fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
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ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います


ざくざくで、あまいの

「シトラリおばあさま、どう?」
「んー、美味しいケド……ちょっとお酒のつまみになる、ってカンジじゃないわね」

 草臥の家の片隅で、シトラリはカチーナが持ってきたお菓子を口にしていた。火山ケーキをアレンジして一口で食べられる小さなサイズにしたものだ。小さくしたぶんアイスは控えめだが、手軽さは狙い通りだ。ただ、元の火山ケーキと同じくチョコソースが垂れてきそうなのが難点だった。酒で気分よくなっている中で、手元に注意を向ける必要があるものは好ましくない。

「そう……ですか……
「誤解しないで。お菓子としてはとっても美味しいわ。でもこれなら、お酒じゃなくてお茶と一緒がイイってだけよ。お酒を飲みながらなら、もっと手軽に摘まめるモノがいいかもね」
「ええと、グレインスティックとか、ドキドキポンポンみたいな?」
「そうね……でも、そのあたりは定番すぎて、新メニュー、って感じがしないかも」

 せっかくの催しものなのだから、特別なメニューを作りたい。そう考えたカチーナだったが、自身はまだ酒を飲める年齢ではなかった。
 そこで、シトラリに協力を依頼し、酒好きの観点からメニュー開発のアドバイスを貰うことにしたのだ。カチーナの製菓の腕を知っているシトラリは、美味しいものが食べられるのだからと快諾してくれた。草臥の家のオーナーも協力してくれるとの事で、試作品を作るために厨房の一角を貸してくれている。

「うう……。おつまみになるお菓子、って難しい……
「焦らないで。まだ一週間もあるじゃない」
「う、うん。がんばる……!」

 また作ってくる!と負けずに厨房に戻るカチーナの背に、シトラリの優しい視線が注がれる。未だに幼さが残っている気はするが、彼女も立派になったものだ。

「オロルンもあのくらいの頃があったわね……今じゃもう、あんなに大きくなっちゃって」

 ふぅと一息つきながら思い出に浸っていると、酒場のドアがギィと音を立てた。扉が開くと、そこには長身の女性が三人、色とりどりの瓶を抱えて立っていた。

「やっほー! お届け物をしにきたよ!」
「頼まれていたドリンク類を届けに来た。どこに置けばいい?」
「あ~、シトラリさまもいる。こんにちはー!」

 ムアラニ、チャスカ、ヴァレサの三人だ。三人を見つけた草臥の家のオーナーは、持ってきてくれた飲料の置き場所を指定する。

「あたしが持ってきたのは、シトラリおばあさまに頼まれてたロマリタイムフラワーの果汁ジュースと、ザイトゥン桃のジュース、ググプラムのジュースだよ。他の国からのジュースはこれくらい。あたしも飲んだこと無いから楽しみだなー! あとは、ヴァレサの果樹園のりんごジュースとケネパベリージュースだね」
「うん。今朝収穫したばかりの果物を使ったおいしいジュースだよ~。ワナナと協力して搾ってきたんだ~」
「私は、リゾートの「ドランクハニー」で新商品として展開予定だという「スィートドリーム」の原液を預かってきた。そのままだと濃すぎるから、限りなく薄めて欲しいとのことだ。開発に旅人も携わったと醸造家から聞いたから、おそらく間違いのない品だろう」

 三人が持ってきた瓶を並べると、草臥の家のバーカウンターが一層華やかになった。栓をまだ開けていないというのに、フルーティーな香りが漂ってきそうだ。人が増えた分、声も増え、店の中が少し賑やかになった。

「蜜酒のほうは量が多いから、追って運送業者が酒樽で持ってくる。搬入はどこからすればいい?」
「ああ、それなら――

 別の荷の打ち合わせをするために、チャスカは草臥の家のオーナーと共に裏手に消えていった。ムアラニはんーっと伸びをしてから、シトラリの近くの椅子に腰を下ろす。ヴァレサもそれに続いた。

「シトラリおばあさま、カチーナちゃんは今、調理中?」
「ええ。少し前に戻っていったから、もうそろそろ試作品が出来るんじゃないかしら」

 目の前の机上には、カチーナが試作したお菓子が沢山積まれている。試食用の少量ではあるが、いろいろと品を試しているため、そろそろ皿をいくらか下げないと机の上に入りきらない。

「わ~、どれも美味しそうだなぁ。わたしも食べていい?」
「構わないわよ、あ、でも比較したいから全部は食べちゃダメだからね。……そうだ。二人も協力しなさいよ。色々試してるんだけど、ワタシたちだけじゃなかなかいい案を思いつかないのよ」
「もっちろん!」

 ムアラニとヴァレサが机上の菓子に手を伸ばし、一つ二つ口にしたところでカチーナも戻ってきた。手には焼きたてのグレインスティックが数本乗った皿がある。

「ヴァレサお姉さん、ムアラニちゃん、来てたんだね!」
「うん! カチーナちゃんのお菓子、いただいてるよ! とっても美味しいね!」

 ムアラニに褒められ、えへへとカチーナが照れたように笑った。新たに机上に乗せられたグレインスティックも、サクサクと軽い歯ごたえで素朴ながらも手が進む美味しさだ。
 だが、新メニューと言える程の目新しいものではない。

「美味しい……美味しい、のよ。でも『コレ』ってのが足りないの」
「うーん、何がいいかなぁ……

 四人で机を囲んで考えるが、具体的な案が何一つ浮かばない。うんうんと唸っていると、また草臥の家のドアが開いた。まだ半開きの扉から赤く小さな影が駆けこんで、四人が座るテーブルへとやってきた。 その赤い影……クク仔竜は、机上に乗っているお菓子を見てぱたぱたと小さい翼をばたつかせて跳ねている。四人が驚いて動けないでいたのをいいことに、机上のお菓子を小さな嘴で摘まむ。さくさくと齧ったが、どうもまた思っていたものと違うようで、机から降りて一鳴きした。

「クァッ!」
「こら、危ないぞ!」
……そうだぞ、きょうだい」
 
 クク仔竜に続いて入ってきたのは、イファとカクークだ。……なんとなく、カクークの元気が無いような気がするが、気のせいだろうか。

「すまん、邪魔したか?」
「ん~、大丈夫! 元気な仔だね~。どうしたの、この仔?」
「『ドラゴンテール』でスタッフをやってもらう仔竜なんだが、俺から離れてくれなくて、ずっとべったりなんだ。カクークもだいぶ拗ねちまった」
……クァッ」

 カクークはぷぃとイファから顔を背け、草臥の家にある竜用のクッションへ飛んでいってしまった。ぼすんと顔からクッションに埋まっている。 

……。ええと、そうだ、ヴァレサに聞きたいことがあったんだ」
「え? わたし?」
「ああ。カクークがこの仔から聞いたんだが、『あかい、ふわふわ、ツノ』の人から、『ざくざく、あまいの』を貰ったらしいんだ。どうもそれがどうしても食べたいらしくてな、この『あかい、ふわふわ、ツノ』って、ヴァレサのことだったりしないか?」
「う~ん、わたしじゃないかも……。ごめんねぇ」

 そうか、とイファはがっくりと肩を落とした。聞けばここ一週間、彼にべったりだという仔竜はずっとその『ざくざく、あまいの』を探しているようで、それらしきものを片端から口にしてしまうようになったのだという。病ではなく心因性のものであるので、竜医であるイファでもお手上げ状態だった。

「まって!」

 落胆していたイファの耳に、ムアラニの声が響いた。

「それって、ニィロウのことじゃない? ニィロウはスメールの踊り子なんだけど、赤い髪で、角のついた衣装を着てるんだー。この間、流泉の衆に来てくれてたから、もしかしてその時になにか貰ったんじゃないかな」
「クァッ!クァッ!」

 そのムアラニの言葉に、クク仔竜が反応した。ムアラニは屈みこんでクク仔竜と目線を合わせ、微笑みながらたずねる。

「ニィロウのこと、きみは知っているの?」
「クァッ」
 
 クク小竜は、嬉しそうにその場でぴょんびょんと跳ねた。どうやら、ニィロウのことが好きみたいだ。

「マジかよ、正解っぽいな」
「へっへー! 役に立てたみたいでよかったよ! それだったら、その『ざくざく、あまいの』も、もしかしたらスメールのお菓子なんじゃないかな? 確か貰ったんだけど、名前が思い出せない……すごーく美味しかったんだけど……
「ナツメヤシキャンディか?」

 うーんうーんとムアラニが唸っていると、見知った影がひょっと現れた。蝙蝠耳をぴくぴくと揺らしながら手に麻袋を抱えている。

「うわっ!? オロルンお前、どっから出てきた!?」

 突然現れたオロルンに驚き、イファの身体が跳ねる。その声に反応してか、クッションに埋まっていたカクークもびくりと動いた。
 突然の来訪者にわぁ、となりつつも、ムアラニは平然と話を続けた。

「そうそれ! ありがとうオロルン、物知りだね!」
「ナツメヤシキャンディなら、本で作り方を見たことがあるよ! この仔はそれが食べたいんだね、わたし、作ってくる! あっでも、材料があったかな……
「食感が似ていればいいなら、ナッツ類はグレインの実やショコアトゥルの種で代用できないだろうか。蜜であれば、袋の中に一瓶ある」

 オロルンは、はいどうぞ、と燃素ミツムシの蜜の瓶をカチーナに渡した。それを受け取ったカチーナは、すぐ作ってくる!と厨房へ駆けて行った。

「助かったけどよ……お前、なんでここに居るんだ。あともうちょっと普通に出てこれねーのかよ」
「大事な用事だ。ばあちゃんに食材を届けに来た」
「メニューに役立ちそうな食材を見繕ってきて、って頼んでたの。やっと来たのね、遅かったじゃない」

 はいこれ、とオロルンは持っていた麻袋をシトラリに渡した。袋の大きさにしては、そこまで重くなかった。

「ごめん、ばあちゃん。色々やることがあったんだ」
「ふーん。ワタシのオネガイより優先することねぇ。……ま、ちゃんと届けてくれたんだからいいわ。どれどれ、何を持ってきたのかしら」

 袋の中に手を入れ、中身を机上に取り出していく。赤トロピカルキノコに、キャンドルキノコ、蛍光ツノキノコ、普通のキノコ……

「なによコレ、キノコばっかりじゃない」
「すまない、蛍光ツノキノコだけ少し使ってしまったから少ないんだ。足りないようなら、また取ってくる」
「そうじゃないわよ……。まぁ、今回は品を指定しなかったワタシのミスね。アンタのことだから、てっきり野菜を持ってきてくれると思ってたわ」
「野菜はもうこの店に納めているから、もし必要ならオーナーに掛け合ってほしい」

 態度こそそのままだが、オロルンの顔より感情が出る薄耳が、若干萎れている。

「怒ってるワケじゃないわよ。届けてくれてありがとう、オロルン」
……よかった、じゃあ僕はこれで」

 そのシトラリの言葉で耳の張りは戻った。役目を完遂できたと判断したオロルンは、そそくさと扉に手を掛ける。

「もう帰るのか?」
「ああ。ちょっと家でやることがあるんだ。じゃあな。あ、イファ。そろそろカクークを構ってあげたほうがいいと思う。抜け毛が心配だ」

 オロルンが指さした先には、クッションに埋もれているカクークが居る。よく見れば、クッションの紫の布地の上に桃色の羽がだいぶ散っている。

……ああ。そうするよ」

 オロルンが店を去り、その扉が閉まる音と同時にカチーナが戻ってきた。

「あれ、オロルンお兄さんは帰っちゃったの?」
「急ぎの用事があるんだって~。これがナツメヤシキャンディ?」
「うん。でも、ナツメヤシは入ってないの。だから、似ているけれど、別のお菓子だと思う」

 カチーナの手には、小さな四辺形に切られたナツメヤシキャンディ、に見えるものがあった。白く練られた砂糖菓子の中に、ナタで良くとれる種子類がふんだんに入れられている。

「どうかな、気に入ってくれるかな」

 カチーナはクク小竜にそっとキャンディを一つ差し出す。

「クァァッ、クァッ!」

くんくんと匂いを嗅いだあと、クク小竜は嬉しそうにそれを咥えた。ぼりぼりと砕きながら飲み込むと、一段と跳ねている。とても嬉しそうだ。

「おお! これが正解みたいだ!」
「気に入って貰えてよかった……! 思い出のお菓子なのかな、よかったね!」

 恩を感じているのだろうか、クク仔竜はまるでお礼を言っているかのように、カチーナに擦り寄ってくるくると鳴いている。

「ふふ、くすぐったいよ……でもよかった、喜んでもらえて。皆の分もあるから、よかった食べてみて」
「いいの!? じゃあ、いっただっきまーす!」

 ムアラニが一片のキャンディを手に取り、あーんと大きく口を開けて放り込んだ。燃素ミツムシの蜜の甘味がふわっと溢れ、煎られたナッツの香ばしさも心地いい。小さく切られていたこともあってか、あっという間に口の中で消えてしまった。嬉しそうに目を細めているムアラニを見て、ヴァレサ、シトラリも続けてキャンディを口にする。

「あら。イイわね、これ」

 一口大に切られていることもあり、簡単につまめる。それに甘さもくどすぎず、ナッツの食感も良い。シトラリは再び皿に手を伸ばし、二個、三個と口に放った。

「新メニュー、これででイイんじゃない?」
「本当!?」
 
 不安の色がずっと残っていたカチーナの顔に、ぱぁと笑顔が灯った。バイザーから覗いている兎耳も、嬉しそうに揺れている。

「ええ。つまみやすいし、ナッツの感じがちょうどイイわ」

 他の皆からも大絶賛を受け、新メニューはキャンディに決まった。流石に仔竜にあげるには糖分が高すぎるとのことで、竜用のものはカチーナのレシピを基にイファが改良することになった。

「まだ開催まで日もあるし、一つ決まっちゃえば気がラクね。他のつまみも考えてみましょう」
「うん! わたし、がんばる!」
「あまり頑張り過ぎないようにね、楽しくやりましょ、そうね……とりあえず、せっかくだからこのキノコで何かできないかしら」