南天
絶望の背後から刺す光たれ瓦礫踏み分け連れてきた朝
【選評コメント】
★かっこいいー!でもそのかっこよさの前には絶望があることが目の前に書いてあってとてもすきです。!──てくてく
★眩しい光景が浮かびました。安心感と高揚感と、喜びと涙でいっぱいになりそうなワンシーンでした(ヒロアカの出久がオールマイトに憧れた瞬間のあの一コマみたいなイメージです。)。
ヒーローとしての宿命を背負わされたような歌で、「ああなんてカッコいいんだろう!」という高揚を感じつつ、その期待の重みを想像して、その光景をただ称賛して良いものか迷いました。光景としてカッコいいだけでなく、こういう複雑さも感じられて、好きでした。──有
●絶望の暗さと、それに対する光のコントラストが対比する情景が目に浮かぶようです。光に「刺す」という漢字が使われているのは、絶望を刺し貫いて倒す希望を強調する意図もあるのかな、と想像しました。──toico
●希望を感じる歌です。瓦礫を踏み越える音。背中から差してくる朝日の眩しさを背に立つ、凛々しい姿が思い浮かびました。たくさんの絶望を乗り越えても、目はまだ死んでいない、そんな力強さが伝わって来るようです。──おかのきくと
●この「絶望」や「瓦礫」は主体が遭った不幸なのか、自ら引き起こしてしまったものなのか、という点でも想像が広がりますし、連れてきた「誰か/何か」に「光たれ(光であってくれ)」と望んでいるのか、朝の光が垂れ込んでいる描写なのか
…ダブルミーニングかもしれませんが、どのようにでも読み取れるし、どう読み取ってもドラマティックな短歌だと思いました。──四月
●朝日の光線で剣のように絶望を「刺す」イメージ。瓦礫の中で背負う朝日はきっと後光でもあって、神聖さすら感じさせる場面描写です。この人物は絶望と希望をともに背負い、乗り越えることのできる、強い人なのだろうと思いました。救世主を描いた宗教画のようです。──ゆの
●戦災の景が浮かびました。光でもって「刺す」ことができるなら絶望には実体があるのではと思ったので、絶望そのものというよりは絶望をもたらした原因である存在と、「瓦礫踏み分け」てやって来てそれに終止符を打つ存在の最後の、攻防が歌われているのではと想像します。──池田いくら
●歌を頭から読み進めていって、“私”が〈連れてきた朝〉なのか!と気づいた瞬間の衝撃といったら
……めちゃくちゃ格好良くって本当に痺れます
……!!
光が差しますようにとただ祈るのではなく、〈朝〉はすでに私の手で連れてこられているのだという確かな事実がそこにあり、そのうえでの〈絶望の背後から刺す光たれ〉という願いであるというのが本当に格好良くて
……〈連れてきた〉ははっきりと他者のための振る舞いで(”私”だけであれば〈朝〉に出会ったところで良しとしてもよかったのでは)、それをごく自然に振る舞っているところにも魅力を感じずにはいられません。〈背後から〉という修辞もこの人が後光を背負っているようであり、不意打ちのように〈絶望〉に光が差すイメージがあり、一首の一つ一つが格好良く、“私”に強く惹かれる一首でした。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
血界戦線アニメ一期、最終話「Hello,world!」を題材に読みました。主人公レオナルド・ウォッチの背後から登る朝日が眩しく、その情景から浮かんだ歌です。
ただでさえはちゃめちゃな日常がさらに危機的状況に陥ったとき、それでもひたすらに真っ直ぐに、友と信念の為に走り続けることができるか。
「光に向かって一歩でも進もうとしている限り人間の魂が真に敗北することなど断じてない」。物語序盤にレオナルドにかけられたこの言葉が彼の中で指針となって生き続け、それを見事に体現されたことが分かったとても嬉しいアニメ最終回でした。この話が大好きな理由はもう一つ、私が巨大建造物崩壊フェチというのもありますが
……
『血界戦線』は内藤泰弘の漫画が原作。世界を観測するための「神々の義眼」を持つ、それ以外は"普通"の男の子であるレオナルドが、ある日突然霧に包まれ、世界の虚があいた超常現象が飛び交う街、ヘルサレムズ・ロット(旧ニューヨーク)で秘密結社ライブラに所属して過ごす日常を描いています。──南天
虹彩に光閉じこめて人間静かに眠る定命の水
【選評コメント】
●「定命」とは寿命のことなのですね。勉強になりました。「水」という単語で「虹彩」の煌めき、閉じ込められたものの静謐さが際立ってくるのが妙だと思いました。オフィーリアのように横たわる人をイメージしました。──おかのきくと
●「静かに眠る」が死とも、定命(寿命)を受け入れて眠っている状態とも読み取れますが、どちらにしても「虹彩に光閉じ込めて」という描写から、光のある人生だったのだろうと思います。この主体の閉じられた瞼の下、瞳の水分が光りながらゆらめいているようなイメージが浮かびました。美しい歌ですね。──四月
●人間は光を閉じ込めた水のようなもの、と人外の生き物が見守っている場面と読みました。きっと主体は人間よりはるかに長い寿命を持っているか、寿命がないのでしょう。人間ははかないけれど、その内にある光の揺らぎを愛さずにはいられない。そんな慈しみの視線を感じました。──ゆの
●全体的に人間の儚さと美しさが感じられます。繊細で素敵な歌ですね。──海月雪夜
●句切れなしで「人間」=『静かに眠る定命の水』とたとえている内容で、二句目から三句目の句跨りが独特なので、どことなく掴みきれないリズムを感じます。上の句は黒目(黒じゃないかもですが。白目じゃない部分の意)にハイライトが入っている状態が頭に浮かぶのですが、全体を通して読むと瞼を蓋に見立てて「閉じこめて」と言っているようにも読めて、起きているいっときの間の描写というよりは、生きている人間という存在そのものへの慈しみの目線の歌かと読みました。──池田いくら
●「虹彩に光を閉じ込めて人間は静かに眠る。人間とは定命の水である」という風に読みました。具体的な意味は読み解けていない箇所もあるかもな
……と思っているのですが、モチーフの組み合わせ方やそのバランスが絶妙で、分からない部分があっても一首まるごとの世界を受け取ってうっとりさせてもらえているとも感じました。
眠るために目を閉じている様子が〈虹彩に光閉じこめて〉と描写されていると取ったのですが、すごくおしゃれな表現でうっとりしてしまいます。目を閉じている=暗闇ではなく光を閉じ込めているのだという発想の転換。〈人間〉が種族全体を指すのではなく、“私”の目の前にいる特定の誰かなのだとしたら、瞳が大きかったり色彩が鮮やかだったり、その人の瞳そのものに光のイメージがあるのかもなと思いました。
また人間に対する〈定命の水〉という表現も素敵で、「人体の大部分は水」、「水は巡り果てがないが、水の入れ物としての人間の器は有限であり、またその命には限りがある」、「目の前で眠る人間のなかにも水は湛えられ、巡り、その命を象徴している」といった様々なイメージが広がっていきました。定めはある、けれど確かに生である、ということを思います。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
シオドア・スタージョン『夢みる宝石』より。SF幻想冒険譚です。
主人公、ホーティーは養家を飛び出し、カーニバルの一員となります。一緒のトレーラーで旅をすることになるジーナの目線、さらに、ホーティーが生まれた時からそばに居る、びっくり箱のジャンキーの目に映る彼を思って詠んだ歌でした。
人間は約7割が水だという話から、人間と全く異なるものが「人」をまねぶとき、それにはホモ・サピエンスという生き物が寿命のある水のように見えることもあるだろうな、という着想です。──南天
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