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奏
2024-09-14 15:03:20
99456文字
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セフィクラ
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【SC】(R18)非情なる夜明け revised edition
セフィクラ
高級男娼クと、英雄セのはなし(椿姫パロ)
二次創作を開始する前、習作として作文した椿姫パロの改訂版です。
原作では死別オチですが、ハッピーエンド。
◆24年11月に開催されるオンラインイベントに合わせて、オフ本を少部数発行予定です。
BOOTH頒布ページ:
https://120520aqua.booth.pm/items/6108399
pixiv版:
https://www.pixiv.net/novel/series/12355229
はげましのおたより💌
https://forms.gle/ovNkYwMhkS9WhdMg8
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とある都市で起こった魔晄炉建設を反対する者たちとの小競り合いが激化し、武装を始めた住人たちの制圧、並びに周辺で急増したという大型モンスターの掃討。それが遠征任務で課せられた内容だった。星命学を信じる人々は、モンスターの増加についても星による抵抗や怒りの発露だと信じて神羅のやり方を批判する。その感応の高さには驚かされるものの、彼らに取ってはそれが真実であり正義であるから、衝突は避けられない。
モンスター討伐はまだしも、敵が『人』であるとき、兵士の精神の摩耗は大きな負担となる。セフィロスは相手が何であれ大きく動じることはほとんどないが、部下たちは違う。遠征の日数が進むにつれ疲弊し、士気が低下していくのを肌で感じていた。
戦闘はなるべく市街地から離れた場所で、一般人を傷つけないように鎮圧する任務は骨が折れる。高位魔法を一つ放ってしまえば簡単に終わるとわかっているものの、人的被害は最小限に抑えよというのが
慈
・
悲
・
深
・
い
・
神羅側からのオーダーだった。もちろん負傷者は少なく済ませたいところだが、そのために作戦は長引き、殺人に慣れていき瞳の輝きを失っていく部下たちを
――
特に今回が初遠征となる若い新兵を
――
見ているのは、戦場に慣れたセフィロスであっても堪えるものがある。
武装組織の制圧と同時にややこしい特性を持ったモンスターの討伐を同時にこなしていく日々は、さすがのセフィロスにも疲労を感じさせた。いつもセフィロスへ無茶を押し付ける上層部への不満がぐるぐると渦巻いていたが、戦場にセフィロスがいるということが兵士たちを鼓舞しているというのもまた事実だった。神羅の象徴となり、常に強く聡い人でなければならない。セフィロスがいる限り、神羅が負けることはない。
時折、ひどく疲れ果てることがある。どんな形であれ注目されることは苦手なままだった。いつかこんな生活から抜け出して、誰も自分のことを知らない場所で静かに暮らしてみたいと夢想する。それが叶う日が来ないということもまた、嫌というほどわかっていた。
いつ終わるとも知れない任務の中、警戒を緩めることなく、深夜に睡眠には至らない休息を取るために目を閉じるセフィロスの瞼には、ミッドガルでの日常が浮かんでいた。照明に照らされたきらびやかな劇場。衣擦れと高揚した人々の囁き声。桟敷席の柔らかな手触りの椅子。連れ立って歩くソルジャー仲間。そして、目を奪われる金髪と、深海のようなブルーの瞳。
帰還命令が出たのは、ミッドガルを発ってから二ヶ月が過ぎようとした頃だった。セフィロスは久しぶりに魔晄都市へ降り立ち、市民たちは遠征の成功と英雄の帰還を歓迎し、市内は祝賀ムードに包まれていた。おかえりなさいと口々に言われ、戦場では引き結んでばかりいた口の端を無理につり上げて、不器用な微笑で声援に応える。大型の任務のあとにはお決まりの、複数のパーティーや式典への参加、さらに広報から任されるであろう仕事の量を思って、いよいよ英雄はうんざりした気分になった。
息をつく間もなくあちこちへ礼装で駆り出され、いい加減役員へ苦言を呈してやろうかと思い始めた頃、突然遠征任務へ参加した兵士たちへ数日間の休暇が与えられることになった。ずっと働き詰めだったのだから当然だとは思うものの、神羅という組織の中でソルジャーでいるからには、人らしく扱われることを期待してはいけない。むしろ、帰還後一月も経っていないというのに休暇の許可が出るのは、何か疚しい意図でもあるのではないかと疑わしい気さえした。
前触れもなく降って湧いたこの休暇をどうしようかと考えてみるものの、何も思い浮かばなかった。正しい振る舞いを求められるセフィロスには、趣味や嗜好というものがない。周囲の者たちは口々に旅行や帰省を相談し合っているが、セフィロスには行きたい場所もない。任務以外でミッドガルの外へ出たこともなかった。どうせ戻って来なくてはならないのだから、どこへ行っても、行かなくても同じような気がした。そのため、ローテーションで取得する休暇の予定は、他の者と被らないよう一番後回しで構わないと願い出た。
数ヶ月があっという間に過ぎていき、忙しい日々の中ほとんど忘れかけていた休暇が何の予定もないまま始まった。寝るためだけの場所になっている自宅で、誰とも会わない時間を過ごす。このまま無為に数日間を流れるように生きるのも悪くはないが、ふと遠征以前は劇場に通っていたことを思い出した。何もしないよりは良いだろうと深く考えずに、コンシェルジュサービスへ連絡を入れ、当日取れる桟敷席を手配するよう指示を出した。
久々に足を踏み入れた劇場には、懐かしさすらあった。入場を待つ間、人々は遠巻きにセフィロスを眺め、届かない囁きを交わし合っていた。セフィロスの名前、先の遠征の成功、英雄と部隊の無事の帰還
――
称賛ではあるものの、直接その言葉を向けられることはない。それを望んでいないというのに、どこへ行っても視線を集めてしまうことに、ぴりぴりと全身の神経が張り詰め落ち着かなかった。家を出てきたのは失敗だったかと考えていると開演の時間が近づいて、抑えていた桟敷席へ入ったとき、目についたのは眩い金髪だった。
一瞬時が止まり、次いで胸の中に温かい何かが溢れた。細胞の一つひとつが喜びで満ちていくような、これまで感じたことのない気分だった。クラウド・ストライフがそこにいる。存在している。劇場に現れたということは、遠征でミッドガルを離れている間に身体が良くなったのだろうか。セフィロスは、日々贈り続けた黄色い花を思い出した。
クラウドはオペラグラス越しにこちらを見ていた。目が合ったような気がすると、クラウドは口許へ微笑を浮かべて、曖昧に会釈をした。まるで、見覚えはあるけれど知人だと確信の持てない相手を見つけたときにする、挨拶をしたともしてないとも言えるような頷き方だった。
うっかりすると見逃してしまいそうなその小さな会釈に、セフィロスは反応できなかった。初対面の時の記憶が蘇る。あの醜態を、彼はもう忘れてしまっているのではないか。そんな考えが過ぎったが、前回の失敗を繰り返す判断は下さなかった。こちらも微笑で返し、僅かな目礼を送る。クラウドは薄い唇を開いて驚いたような顔をしたが、その表情は瞬時に消えてしまった。
セフィロスから視線を外すと、今度はもっと下の階の席にいる誰かを手招いているように見えた。視線の先を追うと、桟敷席によく知った顔を見出した。毎日花を買い求めに立ち寄った花屋の女主人だった。名前を確か、エアリスといった。彼女がクラウドに気づき、応じるようにクラウドへ手を振り返す。思わぬところでクラウドと関わりを持てた気がして、にわかに自信が湧いてくるのを感じた。
彼女を介してクラウドと話ができないだろうか。開演を迎えて舞台の幕が上がる中、セフィロスの思考はそのことにかかりきりになった。そして、脳内では様々に反対意見が浮かんでは消えていったが、幕間になった頃、結局衝動のままエアリスの桟敷席へ向かうことにした。
「セフィロス? あんた、本当に舞台観に来てるんだ」
エアリスの桟敷を訪ねると、そこには見慣れた同僚の顔があった。ザックス・フェアはセフィロスと同じ神羅のソルジャーで、少し前に昇進しクラス1stになったばかりだった。歳下ではあるが、それを忘れさせる人懐っこさと屈託のなさがあり、誰に対しても平等に気安いところを密かにセフィロスは気に入っていた。
「そういや、ジェネシスも前に一緒に来たって自慢してたもんなあ。ちょっと意外だけど」
底抜けに明るい声でそう言って、やや大きめの口を開けて豪快に笑う。普段のセフィロスの淡々とした仕事ぶりを見ているからか、芝居を観に劇場へ通うセフィロスというのは想像しづらいのか、世間を賑わせた観劇趣味のニュースを疑っていたらしい。セフィロスのほうでも、ザックスはとても長い時間同じところでじっとしていられるようには思えなかったので、劇場で顔を合せるとは思ってもみなかった。きっと隣にいる花屋の女主人が、彼が今熱を上げているガールフレンドなのだろうと推測した。
「ザックス、静かに。他の人の、迷惑でしょ。セフィロス、久しぶり。遠征お疲れさま。元気そうで、良かった」
「ああ。
う
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ち
・
の
・
が迷惑をかけていないか」
茶色の巻き毛を揺らしてエアリスが挨拶をすると、ザックスは途端に慌てて二人をきょろきょろと交互に見遣った。
「エアリスと知り合いだったの?」
「しばらく私のお店に通ってくれてたんだよ。ね?」
「
――
セフィロスが花屋に? その話、すっげー興味あるんだけど」
桟敷席へ歓談の空気が流れる間にも、エアリスの視線はちらちらとクラウドのいる方を気にしていた。あれからも、合図を送り合っているようだった。首を振ったり、手でサインを作ったり、それだけで意思疎通ができる間柄であるのは間違いない。ザックスの関心へは微笑を返答とすることにして、セフィロスはここに来た目的を果たそうとした。
「他に誰か知人が来ているのか」
調子が変わらないよう気をつけながら、視線を行き来させているエアリスへ静かなトーンで話しかける。エアリスは客席のほうへ意識を向けつつ答えた。
「うん。向こう側の席にいる。クラウド・ストライフっていうんだけど
……
」
エアリスはそのあと、クラウドとは家が隣同士であり、かなり古い友人であると話した。セフィロスは緩みそうになる頬をぐっと堪えて、表情を保ってそれを聞いた。
「俺も知ってるよ、クラウド。あいつ綺麗な顔してんのにわがままだしすぐ怒るけど、めっちゃいいやつ」
わがままで短気なのはいいやつとは言えないのではないかと思いながら、口を挟んだザックスが『クラウド』と名前を呼ぶときに漂った親密さから、彼もまたクラウドと仲が良いのだと察して、徐々にクラウドへ近付いていることにセフィロスはかなり気分が良くなった。
「会ったこと、あるの?」
エアリスの問いに、セフィロスは首を振る。
「いや。俺が一方的に知っているだけだ。
有
・
名
・
人
・
だからな。何度か劇場ですれ違ったことがある。相当な美人らしいから、是非知り合いになりたいものだ」
ミッドガルで一番名前を知られているという自負のあるセフィロスが、たかが男娼を『有名人』だと言うのがおかしかったのか、エアリスは戸惑ったように微笑んだ。
冗談の色を多分に込めて言ったつもりだったが、横で聞いていたザックスは目を丸くした。そもそも、セフィロスから他人へ興味を持つことが珍しい。何か裏があるのでは、とでも言いたそうなその顔色の変化を、セフィロスは敢えて無視をした。
「それなら、ここに呼ぶ?」
ソルジャー二人の間に流れた不穏な雰囲気を知らずに、エアリスは無邪気にそう言った。その言葉はまさに天啓だった。風変わりな話し方をするただの女だと思っていた花屋の店主が、途端に福音を告げる神の遣いか何かに思えてくる。しかし、何の迷いもなく純粋な親切心から申し出た彼女へ、セフィロスはぐっと自制心を働かせ、目を伏せて苦笑して見せた。
「いや、それよりもお前からあれに紹介を受けたい」
「
……
うちに来て会いたいってこと? それは、うーん。ちょっと難しい、かも」
「あら、なんでよ」
考え込むエアリスに、ザックスがのんびりと声をかける。彼の天真爛漫さには困らされることも多いが、このときばかりはあとで褒めてやろうと思った。
「だって、クラウド、今すっごくやきもちやきのお爺さんに、保護されてるから」
「保護とは。おもしろい」
「生活の面倒とか全部見てくれてる人なの。その人のために今までの旦那さんともみんな別れちゃって。だから友達としてなら、まあ、いいけど
――
」
その先を濁して言い淀むエアリスに、今度は心から苦笑が漏れた。
「お前は俺を、一体なんだと思っているんだ」
「だって、クラウドの顔のこと言うから! じゃ、次の幕が終わったら、私たち帰るから、ザックスと一緒に、うちまでボディガード、してくれる?」
もちろん、と元気よく返事をするザックスに救われた気分になりながら、セフィロスもその提案に乗じることにした。
少しずつだが確実にクラウドとの距離が縮まっていっている。そう実感し、自らの桟敷へ戻ったあとも、セフィロスはクラウドのいるほうばかりを向いていた。クラウドはオペラグラスを外し、怜悧な表情で舞台を眺めている。今日は黒く艷やかな毛皮の外套に身体をすっぽりと包まれていて、着ている衣装はわからなかった。
いよいよクラウドと再度対峙する機会が得られたのだと思うと、いきなり姿が見えなくなった期間にも何か意味があるように感じられた。そして、その間も意識下へひっそりと居座り続けたクラウドという存在に、改めて興味が湧いてくる。前回の対面時のことが思い返されて、一体今度はどのように接触するべきかと考えていると、第二幕は呆気なく終わり幕が降りた。芝居には何の未練もなかったため、急いで席を立つと、セフィロスはエアリスとザックスの桟敷へ向かって一目散に歩き出した。
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