fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
Public
 

ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います



港の小事件

「蒲公英酒の酒樽が三つ。モンドのウェンティさんからですね」

「ああ、間違いない」


 マーヴィカにモンドからの返信を届けたキィニチは、その場でマーヴィカから『ドラゴンテール』の話を聞き、モンドからの贈り物の荷受けを依頼された。もっとも、重量のあるものなので自力で運ぶのではなく、港での荷受けを済ませて専門の運送業者へ引き渡すだけの簡単なものだ。
 問題なく手続きを済ませ、運送業者へ草臥の家まで運ぶように頼んで依頼を終えると、どうも騒がしい一角が目に入った。何事だろうかと視線を向ければ、馴染みの顔と目が合った。ぶんぶんと手を振りながら、軽い足取りで近寄ってくる。

「キィニチも来てたんだ!君も炎神様のおつかい?」
「ああ。ムアラニも同じ件か」
「んー、だいたいそう!シトラリおばあさまが、『今度の催し、お酒が飲めないキミたちもいろいろ楽しめたほうがイイわね』って、いろんな国のジュースを手配してくれたの!それを受け取りに来たんだけど……ちょっと困ったことになってるみたい」

 見物客が人垣を作っている中を覗いてみれば、何人かの職員が、ひどく焦った様子で荷をひっくり返している。そんな中、一人だけ浮いた様子でぶつぶつと何か呟いている小太りの男がいた。それが目についたキィニチは、その男の肩を叩いた。

「何があった」
「ヒエッ!あ、ああ……俺はただの船乗りだ。他のやつに聞いてくれ」

 フォンテーヌの装束をまとったその男はひどく慌てた様子で、自分の腹を大事そうに抱えながらキィニチからいそいそと離れていった。

「なーんか怪しいね、あの人」
……ああ。マークしておくに越したことはないだろう」

 他に誰か、と辺りを見回せば、何度か届け物をしたことがある豊穣の邦の商人が目に入った。改めて騒動のわけを聞けば、なんでも積み荷からロマリタイムフラワーの果汁ジュースが消えているらしい。
 
「ロマリタイムフラワーの果汁ジュース、か……

 ふむ、とキィニチが口元に指を当てて考えていると、緑の影が目の前を横切った。
 数匹の小柄なユムカ仔竜がぴょんぴょんと荷の近くを跳ね回り、またどこかへと駆けていく。どうやら追いかけっこをしているようだ。愛らしく和やかなその様子に、あわただしくしていた辺りの雰囲気が少しだけ緩む。
 そんな中、もっと気の抜けた一匹がふよふよとキィニチの隣へ飛んできた。

「ふわ~。キィニチ、我輩の飯は……
「やっと起きたのか。お前もあの子たちの愛らしさを少しは見習え」
「ハァ!? 聖竜である我輩をあんなチビどもと一緒にするな!」
「うるさい」

 眠いから寝かせろと駄々をこねたため家に置いてきていたアハウが、朝食を求めて出てきたらしい。出てきたとたんキャンキャンと吠えるように騒がれ、うるさくするくらいならずっと寝ていてくれとため息を漏らす。
 その時だった、人垣の中から大きな声が上がった。 

「お、俺、見たぞ! 緑色の竜がジュースの瓶を持って行ったんだ! ほら、あいつ!」

 声を上げたのは、先ほどの小太りの男だった。キィニチの隣を飛んでいるアハウを指さし、捕まえろと叫んでいる。

「何だ? ジュースがあるのか? それならこの聖竜、クフル・アハウ様が直々に味見をしてやろう」

 事態を把握できていないアハウが、ジュースを求めて荷に近づこうとする。皆の視線がアハウへ向く中で、キィニチの視界は、一人船に乗り込もうとしている男を捉えた。
 一つ大きく溜息を付いた後、地面を蹴って荷積み用の巻き上げ機に飛び乗る。そのまま不審な男の足元に鍵縄を絡めると、滑車に縄をかけ、自重で反対側を引き下ろした。

「あぎっ!」

 足を絡めとられた男は、カラカラと体をひっぱり上げられる。間抜けな声を上げて吊られた男の腹の下から、布に包まれた塊が落ちた。

「ムアラニ!」
「はいはーい!まっかせてー!」

 抜群の運動神経で、駆け込んだムアラニが荷を抱きとめる。ちゃぷんと音が鳴ったその包みを解くと、中の瓶には『ロマリタイムフラワー果汁』と記されていた。

「あー! これ、探してた荷物じゃん!」
「やはりこいつだったか。そのジュースはフォンテーヌ国内で製造が終わってしまい、プレミアが付いている。本国に持ち帰って売り捌くつもりだったんだろう」

 放せと呻く男を下ろし、手際よく縄で縛り上げる。港の職員へ引き渡したので、しばらくすれば談義室からの沙汰があるだろう。
 騒ぎも落ち着き、ムアラニは受け取った荷物を手にシトラリの家へと向かった。キィニチも依頼の報告をするために、談義室のマーヴィカの元へと向かう。

「だいたい、アハウがジュースを盗んだとしたら、こそこそ持ち帰るなんてせずにその場で空けている」
「ムキーッ! 我輩をなんだと思ってやがる! ま、そんな盗むなんてまどろっこしいことはしねーのは合ってるけどな」
「お前にあの繊細な味は勿体ない。ケネパベリージュースでも飲んでろ」
「なんだよ、まるで飲んだことあるみたいな言い方じゃねーか。こうなったらあのジュース、ぜってー我輩一人で飲んでやるからな!」

 キィニチは一段と大きくため息をつくと、帰路をシトラリの家の方角に逸らそうとしたアハウの尾を掴んだ。
 鍵縄を繰り出し、そのまま宙に身を躍らせる。ぎゃあぎゃあ騒ぐアハウと共にナタの空を駆け、いつものように依頼主の元へと跳んでいった。