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戌丸アット
2022-05-29 23:07:22
37730文字
Public
戦国basara
狐七化け、狸八化け
三家(戦国basara)
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「ちょっとアンタ、必要ないってどういう事だよ」
「突然すまない、目を覚ましたら驚いたが助けてくれたのはアナタだろうか」
「そ、そうだけど
…
」
「そうか、ありがとう!手当てまでしてもらっていて申し訳ないがこれ以上の迷惑はワシの意に介しないんだ、お礼もままならないがせめてこれ以上の迷惑をかけない様に退散させてもらおうと思う」
「ふん、長々と甘言を並べるか、ようは早急にここから離れたいだけだろ」
起きて間もないと言うのに青年は怪我を感じさせない雰囲気でごく普通に礼と立ち去る事をやんわりと伝えてくる言葉に三成は何故か焦燥感にも似た苛立ちを感じながら、いつになく攻撃的な言葉で青年を睨む
青年は三成を見て一瞬、目を見開いたが三成が青年の様子をよく見ようと思った時には既に起きた時の雰囲気に戻っており、ただ微笑みは苦笑いへと変わっていた
「ハハハッ!なかなか手厳しい指摘をするのだな、凶王殿は」
「なっ!アンタ、なんで三成様を知ってんだ!何もんだ!」
「何者も何も貴方たち、朝方この下(しも)の方の茶店で居なかったか?」
「
……………
あー!!!あの羊羹の美味い店!?」
「そうそう、そこで仲良く話しているのを偶然、聞いて覚えていたんだ」
「なーるほどなー!そりゃ名前を聞いたら合点がいくわ!」
青年の言い分に記憶を呼び起こされたのか、左近は嬉しそうに青年の肩を叩く
そんな左近の様子に叩かれた為か顔を少ししかめながらも微笑みを完全には崩さず笑う
しかし三成はそんな左近の首根っこを掴み、退かせると鞘に納めた状態の愛刀で青年の肩を叩く
「っぐ!」
「み、三成様!!!何してんすか!?」
「貴様ぁ
…
何故、嘘を吐く!!!」
「え!?三成様?嘘ってなんすか?」
「お前の記憶力はどうなっている、左近!あの茶店に私たち以外の人間は居なかっただろ!そもそもあの斬撃であれば騒ぎがある筈だ、貴様!何者だ!!!」
三成の言葉を聞いて左近は更に思い出したのか目を見開き驚いた顔になったかと思うと、すぐさま青年へと視線を寄越す
そんな左近には目もくれず、ただただ三成は謎の苛立ちを抱えながら鋭く青年を睨む
だが青年に怯える様子はなく、ただ微笑みを消し真っ直ぐに三成の目を見つめ話し始める
「
………
はぁ、ちょっと嘘が下手すぎたか
…
まぁ、正体を明かすのは構わないんだが襲わないと誓えるだろうか」
「貴様
…
この機に及んでまだ言うか!ふん、だが良いだろう
…
誓ってやる」
「み、三成様!!!何言ってんすか!!!こんな怪しい奴と約束するなんて!!!」
「黙れ!!!決めるのは私だ!!!」
「っ!
………
分かり、ましたっ!すんません
…
」
「
……………
両者、良いだろうか?」
「あぁ、さっさとしろ」
青年は悔しげな左近に少し視線を寄越し一瞬、戸惑いの目を向けたがすぐに潜めるとスッと立ち上がり、まだ雨が降り注いでいるにも関わらず庭に出ると身を翻す
するとそこには青年ではなく、一匹の大狸が居た
もとい体の模様や独特の尻尾を見なければ、熊にも間違えんばかりにデカく尾も通常よりも長く蜷局を巻いている程であった
予想外の事態に流石の三成も目を見開いて動く事ができず、左近に至っては驚きすぎて立ち上がれぬほどであった
「どっ!えぇえええ!!?いや、今、え!?」
「煩いぞ、左近!!!
…
だが物の怪の類だったとはっ!」
『ふふっ
…
流石の凶王殿も化け物はお初の様で
…
』
「っ!それがどうした!まだ傷の理由を聞いていないぞ!」
『あぁ
………
それはとりあえず人の姿で話そう、流石に雨の中で立っているのは体に響く』
「
………
ふん、好きにしろ」
未だ慌てふためく左近を置いてけぼりに二人は話を進め、また身を翻して人の姿になった青年は縁側へと足を進めるとそのままその場に胡坐をかく
その様に三成は咎める事はせず、ただ青年を見つめるばかりだった
「この傷はワシがここを通過する際に邪魔が入り、そのまま戦闘した結果だ」
「何度も言わせるな!何故、この屋敷や周りの動物どもが騒いでいないと聞いている!」
「それはワシが結界を張っていたからだ、相手は知らないが少なくともワシは動物や人を巻き込んでまで戦うつもりはなかったからな」
「あ、アンタ、さ
…
、もしかして戦い慣れしてる?」
「ん?あぁ、慣れてるよ、これでもその辺の妖怪どもは一掃できると自負しているつもりだ」
人の姿になり冷静さが出てきたのか、左近は恐る恐る気になった事を尋ねると青年は左近の雰囲気が可笑しいのか微笑みながら何処か自慢げに口角を上げる
そんな自慢げな青年に態度を変える事無く、三成は手ぬぐいを投げつけながら問う
「おい、何故、そんな目をする」
「三成様?」
「
……………
そんな目、と言うと?」
「何かを恐れる怯えきった目だ、さっき戦い慣れていると言っていたが貴様、戦う事を恐れるのか?」
「っ!」
青年は先程までの自慢げな笑顔を消し、ここまでの態度では見せなかった驚愕の顔色を見せて体を強張らせた
左近もそんな動揺しきった青年に驚くと青年の目線の先に居る三成を見た
二人に見つめられる三成は、先程までの怒りや苛立ちは消えており、ただ静かに青年のわずかな動きも見逃さない様に視線を注いでいた
■
家康は狐が化けていると言う青年の隠そうとしない空気を震わせる程の殺意に動揺していた
決して青年の驚異的な殺意に怯えたのではない
ほんの数日前、関ヶ原で正面から受けた想い人からの殺意と余りにも似ていたからだ
家康は思った
なんて悲しい感情の篭った殺意なのだろう
………
と
大切なモノを失った癒えようのない喪失感や守れなかった悔しさ、後悔や怒りなどが綯い交ぜとなり、その修正の効かなくなった全てを殺意に込めて理性をギリギリの所で保っている
その押し込める事や諦める事、悲しむ事を知らぬ純粋さを感じ
家康は三成を思い出さずにはいられなかった
しかし家康はすぐに意識を現実に引き戻す事になる
青年が刀一つで部屋を出ようとしたのだ
怪我を悪化させかねない行動に思わず、家康は青年の肩を引っ掴んで引き留める
「待つんだ!怪我をしているのに何処へ行く気だ!」
「煩い!邪魔をするな!あと一撃!奴に浴びせかければセン様の、師匠の無念を晴らせるのだ!!!」
「っ!とにかく、君
…
いや、お前の身を預かった者として部屋を無闇に出る事を許す事は出来ない!」
「っぅ!!!
………
黙れ
…
黙れ!貴様に何が分かる!私は、まだ
…
あの方から、学ばねばならぬ事があったのにっ!私の無念など貴様には分からない!!!」
「
……………
っ」
青年の今にも泣き出しそうな叫びに家康は咄嗟の事だったが一言も返すことができなかった
しかし同時に此処で引けば青年はこの場から居なくなり、そして二度と会う事もないだろうと感じると同時に此処で青年を引き留めねばならないと思った
そして一瞬であったが考え付いた結果、家康は青年を自分の胸に納めると青年の頭を優しく撫でた
抱き寄せられた青年は予想外の事で驚いたのか、大人しくしており暴れる事はなかった
それを良い事に家康は一撫でする度に、青年の心が少しでも安らげば良いと思いながら何度も優しく撫で続ける
「な、にをしている
…
」
「突然すまない、だがお前を止めたいんだ」
「何故だ」
「
…
心配なんだ、せめて今夜だけでも良い、その体を休めてくれ」
「
……………
何故、そこまでする?私は得体の知れない者なのだぞ」
「
………
知っているじゃないか、お前はとても美しい狐だと」
「
……………
」
「それだけでは不足だろうか?」
冗談めいた事を言いつつも家康は心配している事が一寸でも伝わればいいと思いながら、体を離しても頭を撫で続けた
撫でられている青年は抵抗はしないものの不服なのか眉間に皺を寄せていたが、急に家康の手を離れるようにして姿勢を正して刀を家康に突き出すように掲げると名前を不服そうに言った
「
…………………………
ツヅラオ」
「え?」
「私の名は九尾(ツヅラオ)、日の使いたる師の刃とならんとする者だ
………
癪だが助けられたのは事実だ、その借りは返す」
「ツヅラオ
…
か、そんなに堅苦しくする必要はないさ!それにお前を助けたのはワシの独断だ」
「
…………
ふん、素直に礼を言わせない奴は何処にでも居るものだな
…
」
借りは返すと真剣な眼差しのツヅラオに申し訳ない気持ちになった家康は、咄嗟に気にする事はないとやんわりと伝えたつもりだった
すると家康の言葉を聞いたツヅラオは悲しさを含む顔を浮かべ、誰かを思い出し零れるように呟いていた
しかしその言葉はあまりにも小さく家康に届く事はなかった
「ん?どうした?」
「
……………
いや、小腹がすいたなと思っただけだ」
「お、そうなのか?まぁ、食欲があるのは良い事だ!何か貰えないか見てこよう」
「
………
私も行く」
「そうか?なら付いて来てくれ」
暫し考える素振りをしたかと思えばツヅラオは腹がすいたと伝えると笑顔で家康は部屋を出ようとする
そんな家康に刀を帯に差しながらツヅラオは、無表情で付いて来る
家康は、ツヅラオの愛想のない無骨な態度に微笑みを送りながら、台所へと案内するべく足を進めた
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