fedge
2026-03-10 20:20:19
53651文字
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ドラゴンテールへようこそ!

ナタ+αのCPなしオールキャラ。
竜とふれあいながら飲めるイベント「ドラゴンテール」を開催することになったナタの面々。お呼ばれした風神と付いてきたファルカも混ざって大宴会!

※普段カピオロ書いてる奴の文章です。ご了承願います


もっと甘くたっていい


「チャスカさんがあの場にいてくれて助かりました。ありがとうございます」
「しかし驚いたよ、まさかイネファが来てくれるとは思わなかった」

 ピースキーパーに跨ってイネファを乗せ、チャスカはナタ北西部の空を飛んでいた。目線を下げた少し先には、アイノを背に括りつけたマーヴィカが、双駆輪に跨ってスピリットウェイを駆けている。マーヴィカの運転する双駆輪に幼い子どもを乗せるのは少し不安だったが、誰が誰を乗せていくか決めていた時に、アイノが双駆輪に夢中になってしまったのだった。本人が楽しそうならそれでいいが、到着したらすぐに休める場所を用意してやるべきだろう。
 さらにその下には――ファルカが己の脚で後を追ってきている。ナタの大地は起伏が激しいというのに、人間離れした動きで高低差をものともせず跳んでいた。因みにウェンティは「着いたばかりで動きたくないから、宿で飲んでるよ~」と手をひらひらと振っていた。

 聖火競技場の宿には空きが無かったが、チャスカに宿の心当たりがあるとのことで一行は花翼の集へと向かっていた。今朝方、花翼の集にあるゲストハウスでトラブルが起き、連泊予定だったスメールの学者が翌日以降の宿泊をキャンセルしていた。近くにいたチャスカがその騒ぎを治めたため、事の詳細を聞いていたのだった。

 集落へと辿り着くと、案の定、アイノはグロッキーになっていた。

「すまない。いつもの半分ほどのスピードに落として、安全運転を心がけてはいたんだが……
「え……ええー……あれで半分なの……?すごいね……あとで……どういうしくみか……みせてほしい……うぷっ」
「警告:アイノの胃液がこみあげてきているようです。失礼します」

 イネファは素早くアイノを抱え上げると、川のほとりへと駆けて行った。その速度は凄まじく、あっという間に姿が見えなくなった。マーヴィカは申し訳なさそうにその背が消えた方向を見ている。

「大丈夫だろうか……申し訳ないことをした。とても楽しそうにしてくれたから、つい派手な動きをしてしまった」
「一体何を……
「宙返りを四回、スピリットウェイを乗り換える大きなジャンプを八回。それと、走行面スレスレのドリフトを少々、だな」

 それだけやればああなって当然だろう、と喉まででかかったが、本人が反省している様子なので言うだけ野暮だろう。

「それにしても、アイノは相当頭がいいみたいだ。双駆輪の仕組みに大変興味を持っている様子だったから、後でシロネンの所に連れて行ってやってもいいかもしれない」
「そうですね。イネファが話していた通りなら、彼女は相当な技術力のある技術者です。シロネンとも話が合うかもしれません」

 アイノとイネファが川から戻ってくる頃、入れ違いで到着していたファルカが宿の手続きを済ませて戻ってきた。彼自身は聖火競技場に泊まる予定だが、自らが連れてきたイネファとアイノへの誠意だろう。……もっとも、きちんと連絡を貰っていれば、二週間前ならまだ聖火競技場の宿も取れたのだが。
 二言三言交わしたあと、彼は族長に用事があるのだと消えていった。休暇で来ているとのことだったが、西風騎士団の大団長ともなれば、その傍らでもやらなければならない仕事があるのだろう。

 すっかり元気を取り戻したアイノは、やはり双駆輪やピースキーパーといった、燃素駆動の機械が気になる様子だった。双駆輪を下からのぞき込むようにしながら、気になったことを片っ端からマーヴィカに訊ねている。

「動力はナタの大地に溢れている「燃素」だ。元素力よりも、より原始に近い力だよ」
「燃素……クーヴァキと似てるね! クーヴァキのことならアイノわかるよ! それだったら、ここのパイプをもう少し曲げて、こっちにこうもってきたら、出力が安定すると思うけど、どう? あ、えっと……本当に燃素とクーヴァキの特性がおんなじだったら、だけど」
「そ、そうだな……

 時々、専門的すぎる質問が飛んできて答えに窮してしまったマーヴィカは、今日のお詫びに明日、双駆輪の制作者を紹介する、と約束を交わした。
 工房に連れて行ってもらえるとのことで、アイノは大分上機嫌になっていた。すべてが物珍しい他国に出てきて、新しい技術を得られるチャンスとあれば、胸が高鳴るのも当然だろう。
 そうこうしている間に、ゲストハウスの掃除が終わったと連絡が来た。

「部屋の用意ができたようだ。二人とも、荷物をもってついてきてくれ」
「私はそろそろ戻らねば。明日の朝、ここまで迎えに来よう」
「はーい!」

 アイノの元気な返事は聞こえたが、イネファの声が聞こえない。どこに行ったのかと見回してみれば、遠目で子どもたちに囲まれているのが見えた。

「イネファおねえちゃん、久しぶり! ボクたちのこと、覚えてる?」
「覚えています、カパックさん。アディエッタさん、ヤトランさん、コーティミさんも、お久しぶりです。あの時いただいたお花は今、ナド・クライの家に飾っています」

 どうやらイネファが以前ナタに来た時に知り合った子どもたちに捕まっているようだ。イネファにだいぶ懐いていたようだったから、彼らも再会が嬉しいのだろう。わちゃわちゃと子どもたちに囲まれながら丁寧に受け答えしているのもあって、こちらの呼ぶ声は聞こえていなかったらしい。

「あの子たちはだあれ?」
「ああ。前にイネファがナタに来た時、ここに長く滞在していたんだ。その時に仲良くなった友達だろう」
「ふーん……イネファのお友達なら、アイノもあいさつしなきゃだね!」

 そう言ってアイノはイネファに駆け寄ろうとしたが、止まった。くるりとイネファに背を向けて、チャスカの元へと戻ってくる。
 イネファのほうを見れば、嬉しそうに笑っている子どもたちがイネファの手を握り、きゃっきゃとはしゃいでいる。イネファの口角も少し上がっているので、彼女も楽しいのだろう。

「ん?行かないのか」
「なんか今いっちゃいけないような気がするんだ。でもチャスカねーちん、ちょっとここがキュってするんだ。バイクで酔ったせいかな」

 なんでだろう、とわずかに目を伏せたアイノは、ふるふると首を振った後に顔を上げた。

……もうちょっとだけ待ってることにする! イネファもお友達とお話したいかもしれないもんね!」

 この年頃の子どもにしては、いやに物わかりがいい。ナド・クライという厳しい土地柄がそうさせているのだろうか、はたまたこの子の頭の良さがそうさせているのだろうか。
 だとしたら、もう少し子どもらしくさせてあげても罰は当たらないだろう。

「イネファがお友達と話している間、これに乗ってちょっと散歩するか? もちろん、炎神様よりも丁寧に運転しよう」
「え! いいの!? ……でも、やっぱりイネファと一緒がいい!」
「そうか。じゃあ、一緒に待っていよう。そうだ、甘いものは好きか?」

 たまたま持ち合わせていた『高らかな歌声』を取り出すと、アイノの目はみるみる元気になった。オレンジ色でころころとしたキャンディで、エンバーコアフラワーの甘い蜜の中に、ほのかにミントの清涼感が漂う、花翼の集でよく食べられているものだ。

「大好きだよ! わーい! チャスカねーちん、ありがとう!」
「待ってる間、君やイネファのことを教えてくれないだろうか」
「もちろんいいよ! えへへ、イネファはねー……

 『高らかな歌声』を一粒ずつ口に放り、からころと甘いそれを舌で転がす。ベンチに座って話をしながら待っていれば、イネファがこちらの視線に気づいたようだ。
 子どもたちに手を振って別れを告げたところを見たアイノが「イネファー!」と呼ぶと、イネファはすぐにアイノの側へと駆け寄ってきた。