溶けかけ。
2025-04-12 15:55:13
27453文字
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花雨

なみセレ開催おめでとうございます!
エピローグまで更新終わりました。
みなさま、ご精読ありがとうございました!


別離の花に想いを込める(たんぽぽ)


 春。
 それは、人々は暗い色のコートを脱ぎ、華やかな暖色のカーディガンや薄いアウターを身につける時期だ。土の下では虫たちが冬眠から目覚め、各々の仕事を開始する。そんな暖かくなりつつある土を割って生えてくる力強い花がある。

 ふう、とフリーナが息を吹けば、白い綿毛がふわふわと風に舞った。ヌヴィレットはその様子を横目で見ながら、いつか聞いた「綿毛を一息で全てを飛ばせれば幸せになる」という話の真偽について考えていた。馬鹿馬鹿しい迷信だ、と初めて聞いた時は一笑に付したように思う。だが、こうして綿毛が総苞片に残っているのを見ると本当のことような気がしてくる。
「何を考えているんだい?」
 フリーナがけしかけた綿毛がヌヴィレットの衣装に舞い降りる。
「子どもでもあるまいに……こういった行動は慎みたまえ」
「やめろ、とは言わないんだね」
 ぱたぱたと手で綿毛を落としながら苦情を訴えたヌヴィレットにフリーナが子どもっぽい笑みを唇にのせた。何かを企んでいるような、そんな笑みだ。
「予約……なんてね」
 ヌヴィレットの左手の薬指に巻かれたたんぽぽの花をフリーナが指で指し示す。それから照れたようにそっぽを向くとヌヴィレットに背を向けて歩きだす。
「フリーナ」
 ヌヴィレットの声にフリーナが振り返れば、柔らかな感触が唇を掠めた。ぽぽぽ、とフリーナの頰に朱が灯る。
「これからは回りくどいことをせずに直接、私に言うと良い」
 遠くモンドでは、たんぽぽの綿毛に思いを込めて風に乗せる、という風習があるらしい。先ほどけしかけられた綿毛には彼女の言葉に出来ない想いが詰まっていた。
「な、き、気づいて……!」
……今の君は分かりやすいのでな」
 ふ、と口の端が緩む。
 顔を赤くして照れる彼女の短い髪が春風に揺れた。

 たんぽぽの花言葉 「幸福」「別離」