fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
Public
 

ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います


決勝戦

 予選の後半戦は、球技だ。機械から自動で射出される弾を返してポイントを競う、というものだ。大戦の影響で下火になっていたが、ナタでは球技も伝統的なスポーツの一つらしい。

「ははっ、バドルドー祭を思い出すな!」

 モンドでも似たような競技がある。懐かしい気持ちに浸りつつ、ファルカは射出された弾を漏らすことなくはじき返した。

「ひゅ~、やるねぇ!」
「ふふん、これくらい朝飯前だ」
「あ! それボクのおつまみ!」

 試合を終えて客席に戻り、どかりとバルバトスの隣に腰を下ろす。抱えていたドキドキポンポンを一つ摘まんで口に放り入れると、もう、と口を尖らされた。

「そうケチケチすんなって。どうせもうすぐ宴会だ」
「まぁ、それもそうだね。あ、結果が出たみたいだよ」

 会場全体に、予選突破者のアナウンスが入った。本選トーナメントはファルカ、キィニチ、ヴァレサ、ムアラニの四名で行われるとのことだ。全員がレースでの上位者だ。続けて本選出場者の待機場所の案内が入り、ファルカは待合室へと向かった。

 初戦の対戦カードはファルカ対ヴァレサ、キィニチ対ムアラニだった。ぽやっとした印象の牛ツノの嬢ちゃん――いや、あの戦士にこんな呼び方は似合わねぇか。試合開始と共に仮面をつけた彼女から、重い一撃が次々に繰り出された。特に、高い跳躍力を活かした高所からの踏みつけが凄まじく、競技場の地面に幾つもクレーターを残していった。
 本選のルールは至ってシンプル。各選手、背中に小さな旗をつけ、相手のその旗を奪い取った方の勝ちだ。傍から見たファルカは怒涛の連撃に防戦一方のように見えたが、その実、冷静にヴァレサの動きを見極めていた。
 ギリギリのところで躱して踵を返す。ヒップドロップの起き上がりの隙をついて、ヴァレサの背から旗を抜き取った。

「対戦、ありがとうございましたぁ。強い人と戦えて、勉強になりました! もっとトレーニングします」
「おう! なかなか重い攻撃だった、良い筋をしているな」
「本当ですか! 大団長さんに褒められるなんて、嬉しいなぁ。そうだ、わたしの戦い方を見て、何かアドバイスもらえたりしませんか……!」
「そうだな、気になったのは……

 試合後、にこやかに差し出された手と固い握手を交わす。熱心な彼女とそのまま感想戦をしたかったが、次の試合――キィニチ対ムアラニが始まるとのことで、退場を促されたのだった。

 * * *

 キィニチとムアラニの試合が終わった。彼らは仲のいい友人同士だそうで、試合内容も互いの手の内を見切りつつ、俊敏な動きで翻弄しあう激しい攻防戦だった。戦闘スタイルも近いのだろうが、ここではキィニチのほうが上手だったようだ。終了後に「水上だったら負けていた」とキィニチが言ったが、おそらくその見立ては正しいのだろう。

 ――さて、決勝戦だ。

「第十回『帰火聖夜の巡礼』、いよいよ決勝戦だ。決勝まで勝ち進んだのはモンド西風騎士団大団長・ファルカと、初代『帰火聖夜の巡礼』チャンピオン・キィニチ。双方、用意はいいな?では――決勝戦、始め!」

 マーヴィカの声と共に、戦いの火蓋が切って落とされた。
 先手必勝、とばかりにキィニチが間合いを詰めてくる。おそらく、受けに回っていたヴァレサとの戦いを見ていたのだろう。
 素早い動きでこそあるが、競技場内は障害物も少なく、鍵縄の軸にできる場所も限られている。
 身体の動きから攻撃を予測し、横に躱そうとした。だがどうしても拭えない違和感がある。勘に従ってさらに踏み込み、大きく跳躍する。

――フェイントか!」
「さすがに見切られましたか。でも、まだ勝負は終わっていないですよ」

 予測していなかった方向から、薙ぐように大剣が振るわれた。競技用に刃を潰してあるものだとはいえ、当たれば相当ダメージを受けそうだ。

「やるじゃねえか」

 着地して深く腰を落とし、ファルカも大剣を構えた。同じく大剣を構えなおしたキィニチと睨み合う。ほんの一瞬のはずなのに、緊張感が時を遅くする。
 先に動いたのはキィニチだった。薙ぐように繰り出された剣劇を、今度は避けずに刃で受け切った。

「チィッ!」
「ははっ、二度も同じ手は食わん」

 さて、こちらも仕掛けるか。受け止めた刃を弾き返し、一段踏み込む。弾かれた大剣に身体を振られたキィニチが体勢を崩した、その隙に背後へと歩を進める。
 あと一歩でキィニチの旗に手が届くというところで、動きを察知したキィニチに身を捩られて躱された。キィニチは捻った勢いのまま地に手を付くと、腕の力で跳ねあがって宙を舞う。
 だが、甘い。跳び上がった方向を見極め、着地位置を予測する。地を蹴って先回りすると、キィニチの背に揺れる旗に手を伸ばした。

「いろんな戦場を抜けてきているからな。まだまだ負けられん」

 勝ちを確信した、その時だった。
 死角から飛んできた鍵縄が、ファルカの背を狙った。寸でのところで振り返り、叩き落としたが――一瞬キィニチに背面を見せてしまったその隙に、するりと旗が抜き取られた。

「抜けた戦場の数ならファルカさんのほうが多いかもしれないが、この競技に関しては――俺の方が経験豊富だ」

 キィニチが手にした旗を高々と掲げると、ワァと競技場中から歓声が上がった。
 
「今大会優勝者は、キィニチだ! 皆、盛大な拍手を!」
 
 歓声を浴びる中、キィニチはさきほどムアラニ達と一緒に居た時のように、わずかに口角を上げていた。
 嬉しいのならば、もっと素直になりゃいいものを。
 まぁ男にはいろいろあるもんだからな、と、ファルカは黙ってキィニチに手を差し伸べる。気づいたキィニチと固い握手を交わすと、そのまま肩を抱き込んでばんと叩いた。

「優勝、おめでとう! ――さぁて、メインイベントだ! 宴会だ!」