のふたりきりのお茶会の光景が浮かびました。──月ノ華

●「葡萄より美しい目」をした「君」。黒く輝く瞳の比喩として、脱帽です。言葉やルールに雁字搦めの「きみ」には、「お菓子」の方が届く。長い時間をかけて、関係を構築してきた語り手には、分かっているのでしょう。──おかのきくと

●真に美しいものへの賛美に言葉は無力。そんな相手がいたら、自分が美しいと信じる最善のものを捧げることしかできない。そんな心酔の気持ちがうかがえました。「葡萄より美しい目」という表現が中東の詩のようで、アラビアンナイトの世界をイメージしてしまいました。──ゆの

●主体が「君」のことをとても大切に思っていることが伝わってくる短歌です。言葉ではなく薔薇のお菓子を、に真実ではなく甘い嘘を、というふうに解釈したりなどしました。関係性が気になります。──四月

●ひとつまえの歌は「眼球」を翡翠にたとえ、こちらの歌は葡萄が「目」の比較対象に出されているのを面白く読みました。
葡萄を表現する言葉においしそうではなく美しいを選ぶ主体の感性が愛おしく、また、葡萄は言わずもがな美しいのですがと前提条件が透けて見えるのも微笑ましいです。そしてその主体が果実より美しいと言い切る「君」へ差し出すのもまた「お菓子」。薔薇ではなく、薔薇のお菓子。口下手な人間が何かを語るとき、自分の領域に引き付けてからでないと言葉を見つけられないように、大事な「君」について話すなら食べものと絡めて語らずにはいられない。主体が食べものへ抱いているそこはかとない憧憬と執着の波動を感じ、私はそこに好ましさを感じてなりません。──池田いくら

●一読して反射的にアプリゲーム《ディズニー ツイステッドワンダーランド》に登場するトレイ・クローバーの短歌では……!? と思ったのですが、同時に(あの人の歌がこんな端正に……?)とも思ってしまい、トレイ先輩ごめんなさいの気持ちになりました。また原作が全く別でしたら作者の方にもすみませんでした……
 この歌からトレイ・クローバーを連想したのは、ゲーム内イベント『ゴースト・マリッジ ~運命のプロポーズ~』において彼が他者の瞳を葡萄にたとえてその美しさを褒めようとするシーンがあったこと、所属寮のモチーフに薔薇があること、また彼がお菓子作りを趣味兼特技としていることが挙げられます。またゴースト・マリッジはすごく大雑把に言えば「偽のプロポーズ」を行うというストーリーでした。これらを踏まえるとこの短歌は、
〈葡萄より美しい目をした君〉=イベントでの求婚相手とは別の、より愛している/大切な君
〈言葉ではなく〉=トレイがプロポーズに用いた求婚ソングは歌詞の比喩が独特(的外れな感がある)ともっぱら評価されている
〈お菓子を〉=自信のある手作りのお菓子を贈ろう
 という風に読めました。〈薔薇の〉は、彼が自分を〈薔薇の〉寮の人間として置いているのか、あるいは薔薇がアイコンとなっているリドル・ローズハートが〈君〉だからなのかなと想像します。
 また〈葡萄より〉と自分で切り出しながら、〈言葉でなく〉とあっさり撤回する仕草にもトレイ・クローバー味を感じるように思いました。──Dr.ギャップ

●「言葉ではなく薔薇のお菓子を」という下の句が印象的ですてきです。差し出すよう終わり美しい君を甘やかす雰囲気の中にどことなく毒のような惑わすようなニュアンスを感じました。言葉ではなくお菓子という所が本心が別にある?と思わせるのかもしれません。その隠されたものが作品・キャラクターがわかった時に深みを増すんじゃないかとわくわくしています。──山と森と街

【作者コメント】
みんな大好きトレイ・クローバーの歌です(ツイステッドワンダーランド)。ゴスマリイベントめちゃくちゃ好きなんですよ。──石ころ



盾としてお前に傷を付けぬため赤く染まったこの手は取るな


【選評コメント】
★きっと好きなタイプの関係性を詠んでいる短歌なのではないだろうかと思い、コメントを残します。
誰かを傷つけないために、ヴィランになったりするキャラに心を持っていかれがちなので、この短歌にそのような要素を感じ、惹かれました。
おそらく、守りたい対象はその人を嫌いになれない/好いているのだと推察します。
きっと、赤い染まった手を見ても、何度も手を伸ばし、その人と手を繋ぎたいのかなと。
どの作品のどの人なのだろうかとても気になります!──隙間

★結句のカーブがすごく好きです。「お前に傷を付けぬため」とあるのでその分主体が傷を負っていると思うのですが、そうまでして守った相手には何も求めない、これは愛の話じゃないですか?最後「取るな」と命令形で終わるのも格好いい。主体の人柄、というか性格が垣間見えるようで、最高の締めくくりだと思いました。──池田いくら

●「お前」の為に手を汚す、語り手の健気さ。同時に、自分を汚いと感じる自己卑下。相手のために戦うことは美徳のはずなのに、そう思えない、ほの暗い気持ちを感じました。語り手が一方的に引く断絶に、胸が痛みます。──おかのきくと

●盾になったことすら「お前」に伝えていないような、徹底した献身を感じますね。この手は取るな、ということは「お前」はまだこの主体との関わりを求めているのでしょうか。原作も気になる短歌です。──四月

●主体は大切な誰かを護るために手を汚したのでしょう。暗殺者のイメージが浮かびましたが、盾と言っているので、もっと堂々とした状況かもしれません。結句が「この手を取るな」ではなく「この手は取るな」なのが効いていて、では何なら手に取っていいのかと、相手は思うことでしょう。本当は触れてほしいという主体の思いが隠されているように感じました。──ゆの

●「お前を守って手を汚した“私”はお前にはふさわしくない」という構図にベタの良さを感じつつ、〈赤く染まったこの手〉に〈盾〉と来るところに、そこに"私"の矜恃があるんだと味わい深く感じました。剣ではなく盾、あくまで〈お前〉を守ること、〈傷を付けぬ〉ことを第一に置いている人なんだなと。
 〈お前〉〈取るな〉といった言葉遣いから一種の対等さや親密さを感じ、たとえば従者のように身分差のある関係ではないと想像しました。“私”が〈お前〉の盾となっていのも、身分の差というより役割の差、あるいはもっと単純に”私”がそれを自らに任じている、矜恃にしている、という印象があります。
 〈赤く染まったこの手〉を〈お前〉が手に取ったとしても〈お前〉に傷を付けぬという役割に背くことはないだろうと思うのですが、それを良しとしない・したくない(傷を付けたくないだけでなく汚したくないという思いがある)のだろうところに“私”のエゴが見えてソワソワします。──Dr.ギャップ

【作者コメント】
ファイアーエムブレム風花雪月のフェリクス・ユーゴ・フラルダリウスの歌です。ディミトリの盾としてだけ生きることを決めたフェリクスを思って詠みました。──石ころ