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シノハラ
2025-11-05 00:17:44
76995文字
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無風
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无风短編まとめ
全部全年齢です
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My long-lived mortal
※无风ワンドロ・ワンライ~春Special~ 休日・怪我 より
湯で温もった体のまま、冬物からあいの時期用の寝具に変えて随分軽くなった布団を被る。
綿に移した体温がこちらに戻ってきて、その温度がまどろみを呼び起こしてくる頃に無限が風呂から上がってきたようだった。
閉じていた瞼を上げると、下までしか寝間着を着ていない無限が見える。
脱衣所に服を持って行くのを忘れたという様子でもないので、どうやらそういうつもりのようだ。
ベッドに腰かけてこちらを見下ろす無限を見ながら、どうしようかなと風息は思案する。
彼との性生活を嫌うわけではないが、今は良い具合に眠気が訪れてしまっているのだ。
できればこのまま二人で心地よくうつらうつらとしながら、深く寝入ってしまいたかった。
緩く目を伏せて、身を屈めた無限が風息の唇に自らのそれを合わせる。
耳にかけられていた髪が遅れてさらさらと落ちてきて、外界から隔てる瞬間を眺めるのが好きで、風息は口づけされてすぐは瞼を落とさない。
無限が窺うように何度か唇を合わせる角度を変えるのがくすぐったくて、風息は僅かに目を細める。
そのついでにゆっくりと瞼を落としたのを、無限は合意と取ったらしい。
無限がゆるりと唇を合わせたまま合わせ目を緩め、風息に同じ動きを求めてきた。
「やだ、今日はしない」
手で捕らえられていないからまだ自由な頭を引いて、無限の口づけから逃れて風息は告げる。
何かまずいことでもしただろうかと思ったらしい無限が気遣わしげな視線を向けてくるが、その内にねだる気配があることも手に取るように分かった。
さて、どう躱すのが最適だろうか。
「お前との休みをよく分からなくなって終わるのはもったいないというか」
執行人である無限と、執行人の仕事を手伝わされている風息の繁忙期は当然ながら綺麗に被る。
ただ、風息の方が手伝いであるがゆえに仕事が早く手を離れるため、無限の仕事が落ち着くのを待つことになりがちだ。
ようやく無限の案件が片付いて、まとまった休みが得られた最後の日。
またしばらく恋人と離れることになると思えば、手を出してしまいたくなる気持ちも分からなくはない。
だが、それはそれとして、風息は今日というこの日をそうやって終わらせたくはないと思ってしまっている。
「その言葉で男が引き下がると思うなら、考えを改めた方がいいと思う」
「
……
確かに」
煽られた気持ちを押し殺しているのか、恋人の本気で拒むつもりなのかよく分からない言い回しに神経を刺激されているのか、無限が剣呑な調子で風息を諫める。
ちょっとした強引さを求められているのかと、考えてしまっても仕方がない言い回しをしてしまっていた。
彼の言う通り、断るのであれば性的なニュアンスは抜き切ってしまった方がよかっただろう。
ごめん、と素直に謝ると、無限が諦めの交じった息を吐いた。
どうやら風息の思いを尊重してくれるらしい。
「口でするくらいならしてやるけど」
「私が性欲処理のためにあなたを誘っているとでも?」
収まりがつかないならと提案してみたが、無限は余計に機嫌を損ねてしまったらしい。
拗ねた響きで文句を言う無限に苦笑して、風息は可愛らしい人の少し強張った頬に触れる。
まさか、そんな風には思ってないよ。
そう、子供を宥めるように言えば無限が風息の手にすり寄ってくる。
「ほら、一緒に寝よう」
そうやって彼を誘えば、無限はそのまま布団を捲って風息が温めた寝床に入り込んでくる。
服は着なくていいのかと尋ねれば、気候もよくなってきているし、あなたが温かいからと風息を抱き寄せてきた。
外気に触れたせいで皮膚は冷たくなっていたが、温められていた体は熱を溜めこんでいるらしく、すぐに温度を取り戻す。
抱き締められた風息の目の前には無限の肩があって、そこには大きな古傷が一つあった。
程度こそ違えど、彼の体にはこういうものがあちこちに残っている。
指でそっと触れてみると、少しへこんでいて、他の部分とは触り心地が異なっていた。
妖精の体ではこんなものは残らない。
無限が傷の一つも完全に修復できないような種族の生まれなのだと、今更ながらに実感してしまう。
本当なら風息が生まれる一世紀半前にはすでに死んでいて然るべき人が、死の概念すらあやふやな妖精に付き合うように長きを生きてくれている。
彼が今日も生きている。
当然のこととして受け入れていた事実が、突然大変な奇跡のように感じられた。
そう思うと酷く愛おしくなってしまって、風息は無限に口づける。
彼からすれば脈絡の感じられない風息からの接触に、無限は少しばかり驚いたらしかった。
それでも無限が静かに風息の口づけを受け入れているうちに、これだけでは物足りない思いが湧き上がってくる。
「このまま続けるなら最後までしてしまうけど」
唇の間から舌を伸ばして彼の唇を割り、ちょんと無限の舌を突くと、無限の指先に力が籠った。
腕に閉じ込められている感覚が強くなって、風息を愛したいと彼が求めているのを感じる。
「その気になった」
舌の根も乾かぬ内に何を言うのかと自分でも思うので抵抗はあったが、白状することにする。
風息と似たような感想を抱いたのか、それを聞いた無限が少し笑ってから風息にこれから深くなることを予兆させる口づけを寄越した。
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