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溶けかけ。
2025-04-12 15:55:13
27453文字
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花雨
なみセレ開催おめでとうございます!
エピローグまで更新終わりました。
みなさま、ご精読ありがとうございました!
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明晰夢(ミモザ)
見ている世界が夢だと認識出来るときがある。それは、一般的に明晰夢と呼ばれるものだ。
何故、今、このような話を持ち出したかと言えば、ヌヴィレット自身がその明晰夢の中にいるからだ。
「
……
フォカロルス?」
「やあ、ヌヴィレット。こんばんは」
白い月と名も知らぬ白い花木が三人を照らし出す。ヌヴィレットとフォカロルス──そして、彼女の膝の上で寝息を立てるフリーナ。存在し得ない状況はヌヴィレットにここが都合のいい夢であることを示していた。
「いいじゃないか、都合の良い夢だって」
フォカロルスがヌヴィレットの心情を読んだかのように微笑んでそう言った。
「
……
私の思っていることが分かるのか?」
「ここは、キミの夢だからね。その答えはキミ自身が一番よく理解しているのではないかい?」
なんとも、まあ、都合の良い話だ。ヌヴィレットは鼻白む。
「フフフッ
……
納得いかないみたいだね」
「それはそうだろう。今は亡き君の言葉を捏造しているようなものなのだから」
「そうかい? 僕は奇遇が巡ってきたと思っているんだけど。あのときはこうしてゆっくりと談話に講じる余裕もなかったしね」
フリーナの頭をフォカロルスが撫でる。同じ姿とはいえ、彼女のフリーナへ向ける眼差しは子を慈しむ母親のように感じる。
「
……
すまない、ヌヴィレット」
「何が
……
」
「キミ、に全てを背負わせてしまった。権能を返したとは言え
……
いや、返したからこそキミは自由を失った」
フォカロルスのフリーナを撫でる手が止まる。それから困ったように眉を寄せた顔がヌヴィレットを見上げた。
「キミは自由に生きることも出来た。本来、キミにはフォンテーヌのこともテイワットのことも関係のないことだったのに」
旅人と同じ、テイワットに属さない者。それがヌヴィレットであった。いくら、水神の権能が水龍から簒奪したものだったとしても、本来ならばヌヴィレットにはフォンテーヌを予言から守る義理も義務もないのだ。ではなぜ、ヌヴィレットが水神亡き後、フォンテーヌを守り続けているのかと言えば、それはフォカロルスが仕向けたからに他ならない。おそらく、彼女はそのことに罪悪感を覚えているのだろう、とヌヴィレットはあたりをつける。
「私が君の手引きでフォンテーヌへ訪れたのは事実だ
……
。君の思惑通り、フォンテーヌ人たちの原罪を赦したことも。確かにこの事柄の始まりは君なのだろう。だが、それを自らの意思で選び、実行したのは他ならぬ私である。君の思惑は関係ない。私は私の意思で人々に
……
フォンテーヌと共に在ることを選んだ」
ヌヴィレットの真摯な瞳がフォカロルスを射抜く。
「ふ
……
フフフッ
……
! ハハハッ
……
!」
フォカロルスがこの場にそぐわない笑い声を上げた。ヌヴィレットの眉間に皺が寄る。
「何がおかしい?」
「いや
……
すまない。まさか、そんな答えが返ってくると思っていなかったものでね。いいね。それでこそ、水の龍王だ」
一頻り笑ったフォカロルスが瞳の端の涙を指で拭った。
「僕の愛も大概だと思っていたけど、キミの愛も大概だ」
すい、とフォカロルスが指を振る。指揮者がタクトを振るように優雅でたおやかな動きだ。
「これを、キミに」
緑の青い葉が繁り、白い小さな花が鈴なりに咲き乱れた枝を渡される。
「そろそろ目覚めの時間だね。なぞなぞの答えはキミ自身が探すといい」
微笑むフォカロルスの輪郭が滲み、曖昧になっていく。
伸ばした手は空を切った。
「待て! フォカロルス
……
!」
目を覚ましたヌヴィレットの視界に飛び込んできたのは白い鈴なりの花木が咲き誇る花園
……
ではなく、見慣れた自宅の天井であった。
「夢か
……
」
はあ、とヌヴィレットの口から小さく息が溢れる。吸い込んだ空気に混ざる柔らかな草木の香りに目を見開いた。夢の中で咲いていた花木と同じ香りの元を探せば、掛けていた毛布の上に手渡された枝が置かれていた。
ヌヴィレットは枝を掴むと部屋の隅にある本棚へと向かう。棚の中から植物図鑑を選び出し、同じ特徴を持つ植物を探す。
しばらくの間、室内にはページを捲る音で満たされる。
やがて、ヌヴィレットの手がとあるページで止まった。
「
……
君の言う通り、君の愛も大概だな」
ヌヴィレットの唇が緩む。
白いミモザの花が彼をからかうように静かに揺れた。
ミモザ(白)の花言葉 「死に勝る愛」
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