2024-09-14 15:03:20
99456文字
Public セフィクラ
 

【SC】(R18)非情なる夜明け revised edition

セフィクラ
高級男娼クと、英雄セのはなし(椿姫パロ)

二次創作を開始する前、習作として作文した椿姫パロの改訂版です。
原作では死別オチですが、ハッピーエンド。

◆24年11月に開催されるオンラインイベントに合わせて、オフ本を少部数発行予定です。
BOOTH頒布ページ: https://120520aqua.booth.pm/items/6108399

pixiv版: https://www.pixiv.net/novel/series/12355229

はげましのおたより💌 https://forms.gle/ovNkYwMhkS9WhdMg8



 その晩、セフィロスはいつになく荒れていた。市街地近くに現れたモンスターを掃討する任務へ同行した一般兵たちは、セフィロスから発せられる苛立ちをまざまざと感じ取り、完全に萎縮してしまっていた。周囲の兵士たちが縮み上がっていることに気付いていながら無視をして、セフィロスは愛刀を振り回し、割れた地面が崩れるのも厭わず次々に高位の魔法を発動し続けた。鬼神のようなその働きぶりに巻き添えを食わないよう、兵士たちはモンスターではなくセフィロスから逃げ回っているという有り様だった。
 掃討作戦から部隊が帰還したあと、パニック映画の台本のような報告書を受け取ったジェネシスは、ザックスを呼び出して秘密の会議を持った。この一ヶ月、勤務時間厳守の姿勢は頑固として貫いていたものの、セフィロスはクラウドという恋人を手に入れ安定した仕事ぶりを見せていた。そんな彼がさらに様子をおかしくしているという噂は、すでに社内でも耳目を集める話題となっている。
「クラウドと喧嘩でもしたのかな? あいつ、かわいい顔して気が強いからなあ。エアリスに聞いてみようか」
「さすがに俺たちでも、プライベートへ勝手に立ち入るのはよくない。かと言って、セフィロスも素直ではないから、相談してくることもなさそうだな。なんとか上手く聞き出す方法はないか……
 二人のソルジャーはお互い何か情報がないかと探り合ったが、ただでさえ目立つ二人が大きく動くわけにもいかず、大きなため息をついて、行方を見守る他ないという頼りない結論を出すことしかできなかった。願わくば、我らが美しい英雄がこの星を壊してしまう前に事態が収束して欲しいと思うが、クラウドとセフィロスに限って、他人の思惑に従って行動することは期待できないだろう。
 すっきりしない気分を抱えながらも二人は別れ、ジェネシスは友人の無茶と横暴を少しでも控えめにできないかと、報告書の修正に取り掛かることにした。

 勤務中にクラウドからの別れのメッセージを確認したあと、セフィロスはすぐに電話をかけた。一体何が起こったのか。最近のクラウドの様子が気がかりではあったものの、まさか顔も見せずに出ていくとまでは予想していなかった。悪い冗談であってくれと祈りながら、携帯端末に耳をあてる。小さなスピーカーから流れてくるのは、耳馴染んだコール音ではなく、無機質な音声アナウンスだった。
『おかけになった電話番号への通話は、お繋ぎできません』
 端末を壊しかねない勢いで通話を終わらせ、そのあと予定されていた討伐任務にやり切れない気分を全てぶつけた。それでも尖った神経は抑えることができず、同行した兵士たちの点呼や被害確認から逃れて、そのまま自宅へ直帰した。
 玄関を抜けると家の中は静まり返っており、洗濯機は使ったあと服を干しもせず放置されていて、キッチンのシンクには朝飲んだコーヒーカップが二つ並んで残されていた。どうも、慌てて衝動的に出て行ったように見える。冷蔵庫の中へは、昼食を食べ忘れることが多いと言うクラウドのために、セフィロスが彼のお気に入りの店で購入した焼き菓子が開封もされずにしまわれていた。
 何かがあったらしいのは明らかだった。クラウドの性格からして、こんなに様々なことをやり残したまま、ただ出ていくとは考えにくい。意図して計画的に出て行ったのならば、荷物の処分も家事も全て済ませて、痕跡を一切残さず文字通り消えていくだろう。
 しかし、ここは英雄セフィロスの自宅である。無理に押し入られて拉致されたのであれば、最新鋭のセキュリティサービスが侵入者を何より先にセフィロスへ通知するはずで、家の中にも争った形跡は見られない。ということは、突然生じた何らかの理由によってクラウドは自らの意思で外出し、そのときにはここへ帰ってくるつもりでいたが、出かけた先で心変わりしたということだろうか。電話が不通のためメッセージも数通送ってみたが、これも届いているのかは定かではない。いつまで待っても、クラウドからの返信は届かなかった。
 クラウドが行く場所といえば、あとは彼の家かエアリスの元しか考えられない。翌日、一日経って少々冷静になったところで、会いに行って知らない男と一緒にいる姿を見てしまったら、平静を保てるか自信が持てなくなってきた。見知らぬ旦那を連れているばかりか、冷たく拒絶されでもしたら、一体自分はどんな反応をしてしまうだろうか。自身のクラウドに対する執着が並ではない自覚はある。ほんの一瞬だけ、手に入らないのならいっそこの手にかけてしまおうかという考えが湧いて、どれほどクラウドに依存していたかを思い知り、背筋に冷たいものが走った。
 だからと言って、このまま簡単に手放すつもりはなかった。公園のベンチで穏やかに笑うクラウドの様子を思い出す。もうあの冷たい指先や温かな頬、しなやかな身体へ触れることができなくなるなんて、考えたくもない。放埒な生活を恋しがり戻ったところで、治療を続けなければきっと瞬く間に彼は死んでしまう。それだけは、なんとしても避けなければならなかった。
 迷ったあと、まずはクラウドの家から訪ねようと玄関へ向かいかけたとき、携帯端末が鳴った。飛びつくように画面を確かめると、秘匿回線から非通知での着信だった。違う。クラウドではない。ブーツを履く手を止めずに、通話を開始する。
「俺だ」
『おお、旦那。出てくれて助かったぞ、と』
 軽薄な声が聞こえ、少し気分が落ち着くのを感じた。タークスレノから連絡があったということは、依頼していたクラウドの身辺調査で新情報があるということだ。
『ドンが大金はたいてを身請けしたって話――ありゃ大嘘だ。すでに閉業してたから裏取りに手間取ったが、元々コルネオと協力関係にあった店で働いてた姫を単に辞めさせて、富豪連中に直接高額で貸し出してただけだ。金の流れも追ったけど、五百万どころか、一ギルも店に支払っちゃいない。ったく、とんでもねえ悪党だな……まあ、ここまではあんたの予想通りってところか』
「そうか」
 彼の言う通り、そこまではセフィロスの想定内だった。狡猾なコルネオはクラウドに五百万という身請け金を信じ込ませ、逃げられないよう囲い込んでいるだけだということは想像に難くない。悪質な違法営業の店からまるで救い出されたように思っているクラウドを、高級男娼として手元で飼いならし売り出すのは、さぞ愉快でいい気分になっただろう。
『ここから先が、新情報。姫は昨日、コルネオと会ったあと自分の家へ戻って、ついさっき爺さんの愛人と復縁してるぞ、と。ついでにまたサービスで教えておくけど、科学部門の検査結果によると、身体のほうは思っているより重症だそうだ。次に大きな発作が起こると、命に関わるかも知れないってよ。根治に向けてさっさと治療を進めたいと研究員たちがボヤいてたが、肝心の姫がいないんじゃ――なあ?』
 持てる気遣いは全て使ったとでも言うように、レノは言葉を濁して電話越しに苦笑した。へらへらと明るい口調で話してはいるものの、セフィロスが今どんな気分でいるかを想像し、配慮するつもりはあるらしい。
「手間をかけたな」
『業務外の仕事は特別料金だ。足がつくから、現金で頼むぞ、と』
 じゃあな、と軽い挨拶の言葉を残して、秘匿回線の通話は切断された。履き終わったブーツに包まれた踵を大きく蹴り出して、セフィロスは玄関の扉を開き力強い歩調でマンションの廊下へ出た。

 翌朝、神羅本社内は早い時間から騒然と殺気立っていた。報道規制が敷かれ公のニュースにはなっていないが、昨晩のうちにプレート下のウォールマーケットにあるコルネオの根城が壊滅したというのだ。社内では組織間抗争を原因としているという見方が強かったが、スラム一帯の顔役であるコルネオを狙って、大胆な犯行を完遂できる組織に検討はついていない。市民の混乱を避けるためにも、公式の会見で出される以外の情報については、社員全員へ厳しく箝口令が発せられた。
 治安維持部門から捜査部隊が組まれ、ソルジャーもかなりの数が駆り出された。理由はどうあれ、武装した者が市内を歩いているのを野放しにはしておけない。部隊の指揮役として選出されたザックスは、特に被害の大きいコルネオの自室へ状況の検分に訪れていた。悪趣味な調度品に飾られた内装と、怪しげな照明に照らされ撮影機材に囲まれた大型のベッドに閉口しながら、あちこちに血飛沫の飛び散った凄惨な現場を見て回る。
 いち早く現場へ駆けつけていた兵士の報告によると、建物からは違法に飼育された大型のモンスターやら、人身売買を裏付ける監禁された男女、モンスターの餌食になったのか無惨に転がる人骨の山、帳簿にない多額の現金や宝飾品の詰まった金庫、様々な禁止薬物など、犯罪の証拠が多数発見され続けているらしい。
 口頭による報告を聞き流しながらも、ザックスは壁や床や家具に刀傷を見出して、これはとんでもないことになったと内心穏やかでいられなかった。現在は報道規制があるため大々的にニュースで取り上げられることはないだろうが、エアリスから伝え聞いていたクラウドの過去と、セフィロスとクラウドの関係を考えると、今後どうこの事件が展開していってしまうかを思い悩んだ。死傷者多数。恐らく、死者のほうが多いだろう。
 しかし、犯人は冷酷無比なだけでなく冷静でクレバーでもあるようで、目的を遂げるにあたって証拠を残してはいなかった。現場でかろうじて生き残り、意識のある者へ何があったのか聞き取りをしても、『気がついたら全員死んでいた。どうか助けてくれ』と半狂乱で怯えるばかりで、何の要領も得なかった。混乱や睡眠の魔法を建物内の全員へかけた上での犯行だろうと推測し、そんな神業を軽々とやってのける人物に、ザックスは一人しか心当たりがなかった。

「どうすんだよ、これ……
 重い足取りで本社へ戻り、各部隊の報告書へ目を通し、さらにそれをまとめて上へ提出する文書を作成する作業をしながら、ザックスは嘆息した。元々別の任務へ出かける予定だったジェネシス、アンジールの二人も、突然起こった未曾有の大事件の対応のため、今日は本社でそれぞれの仕事にかかりきりになっている。
 頭を抱えてタブレット端末の前で白紙の文書データを眺めていると、悠然とセフィロスが部屋へ入ってきた。ぎこちない笑顔で挨拶をすると、いつも通りに短く返事をする。その表情には一欠片の動揺も焦りもなく、むしろ平常時よりも穏当であるようにすら見えた。
 一体どんな顔をして、早朝の緊急招集に応じて今まで仕事をしていたのか。セフィロスの様子をちらちらと視線で追いながら、聞いてはいけないと思いつつも気になって仕方ない。よく見ると、普段彼がしているグローブが取り外されていて、素手でコーヒーを持っていることに気がついた。
「なあ、セフィロス。グローブ、どうしたんだ?」
 好奇心が止められず、強張る笑顔で尋ねると、セフィロスは何でもないという顔で事もなげに応えた。
「ああ。昨日の夜をしていて、傷をつけてしまった。替えがなかったので、このまま出社した」
「へえ、そう……
 それ以上踏み込む気にはなれず、ザックスは何も知らない、気付いていない振りを決め込むことにした。下手に首を突っ込むと、うっかりこの星の危機にまで発展しかねない。ザックスが入社する以前から、セフィロスは偉大なソルジャーだった。そういう人は、やはり偉大なことを成し遂げると相場が決まっている。この場合、善悪の判断というのは、きっと外野が下すべきではない。彼が生きる彼の人生において、不要なゴミを始末する掃除を、彼の信念の元に決行しただけなのだ。
 年長組のクラス1stのソルジャーたちは、今回の事件についてあれこれと意見を交わし合っていたが、その中へ平然と混じるセフィロスを見て、ザックスは背中へ走る悪寒についても無視をすることに決めた。

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