四月
地獄でも君の居場所のはずだった 更地をなぞる U R MY SPECIAL
【選評コメント】
★のっけからの「地獄でも君の居場所のはずだった」っていうのが作品のざらついた感じを表していて好きです。「U R MY SPECIAL」というのはジャンル用語でしょうか。特別な言い回しに「君」と作中主体との間に流れる親密な空気が込められているように思います。──月ノ華
★ああ、切ない! と床を殴りました。地獄でも一緒だと思ったのに、特別だと思っていたのは自分だけ。なんてやるせない。語り手に共感しました。更地に悲痛に響く「UR MY SPECIAL」が、聞こえてくるようです。──おかのきくと
●もしかして呪術廻戦では
…?と思い、つい反応してしまった結句でした。
実際は呪術廻戦かはわかりませんが、「地獄でも君の居場所だった」は以前夏油傑の周りにいた人(たち)が夏油傑への「愛」に似た「エゴ」あるいは「エゴ」でありつつ「愛」でもあるなにかを詠んだのではないかなと感じ、胸が締め付けられました。──隙間
●地獄で相手を待っていたけれど来なかった。「君」のために空けたままの空間を「更地」と呼ぶのがいいですね。「君」以外の誰かのために使うつもりはさらさらない、という執着を感じます。──ゆの
●一緒に地獄に堕ちようと誓った関係性だが、叶わなかったのだろうか。でも「君」は「MY SPECIAL」だから、地獄に堕ちなくてよかったというような、主体のある種の安堵を想像させるような歌だと感じました。──toico
●地獄に行くと分かりすぎている果てしなさが特別なんだなと思いました更地〜!──てくてく
●主体のスケール感が大きい歌だと思いました。
君がいない自分の隣を更地と表現しているかと思ったのですが、更地となるとある程度広さがありそうな空間で、主体って人間サイズなのか?というのは気になります。結句に現代ネットスラングが使われているので、主体が生きているのはこの世界と大きく隔たった場所ではなさそうです。──池田いくら
●不穏な言葉選びと英語がとても格好良く、目が離せない歌でした。とても素敵ですね。──海月雪夜
●〈U R MY SPECIAL〉が歌詞っぽいなあと思い(アイドルソングの歌詞かな?とも)、原作由来なら調べたら出てくるかな~と検索をかけたらKing Gnu《SPECIALZ》(『呪術廻戦』の「渋谷事変」オープニング)の歌詞に出てくると知ってビックリしました。『呪術廻戦』のことはふんわりとしか知らないのですがそうなのですね
……
初読の際、〈はずだった〉と言及されているのは”私”なのかなと思っていたのですが(自分たちが地獄に行っても君の居場所となるのは"私"のはずだった)、〈更地〉ということは「たとえそこが地獄だとしても君に居場所はあるはずだった」なのかなと思い直しました。そしてそこはもう更地であり君はいない。君にとって地獄だとしても/世間では地獄と呼ばれるそこであっても、私にとって特別な君にそこにいてほしかった、君の居場所があって欲しかったという願いの歌なんだなと思い、”私”の勝手さと〈君〉の揺るぎない特別さを感じて胸がぎゅっとなりました。〈地獄〉で始まって〈SPECIAL〉で終わるのが、ああこの二人はそうなんだと思って繰り返しこの歌を辿りたくなります。そして〈はずだった〉の過去形と、〈なぞる〉ことしかできない現在の”私”のどうしようもない切なさ
……〈君〉視点の短歌も気になります。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
「呪術廻戦」の渋谷事変を経て、作中のあらゆる関係性に向けて。オープニングテーマになっているKing Gnuさんの「SPECIALS」の歌詞を最後の句に強引に詰めました。──四月
気に食わぬ背中を睨み続けてる情けない顔してんじゃねえよ
【選評コメント】
●言葉でなくもの語る雄弁な背中と、顔を見ずともそれを理解する主体、二者の緊密な関係性を感じる歌だと感じました。──toico
●この短歌を読んだ時、ふと僕のヒーローアカデミアの荼毘が浮かびました。
ここでは詳しい内容はネタバレ防止のため伏せるのですが、荼毘がヴィランになった(ならざるを得なかった)きっかけを思わせる短歌のように感じました。
ヒロアカでは一貫して、「何を持ってヒーローとするのか」「ヴィランはなぜヴィランになることを選ぶのか」というテーマがあるので、まさに「睨み続け」なくてはいけない存在に対してのこの短歌での感情が本人にとってできるだけ苦しいものでなければよいなと思いました
…(苦しさを変化して行ったりもできたらいいなと思ったりもしました)──隙間
●語り手と、睨みつけた誰かは、ライバルのような関係なのでしょうか? 負けたくない。でも情けない姿は見たくない。「何やってんだよ」という無言のエール。語り手と誰かは、互いにとって大切な存在なのだと思います。──おかのきくと
●ひいかっこいい!それを睨み続けるに留める訳に想いを馳せてしまいますね
…──てくてく
●「情けない顔」をした相手の背中を主体が睨んでいる、と読みました。主体は相手の弱った姿に歯がゆい思いを抱いているのですね。ちょっと荒っぽい言葉遣いからすると、睨み付けるだけで済ませているのは優しいほうではないかという気もします。もしくは、相手は主体には手が出せない問題を抱えているのか。関われない実感は、自分と相手が「他人」であるという現実を突き付けてきます。主体はそのことにも苛立っているのかもしれないと思いました。──ゆの
●背中を睨んでいながら、相手がいまどんな表情をしているか分かる。相手のことをよく分かっているからこそ及ぶ想像なので、ふたりは気心が知れた仲なのではと思いました。洒落にならないギスギスではなく、雑な物言いが許容される関係性だと思います。物言いがかなり尖っているので主体はまだお若いのでは、高校生くらいの友人同士かな?と感じました。──池田いくら
●ライバル関係の歌だ!! と一読してテンションを上げてしまいました。〈情けない顔してんじゃねえよ〉という心の寄せ方をする関係性が非常に好きです
……!
(自分に対する〈してんじゃねえよ〉という発破かけの可能性もありますが
……〈背中〉の持ち主への声かけという風に読んでいます)
顔ではなく〈背中を睨み〉とされているのは、“君”の方が先に進んでいたり、あるいは何かの大舞台に立っているからかもしれないなと考えました。ライバルだけれど相手の方が前にいて悔しく、そんなお前だからこそ〈情けない顔〉はしてほしくないという状況なのかなと。”私”のまっすぐな在り方が快いです。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
「銀魂」の沖田総悟から土方十四郎に向けての短歌です。ミツバ編、ミツバ編を経てのさらば真選組編を思い起こして読みました。ちなみにミツバ編は単行本15〜16巻です。──四月
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