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シノハラ
2025-11-05 00:17:44
76995文字
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無風
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无风短編まとめ
全部全年齢です
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つきもの落とし
※バンドパロ
埃が反射しているのも分かるくらいの強い照明は肌を焼くほどの熱量を持つのだ、といつか風息が話してくれた。
視線を上げすぎると目を焼いてくるそれを視界に入れないようにしながら客席を見ると、そこは風息の一声を待ち焦がれる期待の塊と化している。
突き上げられるようなそれに触れると、中からも外からも焼かれるようで、もう正気ではいられない。
籠った熱にあてられた風息はその一夜獣と成り果てる。
観客を魅了し、自身を食らわせながら、自らもまた彼らから受ける熱量を咀嚼もせず丸呑みにした。
お前には合わないと思うけど、と言われながら参加したときはその激しさに飲まれてしまって、後ろの壁の方で固まっていた記憶がある。
絶妙な彼氏面で面白かったと風息は笑ったが、正直なところ怯えてしまっていただけだったように思う。
双方向の奪い合いの果てに自らを吐き出しきれれば、そんな夜の余韻などおくびにも出さぬけろっとした顔で風息は無限と暮らす家に戻ってきた。
夜明けの少し前に無限の寝床に入り込んで、無限が彼の横顔を眺めているうちに眠りに就くのが常である。
髪を乾かすのが億劫らしく身体の汗だけ簡単に流してしまっているせいで、風息の身体には少しだけ汗の匂いが残っている。
布団の中にいた自分よりも低い温度の身体を抱き寄せて、目覚ましが鳴るまでうつらうつらとまどろむのが無限は好きだった。
いつも通りベッドに入り込んでくる風息を抱き寄せると、自身の首筋でぴちゃりと濡れた音が響く。
それを鳴らしたのは彼の舌であるのは間違いなくて、ああ、良くなかったのだな、とぼんやり思いつつ彼の首筋を指先で擽ってやった。
例えば、観客が乗りきっていなかったように感じたとか、気持ちよく歌いあげられないパートがあったとか。
無限どころか、下手をすれば長く通う観客にも分からないような些細な躓きがあると、風息は人に戻れないまま無限の下に帰るはめになる。
むず痒い疼きのような、ぴりぴりするような感覚が照明に焼かれた皮膚の表面を這い回った状態で自分の恋人に出くわすと、それが一気に性欲に変転してしまうらしい。
無限の肌を舐めれば舌の先にあるピアスが転がって心地よいのか、うっとりとした呼気を風息が吐き出す。
したいのか、と訊ねれば、風息がじれったそうにうん、と応じてごわついたジーンズ越しに下半身を擦り寄せてくる。
どうやらシャワーを浴びるつもりにもなれずに寝室まで一直線にやってきたらしい。
じゃあしようか、とつんと尖った耳に吐息交じりに囁けば、ひくりと肩を跳ねさせてから風息が無限にしがみついてきた。
目の前で常夜灯の鈍い光を弾いたライブ用の派手なピアスは、何かの拍子に引っ掛けてしまいそうで恐ろしい。
髪をかき上げて耳を露わにして一つ一つ外してやると、指が当たるのがくすぐったいのかくすくすと風息が笑う。
無限を煽りたいのかじゃれつかれながらも両方の耳のピアスを外してから口元に唇を寄せると、分かってはいたものの強いアルコールの匂いがする。
打ち上げがあってから帰ってくるので当然と言えば当然なのだが、今日はいつも以上に深酒をしたようだ。
「こんなに飲んだらさすがに使い物にならないんじゃないか?」
強かに飲んだ事実を指摘しながら風息のそこを膝頭で押し上げると、予想した通りに反応が鈍くまだ柔らかさを伝えてくる。
突然の刺激に身を震わせた風息は、今度は一度つまった息を吐き出しながら笑った。
「使わないから問題ないだろ?」
お前と付き合い始めてから、もうずっとそういう使い方してないし、と風息が無限の瞳を覗き込みながら口にする。
そっちだけでいって終わりにするのってどういう感じだったっけ。
もう忘れちゃった、なんて明らかに無限を挑発するための言葉を次々吐き出してくるから堪らない。
「それに、立ってなくたってお前なら出させてくれるだろ?」
「
……
寝起きの人間に期待しすぎだよ」
つまるところ、彼は前立腺の更に奥にある精嚢を無限の欲望で押し上げられて、萎えた状態のまま無理やり精液をどろどろと零したいと言っているのだろう。
そのまま何も出せなくなってからドライオーガズムまで導かれて、正気を失うまで感じ入ってようやくいつもの彼に戻るのだ。
なあ、頼むよ、と甘ったるく求める声はライブのために調整されていたため普段より少し高く響くが、すでに酷使されたせいで掠れて聞こえる。
その声はセックスの最中のそれにも似ていて、寝起きの緩んだ無限の思考をじわじわと侵した。
深夜から早朝の間に帰ってくる風息に起こされることを見越して早く寝付いてはいるものの、本当ならもっと眠れたのだ。
強制的に覚醒させられる脳について行けず、まだ眠いと不平を漏らしている身体を持ち上げて風息に覆い被さる。
こういう時の風息は多少乱暴にしても気にしないが、あまりにやりすぎると日が出てからの仕事に支障が出るのは無限の方だ。
期待を寄せて見上げてくる彼をどうやって満足させてやろうかと思案しながら、無限はひとまず風息の鼻先に緩く歯を立てた。
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