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戌丸アット
2022-05-29 23:07:22
37730文字
Public
戦国basara
狐七化け、狸八化け
三家(戦国basara)
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しかし戦おうとする九尾と三朗を止めなければならないと考えた家康は、飛ばされる程の衝撃にもめげる事無く九尾に向けて声を張り上げる
「んなっ!?ま、待て!九尾!彼は深手を負っている!!!やめるんだ!!!」
「煩い!邪魔をするな!今ここでコイツを殺す!!!」
「
………
九尾、それでは駄目だと何故、分からない!やはりお前にセン殿の想いは完全には受け継がれてなどいない!」
「黙れ!貴様が私を語るな!あの方を語るな!貴様にあの方の何が分かる!あの方を殺した貴様にっ!」
「
…
え」
家康は九尾の言葉に戸惑いと驚愕の色を浮かべた
二人の会話から察するにセンと言う人物を九尾に襲われている男、三朗が殺めたという事になる
三朗も殺めた事に対して否定しない所から察するに事実である事を更に際立たせた
つまり九尾は殺された復讐の為に三朗を探していたのだ
この事実に家康は戸惑った
家康は三成に恨まれている自分と三朗は似た境遇だと感じたからだ
ましてや隣で二人を睨みつけている男、三成とは最近まで戦場で争っており、ほとぼりは冷めていない
更に和解の糸口すら見つからずに、こんな予想外の形で再会してしまって気まずくない筈がなかった
しかし三成は違った
今、この現状こそが三成には許せなかった
「きぃさぁまぁらぁぁあああ!!!此処で戦う事は許可しないぃ!!!」
「っな!うぅっ!」
「何っ!ぐはっぁ!」
三成は鞘に納めたままの刀で、素早く的確に九尾と三朗のもっとも深手を負っているところを狙って攻撃すると元々深手でギリギリであった二人は気絶した
その出来事に呆然と見ているしかなかった家康は三成を止める間もなかった
しかし三成のお陰で二人は気を失っている
これでひとまず戦いがまぬがれた事に家康は殺気で張りつめていた体の緊張をほぐす
すると不機嫌な三成に気にくわそうにされながらも声をかけられる
「おい!何をしている、家康!早く此奴らを捕らえるぞ!」
「え、あ、あぁ!
………
って捕らえる、のか?」
家康は三成の言葉に戸惑った
暴れはしたが仮にも二人は怪我人で重体である
捕らえると言って奮起している三成の気持ちも分からないでもないが、家康は三朗の血の滲んでいる包帯を見てしまっては気がひけた
しかし三成に容赦はなく、家康が戸惑っている間に部屋に備え付けられていた小箱から長い紐を一つ出すと、気絶している二人を背中合わせにするとグルグル巻きにして縛り付けていた
これには、どう三成を説得しようと考えを巡らせていた家康も慌てて声をあげる
「おいおいおいおい!三成!二人は怪我人なんだ!こんな事をしては治るものも治らない!」
「煩い!あれだけ暴れていたのだ!これくらいでくたばるものか!」
「そういう問題じゃない!せめて腕だけ縛るとかにしないと体に障る!」
「私に意見するな!それとも貴様も縛られたいか!」
「待て待て!落ち着けって!ワシはただ二人の体が心配で!」
「えぇえい!黙れ!貴様の意見など認可しない!」
三成のあまりのキレっぷりに、場違いにも何処か懐かしさを覚えながらも三成のあまりの仕打ちに家康もなんとか二人を少しでもマシな体勢にさせてやらねば!と言う使命感が芽生えていた
しかし部屋が危うく、ぶっ飛ばされそうになってブチキレてしまっている三成はいつの間にか持っていた紐で家康を黙らせようと、結び目を解こうとする家康の手首を握り潰さんばかりの力で掴む
その細身の部類の体格からは想像も出来ないほどの握力と三成のマジキレの目を見て、家康はいよいよ三成の本気さに慌てて抵抗するように腕を負けじと引こうとする
「み、三成!とりあえず紐を外すのは許してくれ!!!」
「そんな事は許可しない!!!大人しくしろ!家康ぅぅううう!!!」
「あ、あんたら何してんすか
…
?」
井戸水を汲んだ桶を抱えながら慌てて戻ってきた左近は何故、仕えている主が紐を持って宿敵に襲いかかっているのか
何故に廊下が所々破壊されているのか
そして知らぬうちに増えた謎の男が三朗と共に何故に縛られているのか
などの光景を見て分からず途方にくれた
■
途方に暮れる左近を気にする事無く、今にも拳や斬撃が飛び交うのでは、と思わせる程に言い合う元東西の総大将に左近は気持ちを持ち直しつつ、二人を横切った
何やら家康が時々、左近に向けて助けを求める言葉をかけているが左近は怪我人が優先する
何故なら左近は三成の部下なのだ、部下が主の邪魔など言語道断である
なので全く気にする様子もなく、左近は濡れた手拭いを絞って三朗の額に乗せた
すると三朗は目を覚ました
「っう
…
ぁ、左近、殿
…
」
「あ!目、覚ましたか!今、解いてやるから待ってろ!」
手拭いの冷たさに意識が戻ったらしい三朗はゆっくり瞬きをしながら左近へと目線を合わせる
どうやら傷が開いてはいるものの意識はしっかりしているらしい
それに気付いた左近はホッと安堵の表情を浮かべながら、三成が縛った縄を解きにかかった
幸い縄の結び目は簡易的で、すぐに解けたが左近は再び縛った
左近の知らぬ男、九尾のみを
そのあまりに自然な動きに三朗は暫く眺めていたが状況を把握すると、戸惑ったような顔で飛び起きた
「左近殿?」
「あ!こら!寝てろよ!傷が開くだろ!」
「いや、何故にその男を縛るのか、と思って
…
」
「ん?あぁ、ほら、アンタは包帯を巻き直すって言い訳あるけど三成様が解いたの見たらキレっから、コイツだけでも縛っておこうと思ってさ」
「そうか
…
」
「てかこんな事は良いから、アンタは準備済ますまで寝てろって!」
あまりに予想だにしていなかった返答なのか三朗は苦笑いを浮かべ、気まずげに自分の額から落ちた手拭いに目線を寄せた
しかし左近は全く気にしていないのか、縛り終えると三朗の肩を軽く押して横たわるように促す
三朗はその促しに抵抗する理由は無かったので大人しく横たわるしかない
すると気まずい空気を壊すかのように、三成と言い争っていた家康が転がってきた
どうやら三成に抵抗していたら転がされてしまったらしい
「いててて!三成、彼にぶつかったら、どうするんだ!すまない、大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だからそんなに慌てないでくれ、東照殿」
「なんだ貴様、縄から逃げたか
…
」
「あ、俺が三朗だけ治療の為に解いたんす!」
「
………
ふん、なら早急に済ませ、出ていけ」
「了解っす!ほらほら!退いて!」
「あ、すまん!」
慌てて起き上がり心配する家康に三朗は穏やかな微笑みを送る
そんな三朗の姿を見て、三成は相変わらず鋭い視線を向けながら尋ねてきたが、左近の返事を聞くと納得したのか家康の横を素通りすると刀を定位置に戻す
左近と言えば、三成に早急と急かされてやる気が出たらしく
家康の肩を横に押すと、その場に座って治療を始めた
押しのけられた家康は、戸惑いつつも抵抗せずに場所を譲ると自然に部屋の奥で座する三成の前に背を向ける形となった
すると三成の動きは早く、目の前に来た家康の首根っこの服を掴むと引き寄せる
「うぉおっ!?な、何するんだ!三成!」
「黙れ!この事態の元凶は、貴様なのは分かっている!」
「
………
ワシに非があると?」
「当然だ!貴様がこの白銀の男を制していれば良かったのだ!!!」
「
…
その通りだな、お前にも迷惑をかけた、すまなかった、三成」
九尾を白銀の男と表現し、三成は指し示すと家康の胸倉を掴みながら強く主張する
そんな三成の主張に家康は一瞬、顔を歪めたがすぐに顔を引き締めるとソッと胸倉を掴む三成の手を放し、詫びを入れた
素直に謝る家康に三成は数秒間、呆気にとられたが持ち直すと胸倉を掴む手に添えられていた家康の手ごと手を振り払い、家康から視線を外す
「
……………
チッ!さっさと白銀の男を連れて消えろ!!!」
「あぁ、邪魔したな、さらばだ
…
三成」
「え?あ!戻んのかよ、家康!」
「元々、三成と会う為に此処に来た訳ではなく偶然だ
…
左近にも悪い事をしたな、邪魔した」
「い、いや、別に、俺は
……………
あ、行っちまった」
ギクシャクと以前とは違う反応の三成と家康の話をこっそりと聞いていた左近は、あっさりと去ろうとする家康を思わず呼び止めた
しかし家康は左近へ、微笑みと早々に謝罪の言葉を向けると九尾を縛られた状態で横抱きに抱え、足早に立ち去っていった
その一刻も早く三成から離れるような態度に手を止め、わざわざ廊下まで出て立ち去る背中を見る左近を叱る事もせず、三成は己の手を見つめていた
その手は家康の服を掴んだ手であった
「
…
呼び止めなくて良かったのか?凶王殿」
「っ!
…
その必要はない、貴様も手当てが終わったのなら早々に消えろ」
「承知した」
そんな三成の様子に気付いた三朗は左近が手放した包帯を己で巻きながら、己の手を見つめる三成に問いかける
尋ねられた事で我に返った三成は、立ち上がると三朗に近付き、必要ないと言い切り三朗の包帯を結んでやる
三朗も三成の返事は予想していたのか、深く追求する事も抗う事もせず
ただ三成に三朗は頭を下げたかと思うと、左近に明るく声をかけた
「さて
…
左近殿、そろそろ部屋へ案内してもらえないだろうか?やはり流石に疲れが出てきたよ」
「ん?おぉ!悪ぃ悪ぃ!てか起き上がれる方が変だからな!」
「そうなのか?まぁ、左近殿の部屋で説教を受けるよ、流石にそろそろ凶王殿の部屋を出ないと申し訳ない」
「あっ!そっか!す、すんません!三成様っ!」
「
…
分かったからサッサと行け」
「はい!お邪魔しましたぁ!」
「それでは失礼する」
一通り騒動が収まった事で、夜も深まる時間だと気付いた左近は慌てて持ってきていた箱や酒を手一杯に抱えながら部屋を出る
そんな左近に対して微笑みを浮かべながら三朗は、重症とは思えない元気そうな雰囲気で続けて立ち去る
しかしその立ち去り方も慌しく、部屋を出た後に廊下で「凶王って呼ぶな」などと左近が三朗に向かって声を張り上げていた
だが今の三成には、そんな左近と三朗の騒ぎ声も更に激しく降り続く雨の音さえも聞こえてはいなかった
・ーーーーー・ーーーーー・
三成の部屋を後にした家康は九尾を抱えながら、ひたすら自分に与えられた部屋へと足を進めていた
偶然とはいえ久々に顔を合わせた三成の顔色は悪く、家康の記憶の中の姿よりも少し痩せていた
しかし部屋にあった酒のつまみなどを見る限り、左近が三成に半ば無理に食べさせているようだったので、家康は人知れずホッとしていた
するとそんな家康の思考を邪魔するかのように、家康の腕の中にいた九尾が身じろいだ
九尾が起きたのである
「いい加減、下ろせ」
「起きたのか、少し待ってくれ」
起きたと察して見ると、九尾は横抱きで抱えられている事が心底不愉快そうに下から家康を睨んでいた
与えられた自室まではまだ距離があったが三成の部屋から離れているからと、家康は立てられるように九尾を下ろす
そして縄を解こうとして九尾が静止してきた
「今、解くからな」
「いらん」
「え?でも」
「これ位、自力で切れる」
「あ」
未だ不機嫌そうにしながらも九尾は家康から目線を外し、これまた不機嫌そうに仁王立つ
するとすぐさま家康の前で己を縛っていた縄を切り刻むと、縛られていた手を軽く動かし具合を確かめている
その余りに不思議な出来事に家康は暫し目を見開いていたが、フッと疑問に思った事を尋ねた
「そんなに簡単に抜けられるなら何故、すぐにしなかったんだ?三成の部屋にいた時、本当は目を覚ましていたのだろ?」
「
…
気付いていたか」
「三朗、と言ったか?彼にぶつかりかけた時に偶然、気付いた」
「では逆に問うが、私があそこで暴れて良かったのか?」
「なっ!?それは困る!」
散らばった縄を家康が拾い、部屋へと足を進めていた二人であったが卑しく笑いながら問う九尾の言葉に、家康は思わず足を止める
そして同時に九尾が気絶しているフリをしていた理由を自ずと理解した
九尾の意図は分からないが、家康にこれ以上の迷惑をかけない為に、あえて気を失ったフリをしたのだ
それに、もし起きて三朗と九尾が話をしたとして二回戦が始まるのは火を見るより明らかである
更に、どうやら三成と九尾は、あまり相性が良くないらしく、こちらも只では済まなかったであろう事は明白であった
「私も面倒事は嫌いだ、だから私はそれを回避したまでだ」
「なるほど
…
気を使わせたな」
「フン
……………
あそこを離れて正解だった」
「ん?どうしてなんだ?」
「三朗と再び言葉を交わして怒りを抑えられるか怪しかった
…
それにあの場で斬り捨てるのでは意味が無い」
「九尾
…
」
蛍のような光の粒が突如、現れ束になり、そのまま九尾の手の中で刀の形となるその刀を九尾は何かを確認するかのように、美しい刀身を少し出して見つめた
無論、その眼差しの先にある本当に見つめている物など家康が分かるはずもない
ただ九尾の背中を見つめる他に無かったが家康は、九尾の言っていた"三朗の犯した罪"が気がかりだった
しかし九尾に話を詳しく聞ける筈もなく、ただ激しさを増す雨を横目に家康は九尾と共に部屋へと帰るしかなかった
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