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溶けかけ。
2025-04-12 15:55:13
27453文字
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花雨
なみセレ開催おめでとうございます!
エピローグまで更新終わりました。
みなさま、ご精読ありがとうございました!
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はんぶんこ(菜の花)
「案外、美味しいよ」
そう言って、食卓に並んだのは今の時期あちらこちらで見られる黄色い花(菜の花を茹でたものらしい)のサンドイッチであった。
「うん。僕も最初はそんな顔をしてたと思うよ」
フォンテーヌで菜の花といえば搾油が主な利用目的だ。食べる、なんて話聞いたこともない。とはいえ、それはあくまでここ、フォンテーヌでは、という話だ。遠く海を越えた稲妻では春の味覚として愛されているらしい。
「これが案外美味しいんだ」
眉間に皺が寄るほど眉を寄せて警戒心を顕にするヌヴィレット。安心して食べられるものである、と証明するためにフリーナはサンドイッチをぱくんと一口食べて見せた。
「だ、大丈夫か
……
?」
無言で咀嚼するフリーナとおろおろと心配そうに狼狽えるヌヴィレット。そんな様子が面白くて、つい、意地悪をしたくなったフリーナである。ふと、ヌヴィレットの様子を伺うフリーナの頭に名案が浮かんだ。
「うっ
……
」
「フリーナ殿!?」
ヌヴィレットが椅子から立ち上がる。よくよく引きつけてから勢いよく、フリーナが顔を上げた。
「お、美味しい
……
!」
ぱああああっと星すら瞬きそうなほどの輝かしい笑顔でフリーナはサンドイッチを咀嚼する。はあ、とヌヴィレットが呆れを含んだため息をついた。
「驚かせないでくれ
……
」
「ごめん。普段は見られないような顔だったからつい意地悪をしたくなってさ」
舌をちらっと出して茶目っ気たっぷりにフリーナが答えた。はあ、とヌヴィレットのため息が一段階深くなる。
「今後はこのような戯れは止めてくれ。
……
心臓に良くない」
そう言うとヌヴィレットは元の席へと着席をする。そして、サンドイッチに手を伸ばすと徐に口へと入れた。ゆっくりと味を確かめる様に咀嚼するヌヴィレット。やがて、喉仏が上下に動いた。
「美味だ
……
」
ヌヴィレットが驚きに目を見開く。その様子にフリーナは腰に手をやると、ふふん、と鼻を鳴らした。
「この僕が作ったものだからね! 美味しくて当然さ! おかわりはいかが? お客様」
「
……
頂こう」
ヌヴィレットの皿にサンドイッチがのせられる。サンドイッチを頬張るヌヴィレットをフリーナは優しい眼差しで見守っていた。
「最後の一個だね。ヌヴィレット、キミが食べるといい」
皿にぽつんと残されたサンドイッチ。フリーナは皿をヌヴィレットの方へと押しやった。
「君は食べないのか?」
フリーナが最初の一切れ以来、口を付けていないことに気づいたヌヴィレットが問いかける。
「実は作っている最中、何度か味見をしていてね。お腹いっぱいなんだ」
フリーナが笑う。ヌヴィレットは最後の一つを自身の皿に移すと切り分けた。綺麗に半分になった片割れをフリーナの皿にのせる。
「ヌヴィレット、僕、お腹いっぱいで
……
」
「
……
同じ食卓を囲んでいるのだ。一人で食べるなど寂しい真似はしたくない、という私の我儘を聞いてはくれないか?」
ヌヴィレットの言葉にきょとんとした表情を浮かべたフリーナはその後、花が綻ぶように微笑んだ。
「そういうことなら喜んで」
サンドイッチを食すフリーナをヌヴィレットは静かに見つめる。それから、断られなくてよかった、とひっそりと詰めていた息を吐き出した。
完璧主義な彼女が食事会当日に味見をするはずなどない、というヌヴィレットの予測は当たっていたようだ。現にフリーナは少しだけ物足りなさそうな顔をしている。おそらく、サンドイッチを気に入った私のために食べるのを控えたのだろう。
「そういえば、デザートに、と思いこれを持参していたのだが」
そう言ってヌヴィレットはスイーツの入った箱をテーブルへとのせる。デザート、と聞いて表情を明るくさせたフリーナに苦笑する。彼女の分まで食べてしまった私が悪いとは言え、スイーツを食事の代わりにするのは健康を害してしまうかもしれない。
──今日だけは大目に見よう。
蕩けた顔でスイーツを頬張るフリーナを眺めながらヌヴィレットは決意する。
今度、招待されるときは惣菜でも持参しよう、と。
菜の花の花言葉「快活な愛」
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