深山静
本物が真実だとは限らない渋谷のまちを丸ごと盗む
【選評コメント】
★語り手のアイデンテティは、誰かから盗んだものだったのかもしれません。ですが、「渋谷」の人々も、他者の時間を「盗」み、共有し生きています。語り手も「渋谷のまち」の一部になっていくのではないでしょうか。──おかのきくと
●混沌だ!!!!真実がほしいのか、本物がほしいのか、全部ほしいのか分からないけど、とにかくゾクゾクする始まりの気配がします──てくてく
●「渋谷のまちを丸ごと」というスケールの大きさが楽しい歌です。真実とは一種の物語ですから、本物だけれど真実ではない、というケースもあるのだろうと思います。主体は渋谷というまちが内包する「事実とは異なる物語」を求めていたのかな、と思いました。──ゆの
●本物と真実と渋谷という三つの単語でヒプノシスマイクか?いや、呪術廻戦か?と頭を抱えました。(渋谷はいろいろな物語の舞台になるので全然違う作品かもしれません)
「丸ごと盗む」というのが解釈が広がるところですが、「まち」をひらがな表記にしていることによって、どこかいたずらっぽいような印象も受けますし、簡単に盗める状況にある、意のままにしてしまえる、そんな高揚感とも捉えることができるかと思いました。──四月
●個人的にはFling Posseか渋谷事変かな、と思いました。「本物が真実だとは限らない」という言葉と「盗む」という言葉に怪しさと作中主体の微笑みを感じます。──月ノ華
●上の句、難しい話をしているなと思いました。本物と真実があたかも並列可能な概念かのように見せられていますが、どういう状況か、またその例がぱっと浮かばなくて。言い切られてしまえばなんとなく、そうだねと頷きたくなり、それでいて煙に巻かれているようで釈然としない気持ちもあり、それこそが主体の語り口なのでしょうか。詐欺師、泥棒等語りが巧みな主体像が浮かびますが、決め手がなく掴めない。渋谷の街のもつ混沌としたイメージと相まった怪しい雰囲気が好きです。──池田いくら
●スタイリッシュな怪盗のイメージの歌ですね。彼(彼ら?)なら本当にやってのけそうな自信が伝わってきます。──海月雪夜
●言葉遊びで相手を煙に巻く、飄々とした人物を思い浮かべました。〈本物が真実だとは限らない〉という切り出しもですが、そうして提示した本物/偽物、真実/虚偽という枠組みを丸ごとひっくり返すような下の句!! 飄々としつつも筋金入りの天邪鬼、しかも我が強いといった印象でついニヤニヤしてしまいます。枠組みをひっくり返すにあたって〈盗む〉という能動的な行為が来ているのは、我が強いあるいは自信の表れゆえだろうなぁと。
〈本物が真実だとは限らない〉を具体的に読むのであれば、たとえばクローンや影武者のような本物/偽物と、偽物であっても”私”の捉え方次第で「ほんとうのあのひと」になる、といった状況を想像するのですが、たとえこの想像が合っていてもいなくても結局〈丸ごと盗む〉ですべてが“私”の手の内に収まってしまう、偽物も本物も真実も嘘も──と思うと、細かいことは気にせず〈丸ごと〉の快さに腰を落ち着けてしまいたくなるのでした。掌のうえで転がされているなあと思います。──Dr.ギャップ
●「渋谷のまちを丸ごと盗む」のスケール感にドキドキしました。
目に見えるもの、「本物」だと言われるものと、「真実」は別個のものであり、みんなが言う「本物」に真実のために立ち向かう主体の姿が思い描かれて、とてもワクワクします。
(何となくペルソナ5を想像しましたが、違っていたらすみません
……)──古月もも
【作者コメント】
BATTLE OF TOKYO(バトル・オブ・トーキョー)
架空未来都市「超東京」を舞台に、特殊能力を持つ若者たちの5つのグループが「ファイナル・ファクト」争奪戦で激突する。
LDHが仕掛ける、音楽、アニメ、小説、ライブ
……メディアミックスした次世代総合エンターテインメントがBATTLE OF TOKYO(通称BOT)である。
渋谷を拠点とする神出鬼没の怪盗団MAD JESTERS(チームスキルは複製)が最推し。オタクのハートも財布の中身も盗んでいく。
ウエハースチョコに付いてるカードは全50種ランダムなので、箱買いしたオタクたちの主食はしばらくウエハースとなる。
2023年のライブではド頭5分間ほど盆踊りを見せられた
……──深山静
風が吹く 名も無き街の片隅で死ぬまで生きろと墓標が笑んだ
【選評コメント】
●文豪ストレイドッグスの織田作と太宰かな、と思って読みました。頬を撫でる海風を感じる短歌です。「死ぬまで生きろと墓標が笑んだ」というところから今は亡き人物と今も生きている人物との死しても切れぬあたたかな絆を感じます。──月ノ華
●荒廃した街の片隅でぽつりと建つ「墓標」を眺めている
……そんな情景が浮かびました。身勝手な読解ですが、ともするとこの「墓標」の主も、誰とも知らぬ人なのかなと。そんな死者に励まされるような印象を受けます。──おかのきくと
●こういう邦画みたいな切ないフレーズ大好き〜!と率直に思いました。「死ぬまで」「笑んだ」いうからには、この墓標に眠る人はおそらく悔いのない人生だったのでしょうし、主体にもそうであってほしいのだろうと想像できます。「風が吹く」のを感じる、どうしようもなく生きている主体と、「笑んだ」という珍しくもある言葉選びが、たしかにある声なき会話を表現していて、素敵です。──四月
●墓標を見ている主体の寂しさが「名も無き」「片隅」という言葉から感じられました。「風が吹く」の後に空白が入ることで一瞬の余韻のようなものも伝わってきます。「死ぬまで生きろ」は一生のことなのか、それとも主体は死を探しているのか、私は後者なのかなと解釈しアンデッドアンラックのアンディを思い出しながら読ませていただきました。──くぼたむすぶ
●旅立ちの歌と受け取りました。墓標の下にいるのは共に旅してきた人でしょうか。進め、と自分の死後も主体を勇気付けることのできる人物です。主体とってこの墓標は道標であり、この先、迷ったり立ち止まったりしたときに立ち戻る場所として、ずっと胸のうちにあるのだろうと思いました。──ゆの
●西部劇っぽい世界観を感じました。
結句、墓標そのものがこちらにアクションを起こしてきたというよりはその下にいる人が語りかけているように主体が感じていると読みました。名もなき雑草が無いように名もなき街も無いので、あんまり危ない街で派手なことをするんじゃないぞ程度の制止の表現かと思うのですが、このパートはあくまで主体の頭の中で起こっている描写なんですよね。
主体にとっては今の自分に何を言われるか、聞かなくても分かるほど親しい人が眠っている墓標なんじゃないでしょうか。──池田いくら
●隙のない言葉選びでかっちり構成されたハードボイルドな世界観の一首だと感じました。
あくまでなんとなくの印象なのですが、結句がもし「笑った」だったら何か含みがあるのかな
……と感じただろう一方、〈笑んだ〉は素直に受け取って良いのだろう(“私”にこの先できるなら長く生きていてほしいと衒いなく願っている)という予感がします。また、名も無き街で初めて出会った墓標という読み方もできるだろうという一方、〈笑んだ〉の柔らかさから特別な“あなた”がいてほしい(〈死ぬまで生きろ〉を“私”が確かに受け取れるだけの信頼のようなものがそこにあって欲しい)と感じました。風に背を押され、墓標を置いて次の街へ進む“私”の背中が見える気がします。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
HiGH&LOW
全員主役をテーマに掲げ、LDHが企画したドラマ、映画、音楽、ライブの総合エンタメ作品。
シリーズは2023年遂に宝塚でも上演され、来年は戦国時代へと遡り舞台化される。おれ(オタク)たちですらもう何がなんやら。
5つの勢力が割拠するSWORD地区において、1本のUSBが後に日本を揺るがす事態へと展開していくことになる。
スラム街「無名街」を守るRUDE BOYS(SWORDのR)は高い身体能力から無慈悲なる街の亡霊とも呼ばれている。
そのリーダーであるスモーキーは病を抱えながらも、血の繋がらない家族のために超過保護に戦っているので、無名街の住人はみんなスモーキー強火担。スモーキー嫌いな住人はおらん。
パルクールの世界チャンピオンも紅白アーティストも仮面ライダーも所属する愉快なRUDE BOYS!──深山静
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