戌丸アット
2022-05-29 23:07:22
37730文字
Public 戦国basara
 

狐七化け、狸八化け

三家(戦国basara)



………どうやらその場には、もう一人居たようだな」
「っえ?」
「なんだと!!!そんな話は聞いていない!!!」
「そうかまぁ、どうせ何を知ったか、見た東照が口止めでもしたのだろ」
「な、なんで俺を見るんだよ!」

もう一人居たと断言する三成は動揺を隠す事もせず、九尾の視線に釣られ、慶次を見つめると再び三成は慶次の胸倉を掴んだ

「っどういう事だ、前田慶次!!!貴様は!秀吉様の死に対し何か知っているのか!!!」
「それは
「嘘ではないが何かを隠している事は私には"視えている"、さっさと話せ隠し事などをしても最良の道は行けん」
「最良の……っ石田さん!家康は秀吉を殺してないんだ!」
「なっ!?貴様っ!!!戯言を!!!」

最良の道と聞くやいなや慶次は掴まれている事を怯む事無く、強い意思を秘めた瞳で三成を見据えた
そんな強い瞳に流石の三成も多少、怯むが話している内容は到底、信じられるものではなかった
それは当然である
家康、もとい徳川軍以外にその場に居たものなど報告にはないのだ
しかし九尾も強い意思を込めて断言する

「それが貴様の"真"か凶王、だが残念ながら事実は貴様の知る物ではない」
「黙れ!!!信じられるものか!!!家康自身が認めた罪が偽りだと!?根拠のない甘言を語り、私をも欺かんとするか!物の怪が!!!」
「清々しいまでの正直者だな、貴様は己が愚かと自身で高らかに叫ぶか」
「なんだとっ!!!!!」
「ちょっ!?ちょっとちょっと二人とも落ち着いて!!!」

九尾の断言も三成には甘言にしか聞こえず、また三成の主張も正しい筈なのだ
しかし九尾は主張を譲るような事もせず、むしろ三成を罵倒するような態度をとり始めた
そしてそんなあからさまな態度を取られれば誰でも怒りを覚えるものだが、三成もまた、あからさまに怒った
そんな大喧嘩を始めようと三成においては刀に手をかけているのを見た左近は、二人の間に入って慌てて止める
だが九尾は一切、言葉を撤回しようとはしなかった

「凶王、私を物の怪と謗ろうと何一つ事実は変わらない」
「あ、あのさ!何にも知らないアンタがなんで家康は殺ってないって言い切れんだよ!なんか変わった物が視れるみたいだけどそれは何の根拠にもならないだろ?」
「ふむ、確かに人からすれば、そうだなならば形を変え、東照の無実の根拠を出そう東照が殺したと言う根拠はなんだ」
「そりゃ、やっぱり家康の自白とかあ!あとうちの兵士が戦場で家康だけが立ってるのを見てるけど?」

煽りに煽られ冷静ではない三成に代わり、無理矢理に左近は間に入って九尾の底知れぬ自信の理由を尋ねた
嘘真が目に見えようと当事者以外には信憑性はないのも事実なのだ
その点については九尾も理解しているらしく、主旨を変えてきた
視点を変えて、何故、家康が殺したと言う事になったのかと言う理由を崩すようにしたのだ

「なるほどで、東照の無実を語った男が居るがその理由はなんだ?」
「お、俺!?えっと実は俺、秀吉が死んだ戦場に居たんだ
「えぇぇぇぇぇ!!?ちょっ!?そんな話、初耳っすよ!!!」

慶次の爆弾発言に左近が大声を上げるのも注意するのを忘れる程に三成も驚きを隠せない
左近の言う通り、初耳なのだ
しかし九尾だけが納得したような表情をすると言葉の鋭さを失わず、続ける

「煩い、はっきりしただろう、この男は覇王を殺した男を知っているからこそ東照は無実だと言ったのだ」
「巫山戯るな!この男はその事実を今まで話していない!!!これは妄言だ!!!」

辛そうな表情の慶次と動揺する左近を尻目に家康は無実だと語る言葉を、甘言の次は妄言だと話す三成に九尾はブレずに続ける

「巫山戯ているのは貴様の頭だ、東照自身が殺したと嘘を言っているのを黙っていた事から考えて口止めをされていたのは明白だ」
そうなんすか?慶次さん」

鋭い言葉を放つ九尾に左近はたじろぎながらも、左近は恐る恐る尋ねた
三成は鋭さを持った言葉よりも慶次の口から暴かれる己の知らぬ事実が出てくる恐怖で顔を蒼白にさせながらも、なんとか慶次を見つめる
そんな三人の視線に慶次も言いづらそうに答える

「口止めってか閉じ込められてた俺が自由になった頃には家康が秀吉を殺した事になっててさ、手遅れだったでもすぐに理由が分かったよ、俺」
「それってなんすか?」
「実は秀吉を殺した真犯人、もうこの世には居ないんだ
「し、死んでるんすか!?」
「どういう事だっ!」

もういない犯人の名を出さずに、慶次はその事実をゆっくりと口に出した
事実を聞かされた三成は足から崩れ落ち、左近は驚きのあまり崩れ落ちる主君を支えられずに立ち尽くした
だが三成の崩れ落ちる音を聞くと我に返り、慌ててその背中を摩るように手を添えて左近も膝をついた

「み、三成様っ!」
「家康が殺していないだと?ならば何故、私の目の前で罪を認めたのだ!!!左近や刑部さえも殺そうとしたのだ!!!私を邪魔だと言ったのも嘘とでも言うつもりか!!?うぅっ………私は私は秀吉の仇だと信じ、家康を憎んできたのだこれからどうやって生きたら良いっ!!!」

共に膝をつき、背中を支えようとする左近の手を振り払うと三成は、頭を子供が嫌がるように左右に振りながら己が膝をつく地面を憎き仇のように叩いて苦痛から逃れようとした
しかしそんな事実に打ちのめされた三成にも九尾は鋭さを持って三成に声を浴びせた

「身勝手だな」
「ちょっ!?なにいっ」
「身勝手だと言ったのだ、貴様はそこの赤毛の主君なのだろう?死にたいならば責任を果たしてから死ね」
「お、おい!!!」
「ちょっとアンタなぁ!!!」

今すぐにでも自殺してしまいそうな三成に対して死ねなどと容易に浴びせる九尾の容赦のない言葉に、これまで見逃していた流石の慶次や左近も九尾に掴みかからん勢いで声を荒らげる
そんな二人の様子に自分の言葉に不備があった事に気付いたらしい九尾はため息をつくと少し考えて言葉を変えた

「はぁ………凶王、何故、東照が嘘をついたのか理由は気にならないのか?」
………家康の嘘の理由
「あそれは多分、家や」
「黙れ、長髪」
「へ!?ちょ、長髪って

呟くように復唱する抜け殻のような三成を尻目に慶次が代わりに答えようとした
しかしそこを九尾は慶次に対して手の平を向けて静止をいれた
その静止に慶次がたじろいでいると思いのほか九尾は真剣な表情を向けていた

「煩い、想像で他人の心を軽率に語るな特に今の凶王はそれを信じるぞ」
「っ!」

信じると言う言葉に慶次は慌てて自分の口を手で押さえた
九尾の言う通り、理由を想像出来ても他人の心を勝手な想像だけで無責任に語るべきではないと感じたからだ
ましてや傷心しきっている今の三成を見ると、例え慶次の言葉であろうと簡単に信じてしまうと言う言葉にも頷けた

理解した様子の慶次を見つめた後、九尾は再び惚けている三成の胸倉を掴んで聞こえるように大きな声で尋ねた

「理由嘘の
「チッ凶王!もういい貴様も来い!そして東照の真の思惑を暴けばいい!奴が抵抗しようとも貴様には権利があるだろう!!!」
「っ!」
「貴様が行かないのであれば私のみで行くまでだ」
…………