fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
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ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います


デッド・ヒート

 コース上では、激しい競り合いが続く。
 岩々の間を軽やかに跳んでいくキィニチの背を、一拍遅れてファルカが追う。どこかのタイミングで追い抜いてしまいたいが、限られた足場では仕掛けることができない。だが迷っている暇はない。コースアウトぎりぎりの岩壁を蹴って距離を詰めようとしたその時、水飛沫を上げながら走る影が、楽し気な鼻歌を響かせながら二人の横を抜き去っていった。

「おおーっと! ムアラニ選手、ここで怒涛の追い上げ! 一気に一位へ躍り出たぁ~!」
「さすがはムアラニだな。彼女は流泉の衆のサーフィン大会で、毎回輝かしい成績を収めているチャンピオンだ。水上での速さであれば、彼女の右に出る者はそう居ないだろう」

 グレインチップスを食べ終えたのだろうか。風神と炎神による実況解説が戻ってきた。サーフィンチャンピオンだというムアラニは、楽しそうに笑いながら、ざぶざぶと波を掻き分けて進んでいく。……波? いや待て、ここは川じゃないのか。

「彼女の愛用しているざぶざぶサメくんは、サーフボードだが、淡水サメでもある。この川をも自在に乗りこなしているのは、それあってのことだろうな」
「いやいやいや待て待て待て! それはアリなのか!?」

 マーヴィカの解説に、思わずツッコミを入れてしまった。

「ちゃんとイアンサにもオッケーもらってるよー!」
「とのことだ」

 聞こえていたのだろうか、先頭から元気な声で返事が返ってきた。まさか、この実況は全体に中継されているのか?
 ざぶざぶサメくんを自在に操り、ムアラニは道中に沸いていた水スライムすら軽々と跳び越えて進んでいく。サーフィン大会優勝常連というのは伊達ではないようだ。
 追わなければならない背が二つに増え、ファルカの脚に力が籠る。

「うぉぉぉぉ!」

 気合を入れ直し、力強く岩を踏んだ。


 * * *


 キィニチとはほぼ同着でチェックポイントに辿り着くことが出来たファルカだったが、やはりあのムアラニの速度に追いつくのは厳しかった。
 崖登りで挽回するっきゃない。そう思いながら肩を回してロープのところに行ってみれば、ムアラニがまだ地面に居た。

「ううっ……ぬるぬるで上手く掴めない~」
「すみません、水スライムの粘液がロープに沁み込んでしまっているみたいで……厳しそうなら、フリークライミングで登っていただいたほうがいいかもしれません」
「えぇー……でも、頑張るしかないよね! よーし!」

 ロープにはちゃんと瘤があるし、気をつければ大丈夫だね! と、ムアラニは一度落胆していたものの、気を取り直して登っていく。それでもだいぶヌルつきによる不快感があるようで、時折眉をきゅっと寄せていた。
 キィニチもロープに手を掛け、すぐ異変に気がついたようだ。苦戦しながら登るムアラニを一瞥すると、ロープが垂らされている岩肌から少し逸れた場所へ移動していった。ここから見える限りでも、あっちの方が掴める岩が多そうだ。

「おおっと、トラブルみたいだね~。現地からの情報によると、どうやら水スライムの大量発生のせいでロープがちょ~っと滑るようになっているらしいよ」
「スライムの件はスタッフと協議したが、危険性はないと判断し、レースはこのまま続行とする。各自、安全には十分に気を付けたうえでゴールを目指してくれ」

 となれば、俺も素手で行ったほうが早そうだ。手をはたいて短く息を吐き、キィニチが登り始めた岩肌へ駆け寄った。


 * * *


 崖を登り切ったのは、ほぼ同時だった。松明で縁どられたコースが、そこから競技場のほうへと伸びている。吊り橋で繋がれた道の先には観客たちが待ち受けており、選手の到着を今か今かと待ちわびていた。

「さぁてレースも大詰めだね。勝つのはファルカか、それともキィニチか!」
「ファルカおじさーん! がんばれー!」
「いけーキィニチ! そのままぶっちぎれ!」

 声援が風に乗って聞こえてくるが、まだ距離があるせいでかすかに聞こえるのみだ。小さく揺れているあの桃色の髪はアイノだろうか。
 
「応えねぇわけにはいかねぇな!」

 ファルカが大柄な体躯で吊り橋の木床を踏み込むと、全体がぐんとたわむ。先行していたキィニチの体がわずかに傾き、バランスを取ろうと少しだけ速度が緩んだ。
 揺れる吊り橋をものともせず、その横をファルカが駆ける。風を纏った天狼にまさに追い抜かれんとしたその時、キィニチは床板を強く踏みつけた。
 跳躍。
 宙に身を躍らせ、キィニチは前方の監視台に向けて鍵縄を放つ。それを軸にぐるりと勢いをつけて跳び上がり、そのまま空中で次の狙いを定める。
 大きく吊り橋を揺らしながらも、それをものともしない速度で駆け抜けるファルカ。揺れなど関係ない場所を行けばいい、と宙を跳び進むキィニチ。両者は瞬間瞬間で順位を入れ替えつつ橋を渡り終え、競り合いながら最後の一直線に差し掛かった。
 着地こそわずかにキィニチが早かったが、純粋な走力勝負に体躯の差は多少、響く。かといって悠々とキィニチを抜かせるほどの差は無く、ほんの少しリードをとったかと思えばすぐに追い抜かれる。
 土煙を上げながら二人が駆け込むと、辺りは一段と大きな歓声で埋め尽くされた。

「ゴーーーール! 今、このレースの覇者がぁ、決まったぁ!」
「ほぼ同着だな。順位の決定は、写真判定にて行おう。ゴールを踏んだ瞬間にシャッターが切れるようになっている」

 ゴールラインを見通せる位置に、大きめの写真機が据えられている。判定に支障が出ないようにと、周囲にはロープが張られ、スタッフ以外は触れられないようになっていた。

「さて判定の結果は~、って、なぁにこれ! 真っ白だよ?」
「何だって?」

 ウェンティの元に届けられた写真は、画面いっぱいを白いなにかが埋め尽くしていた。ファルカ、キィニチの当事者を含む数人で確認してみたが、どうも写真機の故障で何も撮れていない、といった感じではない。

「何か白いものが、どアップで映ってるって感じだな……しかしこれじゃあ順位がわからん」
……
「おや、キィニチ。どうしたんだ?」
……炎神様、この白い腹の正体に心当たりがあります」

 キィニチはかぶりを振って大きな溜息を吐いた。言葉を続けようとしたその瞬間――

 やかましい声が、辺りに響いた。


「あーっ! お前ら、ごちそうを取るんじゃねぇ! その肉は吾輩のものだ!」
「やっぱりお前か、アハウ。……ごちそう? 何のことだ?」

 キィキィと騒ぐアハウが飛んできて、ウェンティの手にあった写真機をひったくった。花の蜜を煮詰めたような甘ったるい香りが、アハウが通った場所から匂ってくる。

「いっただっきま~――ゴフッ」

 キィニチは写真機に齧り付こうとしていたアハウを張りとばし、それを取り返した。べちんと音を立てて競技場の壁に激突したアハウは、ぐるぐると目を回してその場に落ちた。

「おーい、大丈夫か……?」

 伸びた竜? を屈んで見てみれば、花の香り以外にも、どうも酒のような匂いもする。

「ファルカさん、そいつは放っておいていい……いや、縛っておくか」

 手慣れた様子でキィニチが伸びている竜の手足を括り付け、近場にあった小さめの木箱に放り入れた。更にそれをもう一段大きい箱に入れて封をしているのを見守っていると、何人かこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

「すまん、キィニチ。アハウが――

 逃げた、と続ける前にキィニチは駆け寄ってきた白衣の青年に木箱を渡した。

「ああ。問題ない、捕まえた。箱を二重にしておいたから、今度こそ出てこれないだろう。こちらこそ迷惑をかけてすまない、イファ。本選が終わるまで、こいつを頼む」
「ああ。今度こそしっかり見張っておくよ」
「まかせろ、きょうだい!」

 アハウの腹が大写しになっていたせいで、レースの結果は判定不能。それにより、キィニチ、ファルカの同率一位として処理することとなった。三位はクライミングで怒涛の追い上げを見せたヴァレサ、四位は水上で圧倒的な速さを見せたムアラニだ。

「ようし、次の種目までまだ時間あるよな? ちょっと行ってくる!」
「あ、待って~! ボクも行く~!」

 予選はあと一種目、確か球技が残っている。次の種目が始まるまでになんとか酒を手に入れようと、ファルカとウェンティは屋台めがけて駆けて行った。