Dr.ギャップ
2023-11-16 22:36:03
72744文字
Public 二次創作短歌オンリー歌会
 

2023二次創作短歌オンリー歌会(メイン歌会)

2023年秋に開催した二次創作短歌オンリー歌会(メイン歌会)の参加作品とコメント一覧です(参加申込順・敬称略)。

企画詳細→ https://privatter.net/p/10391147
企画用ハッシュタグ→ #二次創作短歌オンリー歌会


谷澤


踏み外すことは容易い つまらない大人ほど信じているそれを


【選評コメント】
●「容易い」と言いながら「信じている」ということは、踏み外すことが実行されていないのだと感じました。実行できていない他者を蔑んでいるような、はたまた主体自身に対するもどかしさのようなものを感じました。──toico

●子供の私と大人の私がバタバタしております、踏み外した故の言葉なのかな、と想像してます──てくてく

●個人的に、僕のヒーローアカデミアの荼毘、ヒプノシスマイクの山田一郎(MCD/TDD時代)、HUNTER×HUNTERの旅団のみんなを連想しました。
はじめに読んだ時に、どこか寂しさを抱えながら、強く生きている/生きてしまっている/生きようとしている表情を感じる短歌だなと感じ、抉られたような気持ちになりました。
解説がとても楽しみな短歌の一つです。──隙間

●語り手は「つまらない大人」になりたくない、少年少女でしょうか。踏み外すことが難しい、若者の余裕のなさ。裏を返すと、自由で、何にでもなれるということ。社会への理不尽さとちょっとした諦観を受け取りました。──おかのきくと

●「それ」は、社会のルールやしがらみ、束縛のようなものと受け取りました。パラダイムのような、もっと大きなものを指しているのなら革命の歌ですね。既成の常識を疑いもせず信じて不自由になっている大人へ、挑発的な視線を向ける子どもの歌のようです。しかし、すでに「それ」を踏み外してしまった誰かの自嘲的な呟きのようにも読めるところが面白いです。──ゆの

●多分この「それ」は内面化された「常識」のたぐい、しかも「つまらない大人」が信じるものと限定されているので、反抗期まっしぐらの少年少女なのかなと思います。容易く踏み外せるけれど、今はまだ踏み外してはいない。まだ踏み外していないという自覚があるんですね……ここに、結局は自分も踏み外せてはいないという諦念が見える気がします。──南天

●思春期の青さのようにも、大人を(さまざまな意味で)翻弄する若者のようにも読み取れる短歌でした。57、577の区切り方が、主体の尖っているパーソナリティを感じて、個人的にとても好きです。──四月

●それぞれの単語の意味は一読して取れるのですが、どういう内容、状況が描写されているんだろうと踏み込んでいくと、いろいろと考えたくなる歌でした。この歌で主体は第三者の立場にいると思うのですが内容は結構メタ的で、踏み外す側・つまらない大人側双方への造詣も深そうに感じられます。主体も過去にどちらかの、もしくは両方の立場を経験したことがあるのか、または身近な人を見ていたことがあるのか。淡々とした詠みぶりに根雪のような諦念を感じました。──池田いくら

●〈踏み外すことは容易い〉を反語として取ることもできるかなと思いつつ(踏み外すことは容易い。しかしそうはしない)、「つまらない大人ではない自分」に自負のある若者の歌として受け取りました。冒頭57のきっぱりした言い切りの形から、反語ではなく素直に受け取って良いかなと。
 〈それ〉に何が入るのかというところから想像が広がります。自分がぱっと思いついたのは「年功序列」や「子どもの愚かさ」や「社会通念」あたりだったのですが、はてさて……「つまらない大人ではない自分」への自負と同時、それによって〈つまらない大人〉より上に行くのだという気概のようなものも感じました。──Dr.ギャップ

【作者コメント】
スラムダンクの水戸洋平のイメージです。──谷澤



戦火とふ天鵞絨の上へ降りたてば王よここが腕の見せどころ


【選評コメント】
★詠んでて、「風の谷のナウシカ」かと思った──じゃしんちゃん

●戦火で荒廃した国の持つ儚さと新しい王が持つ希望の対比が鮮やかに伝わりました。この国が長く繁栄すると良い、と思わず願ってしまいました。
特に天鵞絨の表現が良かったです。──海月雪夜

●戦火を天鵞絨に見立てているのが好きです。血みどろで汚れた戦場でも、高潔であろうとする「王」が見えます。熟語の多用により、パッション、高貴さ、様々な側面が同時に表現され、詩歌として素晴らしいと感じます。──おかのきくと

●「天鵞絨」をビロードと呼ぶのを恥ずかしながらこの短歌で知り、言葉選びのセンスが素晴らしいと思いました。戦火のことをビロードと漢字表記するのも、好戦的な下の句も、まとめて「とにかく格好いい」印象を持ちました。──四月

●天鵞絨(ビロード)に例えられるのならば、一面の戦火なのでしょう。そんな凄惨な戦場も、この「王」が降り立つならば豪奢な天鵞絨の絨毯に変わる。絶大なカリスマ性を表す描写と受け取りました。「王」の手腕と勝利を信じている主体の高揚が伝わってきました。強い信頼関係で結ばれた主従なのではないかと思います。──ゆの

●一面に上がる炎を赤絨毯に見立てている、恐ろしくも美しい景だと思いました。敷物の上に降りるという表現から、「王」が戦火の上にダイレクトに着地している景が浮かびます。そうなると、王は耐火性がある生物で、上空から火の上に降りるための翼があるか思うままにできる飛行する生き物を従えている気配があり、いずれにしてもただの人間ではなさそうで神話性がある歌だと読みました。──池田いくら

●〈ここが腕の見せどころ〉なのは“私”? 王? 少なくとも二通りの読み方があると思うのですが、直感的に”私”だと思いました。“私”から〈王〉への、あなたのために腕を振るいますのでご覧ください、という宣誓のように感じました。ゲームだったらカットインとボイスが入りそうな、決めセリフだし決めのシーンという印象です。”私”の自負が格好良くて惚れ惚れしてしまう一首でした。──Dr.ギャップ

●1首として読んだ時に文字としても音としてもすっと真っすぐ立っている歌だと感じました。王を見ている視点なので側近や仲間(鼓舞する・見守る)、もしくは敵対の王(煽る)などでも読めるかなと思いました。「戦火とふ天鵞絨」「王よここが腕の見せどころ」のすらすらと音にできてかっこよい様が名乗り口上に近くわくわくします。名乗りの目線で読むと元々王という立場でない人が自分を鼓舞するために詠んだ歌にも。どの視点だとしても力強いすてきな歌です。──山と森と街

【作者コメント】
魔入りました!入間くんの歴代魔王についてのイメージです。──谷澤