2024-09-14 15:03:20
99456文字
Public セフィクラ
 

【SC】(R18)非情なる夜明け revised edition

セフィクラ
高級男娼クと、英雄セのはなし(椿姫パロ)

二次創作を開始する前、習作として作文した椿姫パロの改訂版です。
原作では死別オチですが、ハッピーエンド。

◆24年11月に開催されるオンラインイベントに合わせて、オフ本を少部数発行予定です。
BOOTH頒布ページ: https://120520aqua.booth.pm/items/6108399

pixiv版: https://www.pixiv.net/novel/series/12355229

はげましのおたより💌 https://forms.gle/ovNkYwMhkS9WhdMg8



 二人きりになると、人目のない自宅でリラックスしているのか、クラウドは酒が進んでも前日のようにはしゃぐことなく大人しくしていた。本来は陰気な性分であると打ち明けた通り、普段は口数が少ないらしい。人見知りをする臆病な自分を隠すため、いつからか客と会う前は、酒と興奮剤を流し込むように飲むのが悪癖になってしまったと教えてくれた。クラウドの容姿であれば、黙っていることで被る減点は少ないはずだが、旦那を繋ぎ止めるために払っている犠牲の大きさを知って、セフィロスは苦笑した。そんなことに真面目になって、弱い身体を追い込み痛めつけて、一体何になると言うのか。
 少女の用意したワインはすぐに空いてしまい、セフィロスはベッドに寝そべるクラウドの隣へ横になった。胸に抱く青年は、病のために体温が高く温かい。クラウドはセフィロスへ顔を寄せて、長い銀髪のつるつるした感触を確かめるように撫でている。呼吸音は正常で、咳の予兆の喘鳴も聞こえない。
「あんたは」
 そうしてじっと黙ってお互いの存在を身体へ刻みつけていると、不意にクラウドが口を開いた。
「女の格好はあまり好きそうじゃないと思ったけど、違う?」
 昨日この家に来たときの衝撃を思い返して、セフィロスは少し考えてみた。
「どんな服装でいようと構わないが、俺以外のために着飾るのは面白くない」
「そう。俺は着せ替え人形するのも仕事だから。あの格好は、俺の旦那のうちの一人が、亡くなった娘さんに俺が似てるって言うから、その人に会うときはああしてるんだ」
 昨晩は老人がクラウドを桟敷まで迎えに行っていたはずだ。旦那の好みによって装いを変えるというのも、彼の生真面目な性格が伝わってくるようでおかしかった。きっと男娼をしていなくたって、人並みかそれ以上の成功は収めたはずだ。ただ、魔晄に弱い身体でミッドガルへ来たことが間違いだった。
「お前は真面目だが、少し頭が固いな」
 金色の頭を片手で持ち上げ、クラウドの頬へキスを落としながらそう言うと、唇を尖らせたクラウドから抗議の声が上がる。
「あんたに言われたくない」
「さっき、同じようなことを言われたばかりだ」
 どちらからともなく自然と唇が重なる。始めのうちは何度も角度を変えながら浅く、そのうち、柔らかな唇をセフィロスの舌が撫でると、クラウドはその舌を口を開いて受け入れた。発熱のせいか、口内まで燃えるように熱い。
「ん、ぅ……ん、あんた、男としたことある?」
 深度を増して激しくなっていくキスの途中、クラウドは息継ぎのついでに聞いてきた。瞳に溜まった涙がうるうると室内の灯りを反射して、深海の宇宙に浮かぶ星のようだと思った。
「いや、残念ながらない。どうすればいいか、ご教示願おうか」
 からかう口調で唇を擦り合わせながら応えると、クラウドは視線を外して何かを思案する表情をした。
「天下の神羅の英雄に俺が挿れるって、想像できない……
 独り言のように呟き、しっかり想像はしてしまったのか、『無理むり』と首を振る姿がかわいくて、セフィロスは笑いながらもう一度キスをした。
「ではお言葉に甘えて、隅々までお前を暴いて俺のものにさせてもらおう」

 思っていた通り、クラウドの肢体にはしっかりとした筋肉が備わっていて、生まれ持った身体能力の高さを窺わせた。関節はやや可動域が狭く固いものの、それは動かし方を身に着けていないせいで、訓練すればいい軍人にもなれるだろう。
 ワインの香りを残したキスを何度も繰り返し、没頭しかける思考の中、一枚ずつ服を剥いでいく。どこを触ってもするすると滑らかな皮膚は、彼の職業からして、肌の手入れまで毎日欠かさないのだろうと予想できた。心の中に、ぽつりと小さな嫉妬の火が灯る。
 指先や手のひらよりも繊細な触覚をしている唇を使って、クラウドの体中を探っていく。五感を全開にし、一つ残さず全てを記憶しておきたかった。移り気な恋人が、突然消えてしまうのではないかという不安が過ぎり、そんなことを恐れていることが信じられなかった。
 薄っすらと頬が興奮で上気しだした頃、クラウドは部屋の灯りを落とした。昨日彼を追いかけてここへ足を踏み入れてから、まだ二十四時間も経っていない。ベッドサイドのライトだけを残して暗くなった部屋の中、服を脱いで顕になったクラウドの素肌だけが、浮かび上がるように白かった。後ろ暗い仕事をしている割にどこか処女めいて見えるのは、この美しい肌のせいかも知れない。
 新雪のような肌へ己の存在を示したくて、わざと強く吸い付くと、クラウドは切ない喘ぎを微かに上げた。腕が粟立ち、このあと飛び込んでいく大きな波に怯えているようにも見える。髪を撫でて宥め、頬へキスすると、やや顔を顰めて脚まで使って全身でしがみついてきた。その動作があらかじめ誂えられた予定通りのものに感じられて、セフィロスの嫉妬の炎はにわかに勢いを増した。
 彼の表面しか愛さない旦那連中と自分とは違うということを証明してやりたい。身体の内側を流れる血液も、彼を生かしている臓腑すら、クラウドをクラウドたらしめる一切を全て手中に収めたかった。どうすればセフィロスなしでは生きられないと思わせることができるのかという考えに行き当たり、自身の不遜な思考に辟易しつつも、膨れ上がる支配欲に翻弄される。
 クラウドからは、人の理性を壊す魔性の芳香が放たれているように思えた。彼に近づく者はみな、この香りに魅了され、独占したいと思わずにはいられない。何をすればセフィロスの存在をもっとクラウドの中へ鮮明に刻印できるのか、全くわからなかった。
 これまでの人生でほとんど稼働することのなかった執着が、突如として猛威を奮い始める。唾液で濡れた唇が光を受けてぬらりと光り、クラウドが微笑んでいることに気が付いた。
「何かおかしいのか」
「ん、いや……俺、こんなことになるなんて思ってなかったんだ。別に嫌とか、したくないわけじゃない。あんたと――セフィロスとさ、こんな風に……
 緩やかに上下する胸は、変わらず正常な呼吸を続けている。それを見て安堵しながらも、今すぐ喉元へ噛みついて蹂躙し、骨まで彼を味わいたいという欲求を止めるのが難しくなってくる。時々見せる諦めたような表情がそうさせるのか、こちらの熱意に対して冷めているようにも感じるせいで、腕の中へ閉じ込めているはずのクラウドがまだ遠くにいる気がして、堪らない気分になった。

 クラウド・ストライフという男は、どこを見ても芯から美しく、その肢体は体内を冒していく毒のようにすら感じた。感度が高くしっとり吸い付くような肌。薄明かりの中でも眩いほどの淡い金色の髪。充血した粘膜は鮮やかに赤く染まり、高熱のせいで息が上がりやすく、そのくせ末端は氷のように冷えている。
 汗をかき、濡れて額や頬へ貼り付いた髪を何度も指先で払い除け、クラウドは常にどの角度から見ても完璧であろうとした。セフィロスの脚の間へ跪き、猛った性器を口へ含んでいる間すら、輪郭のラインが崩れているというのに艶めかしい。上等なシーツを手のひらへ掴み、彼から施される口淫の巧みさにまた嫉妬が膨れていくのを感じながらも、セフィロスは全く別のことを考えていた。この男は恐らく、こうした行為を、心から楽しんでなどいない。
「う、ん……あたまがおかしくなりそう」
 だから、うわ言のようにこうつぶやくことも、きっと信頼してはいけない。枕を掻き抱き、小さな尻を向けて震えて悶える様子に、喉で押し殺した官能的な喘ぎに、時々こちらを確認するように振り返って海を閉じ込めた深い青の瞳で見つめてくることに、いちいち感動などしてはいけない。そうわかっていても、歓喜と冷笑を去来する心を止めることができなかった。
「ン――あ、ァ……うん、いいよ。動いて」
 男と初めてするなら後背位がいいと勧められて、彼が普段どうやって生計を立てているのかを眼前に突きつけられた。今己が抱いているのが、清廉な女などではないことはわかっていたはずなのに、見え隠れする旦那の影に一々神経を逆撫でられている。苦しいくらい狭いクラウドの肉壁の中で緊張を保ちつつも、あろうことか自身が傷ついていることを感じ、セフィロスはそんな思念を断つように首を振った。
 この男の過去を変えられないのならば、未来を全て手にすればいい。
 とても明るい動機とは言えないが、言われた通り動くのを開始したとき、身体を満たす嫉妬心も、クラウドへの執着も、全てが散ってどうでもよくなった。
「あっ、あ……う、ん……あぁっ」
 発熱によって体温の高いクラウドは、苦痛と快感の狭間で汗ばんだ白い胸を大きく動かして衝撃に耐えている。こんなに時間をかけて情交に及ぶことは初めてだったセフィロスは、とにかく彼の負担を少しでも軽減してやりたくて、緩い出入りを繰り返す。しかし、その度にぎゅうぎゅうと締め上げる媚肉の収縮に、全てを奪い取られそうな気がして口許を引き締めた。

 慈しむように撫でて、口付けて、相手の反応を見ながら進めていく性交は、想像以上に忍耐力を要することを知った。クラウドが苦しむことはしてやりたくない。その一方で、ばらばらに壊してしまいたい。心中を吹き荒れる葛藤の嵐に、セフィロスは身を焦がされるような気がした。もっと深く、もっと奥まで、この男が己のものであることを理解させ尽くしたい。そう思うのに、無理をさせてまたあの恐ろしい咳が出たら、今度こそクラウドは死んでしまうのではないかと不安になる。セフィロスの縦に裂けた瞳孔が、きゅっと縮んで細くなった。
「うぅ、ン……あ、はぁっ……
 切なく媚びる声が静かな寝室へ響いて、清潔に整えられた寝具はお互いの汗や体液、クラウドが事もなげに取り出してきた潤滑剤で乱れて汚れてしまった。
 交接の直前、クラウドがセフィロスの指を胎内へ埋めながら教えてきた箇所を探り、狙いをつけて角度を変えて突いてやると、一際高い嬌声が上がる。
「あ! っん、待って……あ、あ」
 クラウドの背筋の浮かんだ背中が痙攣を起こし、首を捻ってセフィロスを見上げる。枕に預けた金髪が潰れて擦れ、ざりと小さな音を立てた。信じられない、とでも言いたげな驚愕の色を浮かべた瞳が瞬いて、瞼から零れ落ちそうになっている。
「はっ、ア、やばい……だめ、それ……ん、あっ」
 だめだと言うのとは反対に、繰り返される甘い声はとてもだめそうには思えない。クラウドを男娼からただの男に戻す箇所を見つけたセフィロスは、そこを掠めるように徐々に動く速度を早めていった。
「い、あ……あっ、いぃ、きもち、い……
 煽るような言葉を吐きながら、力なく首を振る。白い背中がセフィロスの動きに呼応するように大きく跳ねて、身体を支えていられないのか、クラウドは腕を伸ばしベッドへ身を預けた。それ以上逃げないように身体を重ねて抑えつけると、挿入の角度が変わり、クラウドから漏れる声はほとんど泣き声に近くなった。
「う、ぁ……! あん、だめ……あぁっ、無理――
 分厚いセフィロスの身体に潰される形でのしかかられて、クラウドは爪先まで脚を伸ばしてなおも首を振った。暴れるうなじにキスをして舌を這わせると、湿った汗の味がする。その刺激にも反応して、性器を深く埋めているクラウドの肉壁がさらに奥へと誘うように蠢いた。強い締付けに眉を顰めて、セフィロスは小さく息を吐いた。
「あぁ……ん、もう、イく……あッ、イ、く……せふぃ」
 名前を呼ぼうとした声が途切れて、ぴたりと静かになる。次の瞬間、がくがくと全身を痙攣させた。
――――……あ、あ」
 絶頂の快感に声も出ないのか、枕へ埋めた金色の髪の隙間から、横顔の唇がぶるぶる震えるのが見えた。強張っている肩へキスをして、セフィロスも自身の欲求の解放へ向けて、より深く腰を打ち付けた。
「あ! あ……ひっ……ん、んんッ……
 余韻の中でさらに強く早まった律動に悶えるように手足をばたつかせ、クラウドはぐずついてだらしない声を上げるだけだった。
……出すぞ」
 切羽詰まったセフィロスの抑えた低い声が届いたと見えると、根元まで打ち付けてから一息に抜いて、放出の感覚に下唇を噛む。クラウドの背中へ放った精液が、浮き上がった肩甲骨の辺りまで勢いよく飛び散った。

 射精後の倦怠感を肩で息をしてやり過ごしているうちに、すっかり大人しくなってしまったクラウドの身体を改めて検分する。鍛えているとは言え元が華奢な造りなのか、尻も腰も心許ないほど細く小さかった。ここによく男の性器を収めるものだと妙な感心を覚えながら、セフィロスは鏡台に置かれたティッシュボックスへ手を伸ばし、クラウドを汚した体液を拭き取ってやった。
……る」
 胸を引き裂くような喘鳴は起こっていない。ただ乱れた呼吸を整えようと深呼吸をしたクラウドが、小さく何かをつぶやいたのが聞こえた。
「どうした?」
 ふと、途中から体重をかけたことが心配になり、セフィロスは彼の腰へ手を触れて優しく問いかけた。
「こんなの、嘘だ……良すぎる」
 悔しそうな口ぶりでそう言うと、クラウドは眉を顰めてセフィロスを見た。
「それは、褒め言葉と受け取っていいのか」
「まあ、そうかもな。ああ――最悪。商売上がったりだ」
 寝返りを打って仰向けになり、クラウドは自らの腕で顔を覆い隠した。彼が隠したがっている僅かな照れをその仕草から嗅ぎ取って、セフィロスは自然と顔へ笑みが浮かぶのを感じた。一体どうすればクラウドの唯一になれるのかと悩んでいたが、その悩みは杞憂で終わったらしい。人には相性があると言うが、クラウドがセフィロスをくれたのなら、これ以上にない光栄だと思えた。

 しばらく二人で言葉も交わさずまどろんでいると、そのうち窓の外が明るくなりはじめ、朝日が差し込む頃クラウドは掠れた声で言った。
「追い出すみたいで悪いんだけどさ、旦那の一人が毎日様子を見に来るんだ。来ても寝てるって言うけど、多分、起きるまで待つって言って聞かないから」
 その言い方から、今クラウドを保護しているという老人が来るのだろうとぴんときた。汗をかいたままベッドでごろ寝をしていたため、普段よりも素直になった金髪を撫でて、名残を惜しむようにキスをした。
「わかった。そのうち、お前を俺だけのものにするが、今日はこのまま帰ろう。次はいつ身体が空く?」
「あの、うちの鍵をあげるから……次は、携帯に連絡する」
「いいのか」
「今まで誰にも渡したことないから、なくすなよ」
 唇を突き出して不貞腐れた顔で強がってそう言うと、クラウドはベッドへ上半身を起こしているセフィロスを腕を広げて抱きしめた。
「でも、鍵なんていつでも変えられるけど」
 恥ずかしくなったのかそう付け足すと、ちゅっと音を立ててセフィロスの裸の肩へ口づける。
「俺のために変えないでいてくれるだろう?」
……うん」
 服を着たあとも別れの時を忘れたように抱き合っていると、いよいよ老人が来そうだからとクラウドがそわそわしはじめて、ようやくセフィロスはクラウドの家を後にした。

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