fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
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ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います


エピローグ

「はっはっは! もこもこしていて気持ちがいいな!」
「ああ、このきゅるんとした瞳もたまらなく愛おしい」
「あははははっ! 楽しいねぇ」

 草臥の家の一階がイクトミ仔竜に埋め尽くされるまで、そう時間は掛からなかった。
 皆に手伝ってもらいながら持っていける限りの食料や飲み物、ゲストと他の仔竜を二階に移動させたイファは、小さく溜息を吐いた。さて、階下に残っている酔っ払いたちはどうしたものか。
 でろでろに酔っぱらっているファルカ、蒲公英酒の樽にしがみついているマーヴィカ、イクトミ仔竜の群れに身を預けて成すがままに行ったり来たりさせられているウェンティ、もこもこに埋もれながら仔竜相手にくだを巻いているシトラリ……三者、いや四者四様の酔っ払いたちが、仔竜にもみくちゃにされたまま酒を飲み続けている。

「まあ……幸せそうだし、いーんじゃない? マーヴィカがあんな風に酔えるのも、ある意味ナタの平和の証ってことで」
「ぎゃう」

 テペトル仔竜を抱きかかえたシロネンが、やれやれといった様子で階下を眺めていた。視線の先には空の酒樽がいくつも転がっている。
 その時、くるくると鳴くイクトミ仔竜の中に強い語気の声が響いた。
 
「ちょっとオロルン! きいてるの? だいたいきみってばねぇ……なによもう、耳ももっふもふじゃない……
「きゅる?」

 目線も定まらないほどべろべろに酔っぱらっているシトラリが、目の前に座っているイクトミ仔竜に向けて説教を始めたようだ。他の子より少しだけ毛の色が暗いが、そいつはオロルンじゃない。

「ん、そういえばあいつはどこに行ったんだ……?」

 二階をぐるりと見回すが、どこにも悪友の姿はない。シトラリに掴まって説教を喰らっていた筈なのだが、どうやら逃げおおせたらしい。

「オロルン、君も飲むといい。モンドから蒲公英酒を沢山贈ってもらったんだ」

 イクトミ仔竜に説教をしていたシトラリの隣に、ふらふらと足取りの怪しいマーヴィカが座った。どんと置かれたジョッキの中にはなみなみと酒が注がれている。だが、そのジョッキを差し出している先はオロルンではない。

「きゅう!」
「ははっ! いい飲みっぷりだな!」

 ジョッキを渡された仔竜は、くぴくぴと酒を美味しそうに飲み始めた。微量ならまだいいが、あの量は流石に止めに入らないと不味い。仔竜の波を掻き分けてテーブルへと向かうが、先にもう一人、客が辿り着く。

「おう、俺も混ぜてくれ! オロルンだったか、君も結構イケる口か?」

 どかりとマーヴィカの向かいに腰を下ろしたファルカの手には、カラフルな小瓶が幾つか握られている。あれは確か、旅人がカウンターの奥に押しやっていた物のはずだ。

「そういやさっき見つけたんだが、この酒、なんて酒なんだ? 甘ったるい匂いだが、クッと喉を灼く強さがあって美味かった。土産に買って帰りたい」
「ああ、これなら私も先程飲んだぞ。どこの酒だったかな、確かこの瓶はのびのびリゾートで使っていたものだと思うが……オロルン、君はこの酒に見覚えは無いか?」
「きゅ?」

 イクトミ仔竜はなんのこっちゃわからん、といった具合で首をかしげ、興味はないといった様子で再びジョッキに口をつけた。

「あはは! その子は人じゃないのにねぇ。三人にはオロルン君に見えているみたい」

 きゅうきゅうと啼き声がひしめく中、ポロン、と澄んだ音が響く。いつのまにか仔竜の群れから抜け出したウェンティが、踊り場の手すりに腰かけてライアーを奏でていた。

「大事にはならなそうだからいいけど、そのお酒、扱いはちゃんと考えたほうがいいかもね」
……止めないのか? あんたのツレだろう?」
「えへへ、おもしろいかな、って思ったんだ。でもまさかファルカまで幻覚に掛かっちゃうとは思わなかったな~、あんなにお酒強いのにね」

 にこにこと笑うウェンティに呆気にとられたイファだったが、いかん、仔竜の酒を回収するのが先だとカオスなテーブルに向き直る。
 
 その時だった。イクトミ仔竜たちが入ってきたままになっていた草臥の家の扉が、ギィと開かれた。

「待たせてしまってすまない。準備に時間がかかってしまった。さあ、みんな、帰ろう」

 現れた蝙蝠耳の青年――オロルンは、抱えていた大ぶりな酒瓶の栓をおもむろに抜くと、中身を床に垂らし始めた。とぷとぷと床に落とされる酒から、ふわりと甘い匂いが漂う。

……勿体ないが、これが一番いい方法だ」

 オロルンはぼうっと淡い光を放つ酒――蛍光ツノキノコのキノコ酒を、道を描くように垂らしていく。扉を抜け、競技場の北口を回り、イクトミ竜たちの棲家のあるシャラクの谷へ。
 キノコ酒の匂いを嗅ぎつけた仔竜たちは、なんだなんだと入口の扉へと集ってきた。それが点々と続いているのだと気づくと、次々と列をなして酒瓶から雫を落とすオロルンへとついて歩いていった。てちてちと歩んでついていく仔竜たちの行列はあまりに長く、合鴨というよりは蟻のような様相だった。
 その場に居る全員がぽかんと呆気に取られている間に、一階にいたイクトミ仔竜たちは皆残らずオロルンの後をついて外に出て行った。残されたのは、酔っ払いだけだ。

「あら? おろるんはどこにいったの? オカワリをもってきてもらおうとおもったのに!」
「ばあちゃん、さっきのはオロルンじゃないし、もう止めといたほうがいい……


 二階に引き上げていた面々も元の位置に戻り、『ドラゴンテール』は再開された。でろでろの酔っ払いたちを端のテーブルに纏めてしまったのもあって、その後は和気あいあいとした優しい時間が過ぎていった。
 特に旅人のバーテンダーは最高で、皆の要望にぴしゃりと嵌るカクテルやドリンクをいろいろと作ってくれた。草臥の家の店員さんがメモを取っていたから、いくつかはいずれ店のメニューに並ぶだろう。
 こうやって皆で笑って過ごせるのも、大戦を切り抜けられたからこそだ。
 屈託ない笑顔を浮かべながら、まだまだ行けると酒杯を空けるマーヴィカをみて、イファは勝ち取れた平和を改めて噛みしめるのだった。

 * * *

「いててて……ばあちゃんは本当に手加減を知らない……
「お前が余計なことを言った所為だろう」

 イクトミ仔竜を棲家に帰したその足で、オロルンはまた夜神の国の『隊長』を訪ねていた。ぴょこんと揺れる蝙蝠耳の少し後ろが、たんこぶのように腫れている。

「それと、無暗に来るなとも言ったはずだ。またシトラリに叱られるぞ」
「大丈夫だ、今度は秘密にする」

 シトラリに詰められたオロルンだったが、『隊長』の現状はしっかりと黙ったまま切り抜けた。謝り倒しながら酒をなみなみと注いでやれば、よっぽどでなければ昔のことを引っ張り出したお小言に擦り替わるのだ。……あまり使うと効力が薄れるから、ここぞ、と言う時だけ使っているとっておきだ。

「そしてこれが本題だ。これを君に」

 オロルンは得意げな顔で、懐から小さな瓶を取り出した。中に入っている液体がちゃぷんと揺れ、色付きの瓶からぼんやりと光が漏れている。

……これは」
「君に教えてもらった『キノコ酒』だ。蛍光ツノキノコで作ったんだが……まずかったか? 味はばあちゃんのお墨付きだから、保証できるぞ」
……ありがたく、貰っておこう」

 他の者が作った酒を飲む機会など、ここに来てからは滅多にない。たまの娯楽にはちょうどいいだろうとその瓶を受け取った隊長は、魂に影響が出ないうちにさっさと帰れとオロルンを促す。
 素直に言に従ったオロルンを見送り、隊長は渡されたキノコ酒をくっと喉に流し入れる。見た目に似合わず優しい口当たりのそれに、平和になったナタの風を感じた。





――きゅ!