古月もも
雪解けの騒々しさも知らぬまま自由になれる気がしたなどと
【選評コメント】
★「雪解け」は、春が近付き雪が解けるときに崩れるような音や、木々の芽吹きや動物たちの目ざめと共に活発になる物音などをにぎやかな様子としてストレートに想像しましたが、関係性の緊張がゆるんでいく様とも取れます。
眠りから覚めた主体が周囲のにぎやかしさに、あるいは誰かとの関係性がゆるんでいくことに、戸惑いを覚えているような印象を受けました。そういったものを介さずに自由になれると思っていた、ということでしょうか。
ここでの「自由」は具体的にどんなものかまでは分からなかったのですが、肉体的・心理的を含む様々な自分を縛り付ける苦しみや悩みなどからの解放だろうかと考えます。
主体はその「自由」を望んでいたけれど、実際には想像していたものと違って、困惑している。しかし、「雪解け」や「騒々しさ」「気がしたなどと」の言葉からは、ポジティブなものも若干含んでいると感じました。静かなままひとりで自由になれると思っていたがそうではなかった、けれどそれも存外悪くはないような気もするとでもいうような、苦笑いをおさえているような感じと読ませて頂きました。
ストレートな感情を示すのが苦手でちょっぴりシニカルな主体を想像しています。
心の内を独りごちるような言葉使いが印象的な一首で、口に出したときの流れも気持ち良く、とても好きな歌です。
どんな人物で、どんな自由を欲していたのか、今はどうなのか、原作が気になります
…!──ナツ
●余白がきれいすぎやしませんか?春を迎えられたんだろうか、自由にはなれたんだろうか──てくてく
●「雪解け」は、たいていの場合において生命活動の再開として描かれます。冬の間止まっていた全てのものが動き出すので当然たくさんの音を伴い、それは喜ばしいにぎやかさのはずですが、主体はそれを感じることができない場所にいるようです。雪解けでも自由になれない失望や怒りが、にぎわいを「騒々しさ」と感じる気持ちにつながっているように思いました。──ゆの
●南生まれの私は、「雪解け」のうるささを知りません。「などと」の部分に、ぽこんと浮かんだ、鼻歌のようなとりとめのない考え、気持ちを感じました。でも、どこかアンニュイ。語り手の複雑な感情が交差しています。──おかのきくと
●雪や氷が解けることはよく自由や活動の再開として表現されますが、「騒々しさ」ということは、春になることによって多くの人や要因が絡み合ってくるのが、煩わしいということなのでしょうか
…「自由になれる気がした」のはそんな騒々しさを知らない周囲なのか、この主体が過去に抱いていた期待なのかでも解釈が変わってきますね。周囲の人間が喜ぶ中、がんじがらめになっている主体のしんどさや孤独が伝わってきます。原作が気になりますね。──四月
●「雪解け」「自由」の表現から、歴史的な出来事を連想しました。スムーズには物事が進んでいかない様子が、雪解けの実際の音、氷が割れる音や水が流れる音と重なるようです。──toico
●無力感の歌かなあと読みました。結句のうしろに(思っていた)と付けられるような主体自身の経験の回顧だと思います。雪解けの騒々しさを知っていたら自由になれるだなんて思わなかっただろう、という心の動きが描写されているのかなと思うのですが、雪が身近な暮らしをしてこなかったので季節感覚や環境はなかなか想像が難しく、意味がうまく読み込めなかったので皆さまの評を読むのが楽しみな歌です。──池田いくら
●雪解けを文字で見ると春が来る旅立ちの祝福のようにうれしい気持ちのイメージの中に変わっていくバタバタとした「雪解けの騒々しさ」は確かにあるものだと思います。泥濘んだ道は歩きやすいということはなく想像以上に疲労を伴います。歌の後半「自由になれる気がしたなどと」にある認識の甘さと雪解け=困難さが結びつくことで歌の重さが増しているように思いました。また、雪解けが初句にあることでパッと浮かぶ祝福のイメージとその後の歌の重さとのギャップが好きです。──山と森と街
●問題がひとつ解決したと思ったら事後処理や新たな問題が山積みだった、みたいな感じでしょうか。騒々しさが嬉しいような迷惑なような、内面の複雑な印象を受けました。──谷澤
●雪解けは静かな印象がありますが「騒々しさ」を選ぶセンスが素敵です。
固く積もった雪が解ける際の割れる音でしょうか?雪解け水が流れる川の音でしょうか?春が来て人々が動き出す音かもしれません。
雪解けの音を知らないことと世間を知らないことがリンクしているところが好きな歌です。──海月雪夜
●不思議な味わいで、じっと噛みしめたくなる歌でした。〈雪解け〉と〈騒々しさ〉、そして〈自由〉の取り合わせが一見不思議で、けれど読み込む中ですとんと落ちていく感覚があって、とても惹かれました。
〈雪解けの騒々しさ〉が最初は不思議だったのですが、雪が溶けた下からいろいろな生き物や植物が顔を出す様子は確かに騒々しいだろう、と膝を打ちました。そして続く〈自由〉にまた首を傾げたのですが、でも確かに、雪解け後の世界の賑やかさを知らず、静かな白一色の世界しか知らないままであれば自由を知っているとは言い難そうだと思い、それで〈自由になれる〉日を夢見ていただなんてと苦笑してしまう“私”を想像しました。
〈したなどと〉という語りかけは過去の自分ではなく他者に向けたものかもしれないし、この“私”が今もまだ自由ではないという読み方もできると考えます。ただ、こじつけかもしれないですが、〈雪解けの騒々しさ〉は実際に雪解けを体感として得ないとなかなか出てこないのではとも思いますし、今の”私”は自由になっていると思いたいなと、歌を読み返しながら思いました。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
原作【魔法使いの約束】
オズの二次創作短歌です。初めて2カ月の新米賢者ですが、強い絆の二人が刺さって抜けなくなりました。──古月もも
折り目から裂けた便箋日が刺してそれは確かに本心だった
【選評コメント】
★「裂いた」ではなく「裂けた」という表現から大切に折りたたんだ手紙であったことが伺えます。裂けた便箋の日が当たる方に書かれた言葉(本心)は誰のものなのか。前述の「裂けた」「刺して」など痛みを伴うような言葉も相まって、これは主体が渡せなかった手紙、伝えられなかった想いのことを詠まれたのではないかと推測しました。陽の光が当たる情景であるのにどこか寂しさがある歌だと感じました。──くぼたむすぶ
●「本心だった」手紙は受け取った手紙なのか、自身が送れなかった手紙なのかどちらかなと思い送れなかった手紙で読みました。裂けてしまった手紙は渡せずしまい続けて何度も開き続けて裂けてしまった、渡せなかった「本心」に光が刺す景色は後悔や懺悔も感じます。また、渡したけれど本心が伝わらない=裂けてしまった手紙とも思えました。「折り目」と初句にあることで丁寧に手紙をたたんだのかなと宛先の人物を大切に思っていると感じました。渡せなかったとしてもなかった事にはならない、歌を読む時に広がる少し古びた手紙と光のイメージがあり後悔や懺悔だけではなく祈りも浮かびました。美しい歌だと思いました。──山と森と街
●日が「差す」ではなく「刺す」。「裂けた」から、便せんで手を切ってしまったような痛みを共有した気分です。「確かに本心だった」と叫ぶ語り手の手から、ぽたり、と血が落ちる
……そんな風景を、イメージしました。──おかのきくと
●折り目から紙が裂けるなら、相当古い便箋なのだと思います。それが裂けて、遠い昔に書かれた「本心」が暴かれてしまった。「日が刺す」という表現から、光に断罪されているような印象を持ちました。書かれていたのは罪の告白なのでしょうか。下の句の突き放した過去形が、主体にとってもすでに過去のことなのだという時の流れを感じさせました。──ゆの
●下の句が好きです。手紙でしか言えないことがあったんですね
…。──石ころ
●真ん中から便箋を破ろうとしたのは送り主なのか受け取った側なのか。日差しに照らされて「本心だった」と思い知る後悔(なのでしょうか)が目に浮かぶようで、映像の美しさも合間って痛々しくて心に刺さりました。──四月
●あ、知ってる感情だ!?と思っちゃいました。忘れてたけど本当のこと、それはエモ
…──てくてく
●「刺して」という漢字の選択が、日差しに主体の心を突き刺す鋭さを与えていると受け取りました。裂ける、刺す、などの鋭い単語のチョイスは主体の痛みと響き合います。便箋が裂けたのはひらいて、畳んでを繰り返したことによる摩耗なのだろうと思います。脆いものがあるべき形を失うさまを描写しているようで好きな歌です。──池田いくら
●折り目をつけて裂いたのか、劣化などでひとりでに折り目から裂けていったのかで変わる気がしますが、本心であることをわざわざ自分で確認する主体はなんとなくですが普段けっこう器用に自分をコントロールして振舞っているか、あるいは自分の内面の動きに鈍いのかなと思いました。──谷澤
●裂けた便箋に封をせず出せなかった日々、伝えられない強い想いが伝わります。
日が「刺す」表現が想いの強さ、心の痛みを強調し、素敵です。──海月雪夜
●裂けた便箋の裂け目から日の光が差してきた、という光景をイメージしました。机の上に置いているものに日が当たっているというより便箋を日にかざしているイメージです。
便箋(手紙)は受け取ったものなのか、書いたけれど出さなかったものなのか、〈それは確かに本心だった〉という結びから後者かなと想像します。折り目からとはいえ裂けるほど劣化するには時間がかかると思うので、過去に出しそびれた、一度は便箋にしたためたけれど出せなかった、出さなかった言葉たちを思いました。出せなかった手紙、裂けた便箋といったモチーフから痛みをイメージする一方で、日の光や下の句の力強さから痛みに対する救いのイメージもあり、しみじみ噛みしめるように読ませていただきました。──Dr.ギャップ
【作者コメント】
原作【ポケットモンスターSPECIAL】
通称「ポケスペ」。4章ルビーサファイア編の二次創作短歌です。幼稚園の頃から今まで、ずっと大好きな作品です。
ポケスペはポケモン派生作品の中でも「ポケモンが現実にいたらこうなんだろうな」と思える細かい描写がとても好きです。特に4章はバトルも友情も恋愛も詰め込んだ、満足度満点のストーリーに加えて、独立して楽しめる章でもあるので、気になる方は15~22巻をよろしくお願いします。──古月もも
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