fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
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ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います


開宴

「皆、酒は持ったか?では……第十回目の競技大会の成功を祝って、乾杯!」

 マーヴィカによる乾杯の音頭で、『ドラゴンテール』は幕を開けた。競技大会となってからの『帰火聖夜の巡礼』の歴代優勝者と、準備を手伝った六英傑たち、それに他国の客人を交えての大宴会だ。

「ぎゃう!ぎゃう!」
「わぁ、スリスリしてくれた、かわいーね! よーし、アイノがいっぱい撫でてあげる!」

 スタッフの仔竜のなかでも一際人懐っこいテペトル仔竜を、ナド・クライから来たという少女が抱きかかえようとしている。
 あいつらは見た目よりもだいぶ重いから、気を付けるように言わないと。仔竜たちの様子を見ていたイファがそのことを伝えようと少女のもとに向かうが、それよりも早く別の人物が割り込んだ。シロネンだ。

「テペトル仔竜は子どもでもけっこー重たいから、無理に持ち上げようとしないほうがいーよ。そだ、ここの辺りを撫でられるのが好きだから、優しく撫でてやって」
「うん、わかった!」

 シロネンが示した場所をアイノがそっと撫でると、テペトル仔竜は嬉しそうにきゅっと目を細め、自分からアイノの手に頭を近づけた。きゅうきゅうと気持ちよさそうに鳴く様子を見て、アイノの顔もぱぁと明るくなる。
 問題なさそうだなと胸を撫でおろしていると、トントンと背後から肩を叩かれた。今度はなんだと振り返れば、呆れた顔をしているチャスカと目が合った。どうやら、駆け寄ろうとしていたのを見られていたらしい。

「イファ、君は準備からずっと働き詰めだろう。休憩がてら、何か食べてきたらどうだ? 竜たちは私が見ておく」
「そうだぞ、きょうだい!」
「ほら、カクークもこう言っている」

 チャンス到来といわんばかりに、カクークも便乗して休憩を促してくる。やたら帽子や服の裾を引っ張ってくるとは思っていたが、どうやら休憩を取ってほしかったらしい。

「とは言ってもよ、俺だって仕事が――

 ぐぅ~~

 責務だからと譲らずにいようとしたが、気の抜けた音がそれを許してくれなかった。確かに大会が始まってからずっと準備に追われていて、昼飯も碌に摂れていない。腹音まで聞かれてしまえば、言い逃れはまぁ無理だろうなと諦めるほか無かった。

「はは、君の腹は口よりも正直なようだ。そら、行った行った。カクークも行っておいで」
「ありがとな、きょうだい!」

 チャスカに半ば強引に送り出され、カクークと共に皆が飲み食いしている場所へと向かった。
 あれはモンドから贈ってもらったという蒲公英酒の樽だろうか。ナタのものとはまた少し違う木樽が並べられており、それに寄りかかるようにマーヴィカとファルカが立っている。
 特注サイズなのだろうか、普通の倍はあろうかという大きさのジョッキで酒を酌み交わしている。豪快に笑いながら浴びるように飲んでいる二人の横を抜け、旅人とカチーナが切り盛りしているカウンターへと向かった。

「こんばんは、イファ。君もこれからご飯か?」
「ああ。飯食ってねーのをチャスカに見つかっちまってな」
「それはチャスカが正しいな。ご飯はちゃんと食べないと駄目だ。カクークもそう思うだろ?」
「もちろんだ!」

 ちょうど料理を受け取りに行こうとしていたオロルンと出くわし、三人で旅人の元へ向かう。前の客のカクテルを作り終えた旅人は三人に気づくと、にこやかに手を振ってきた。

「こんばんは、旅人のじいちゃん。酒を貰えるか? 僕が持ってきたやつを、ロックで」
「俺はノンアルコールのやつがいいな。あと、飯も欲しいんだが……
「わかった。じゃあ、先にイファのドリンクを作るね。カチーナ、お腹に溜まりそうなもの、持ってきてもらえる?」

 厨房の方から「うん!」と元気のよい可愛らしい返事が聞こえる。程なくして、香ばしい匂いがふわりと流れ込んできた。匂いだけで、また腹が鳴りそうになる。
 旅人は手際よく材料をそろえると、慣れた手つきでシェイカーを振るう。もう何度もバーテンダーを経験しているらしく、ドリンクを作りながらナド・クライの酒場の話も教えてくれた。

「ルーレット・カクテルか。本で読んだことがある、イファ、今度僕たちもやろう」
「あー……俺は遠慮するわ。お前相手に勝てる気がしねえ」
「じゃあ、ばあちゃんも一緒なら、どうだ?」
「それなら……いや、それは終わったあとが怖いわ」

 他愛ない話をしているうちに、頼んだドリンクが出来上がる。爽やかな飲み口の中に、バブルオレンジのすっきりとした香りがちょうどいい。ちょうどのタイミングでカチーナも料理を持ってきてくれ、ジューシーに焼かれた肉とキノコの盛り合わせは、すきっ腹にガツンと沁みた。

「次はオロルンのやつだね、ちょっと待って……って、やっぱりか」

 オロルンの酒を、とカウンターの下を覗き込んだ旅人が、呆れたような声を上げた。ふぅと息を吐く音が聞こえ、旅人がカウンター上に大きな酒瓶を出すと――その酒瓶は、僅かに光り輝いていた。

「どうした? 何かおかしいところがあったか?」
「いや……光る酒瓶は、十分におかしいと思うよ、オロルン」

 旅人がジョッキの中に氷を幾つか放り入れ、オロルンの持ってきたその光る酒を傾ける。とぷとぷと注がれるその液体は、ほんのりと淡く白い光を纏っていた。
 オロルンは何がおかしいか理解できない、と言った様子で、きょとんとしながら首をかしげている。

「これは蛍光ツノキノコを使った酒だ。だから、光っていてもなにもおかしくはない。むしろ、成分が上手く溶け出ている証だと、僕は思う」
「あー、だからキミが持ってきたキノコの中で、ツノキノコだけ少なかったのね?」
「ばあちゃん!」
「キノコ酒を作ってくるなんて、なかなかヤルじゃない。ワタシもそれ、一杯貰おうかしら。グラスは同じのでイイわ」

 カウンターにとんと置かれたグラスに同じように氷を放り入れ、祖母と孫に同じ酒を渡す。シトラリの持ってきたグラスには切子細工が施されていて、注がれた酒は、より幻想的な光を生み出している。二人に酒を渡し終えた旅人がまたカウンターの下に瓶を戻すと、薄暗い中、ぼんやりと瓶全体が光っていた。

「あら、オイシイじゃない。変な後味もないし、飲みやすいわね」
「本当か!? ばあちゃんにも気に入ってもらえたなら、嬉しい。作り方を教えてくれた『隊長』に感謝だな」
「へぇ~、『隊長』に……ってちょっとオロルン、もしかして、キミ、また勝手に……!」
「ごめん、ばあちゃん! 違うんだ! 僕は夜神様に会いに行って――
「言い訳無用! どのみち一緒じゃない! ちょっとコッチに来なさい、んもう、褒めたそばからコウなんだから……

 ああなったシトラリに掴まったら終わりだ。縋るような目を向けてきた悪友にご愁傷様と返し、冷めないうちに食うか、とキノコ料理に手を付けた。


 * * *


「きゅぅ~」

 祖母と孫のいつものやり取りの裏で、一匹のイクトミ仔竜がカウンターに潜り込んだ。何か面白いものは無いもんかとうろついていた彼の目に、ぼんやりと輝くなにかが映った。
 カチャカチャと瓶が擦れるが、その些細な音は喧騒にかき消される。瓶の森を掻き分けて目的の光に辿り着いた仔竜は、きゅぽんとその瓶の栓を開けた。

「きゅきゅ!」

 ツノキノコのにおいだ! ツノキノコのにおいがする、お水だ!
 瓶を倒して漏れ出てくるあまくておいしい水をぴちゃぴちゃと舐めていると、身体がぐんと動かされた。

「こら、それはお酒だよ。飲んじゃ駄目だ」

 金色の髪の人にわきの下を掴まれて、持ち上げられた。おいしいおみずを独り占めする気なのかもしれない!

「くるるぅ、くるるぅ! くるるぅ、くるるぅ!」

 なかまを呼ぼう。おいしいおみずは、みんなで飲んだほうがおいしい。

「きゅきゅ! きゅきゅ!」

 すぐ近くに居たともだちがきてくれた!

「くるるぅ、くるるぅ! くるるぅ、くるるぅ!」
「くるるぅ、くるるぅ! くるるぅ、くるるぅ!」


 * * *


「だめだって。それはお酒だよ!」
「旅人? どうしたんだ」

 料理を受け取って少し離れたテーブルで食べていたのだが、どうもカウンターの旅人の様子がおかしい。料理を置いてバーカウンターの中を覗き込むと、二匹のイクトミ仔竜に翻弄されている旅人がいた。

「イファ、よかった。ちょっとこの仔を診てあげて欲しい。キノコ酒を飲んじゃったみたいなんだ」
「お、おう。それなら、こいつに飲ませる水を貰えるか? イクトミ竜はアルコール耐性を持っているから、大事にはならないと思うけどな」

 抱えられている方のイクトミ仔竜を受け取ろうとしたが、するりと抜けられてしまった。

「じっとしてろって、お前らのことを心配して……待て、これは」

 くるるぅ、くるるぅ
  くるるぅ、くるるぅ

 共鳴するように二匹が鳴き、それと同時に草臥の家の扉がギィと開かれる。一匹、二匹……いや、それだけでは済まない。僅かに開いたその隙間から、ぞろぞろとイクトミ仔竜たちが途切れることなく入り込んできた。