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戌丸アット
2022-05-29 23:07:22
37730文字
Public
戦国basara
狐七化け、狸八化け
三家(戦国basara)
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「貴様は誰だ」
「徳川家康と言う、お前が偶然にもこの屋敷の庭の林で倒れているのに気付き保護させてもらった」
「
………
あの東照だと?」
「その通りだ、とりあえずこの刃を引いてもらえると喋りやすいのだが?」
「
……………
」
青年はしばし家康を睨みつけていたが話をする気はあるのか、睨み続けたまま刃を鞘へと落ち着ける
その態度に緊張を解くように息を吐くと、対面するように座り直す
何が不満なのか青年は家康を上から下まで確認するように睨み続けてくる
「何か
…
ワシの顔に付いているだろうか?」
「
……………
」
「あぁ、そうだ!怪我の具合はどうだろうか?一応、目についた怪我は手当てさせてもらったんだが」
「
……………
」
「まぁ、痛みがないんなら良いんだ、あ、腹は空いていないか?栄養補給を怠ると治るものも治らないからな」
睨み続け刀を離さない青年に臆する事なく、家康は根気よく話かける
しかし青年から敵意が消える事はなくなる所か喋る度に敵意は隠す事無く濃くなっていくのをひしひしと感じていた
だが家康は懐かしさを感じ、自然と頬を緩ませる
すると口を噤んでいた青年が突然、喋り出した
「おい、貴様
…
何を喜んでいる」
「え?ワシが?よ、喜んでいるだろうか
…
」
「なんだ
…
自覚がないのか、随分と間が抜けているな」
「間が抜けているとは手厳しいなぁ
…
本当に当てはないんだが」
「ふん
…
さっさと本来の要件を言えば良いだろう、何故、早急に話を進めない」
「あぁ
…
気付いていたんだな、それなら話が早いよ」
喜んでいると家康の様子を表現した青年は家康を呆れたように視線を寄越す
だが反面、家康の様子にだいぶ慣れたのか敵意はあるものの会話する程には敵意を薄めると青年は柄頭を家康に向け、先を促してくる
そんな動作にも三成を思い浮かべ微笑みをこぼしながら家康は促されるまま本題へと移す
「単刀直入に言うと何故、怪我をしていたんだ?戦などはない筈だが?もしや山賊の類だろうか」
「
………
事実を伝えると長くなる、とりあえず障子の所まで下がれ」
「え、さ、下がるのか?」
「あぁ、下がれ、そうすれば話は速い」
「わ、分かったよ」
言われた通りに家康が障子の所まで退いて後ろを振り返ると、そこに青年はおらず九つ尾を持つ白銀の狐が青年の刀を咥えて居るだけであった
しかもその大きさは大熊ほどもあるように見え、障子まで退いていても部屋が狭く感じる程であり、左右を見ると狐の尾が迫るほどに近い
しかし不思議と獣の匂いはせず、ただほのかに現実だと知らしめる温かさを感じるのみである
『チッ、思っていたより狭いな』
「こ、これは、ど、どういぅう!?」
『ふん、東照権現とも呼ばれる男が情けないな、九尾を見るのは初めてか』
「い、いや、その、九尾どころか妖怪を見た事が無い」
『貴様ぁ
…
私を妖怪なんぞと同類にするかっ!!!』
鋭く目を光らせた九尾は威嚇するように喉を鳴らす
その音は思いのほか部屋を響かせ、家康は畳すら震えているのを感じながら困惑していた
青年が消え、同じ声で九尾が現れた事を考えると、青年の正体は九尾と言う事になる
その予期せぬ事実が家康を困惑させていた
「不愉快にさせたならすまない、ワシは何分、人ならざる者と会った事が無いからよく分からないんだ」
『言い訳は良い、すぐに妖怪と言うのを撤回しろ、不愉快だ!』
「あぁ、それで気が済むのなら撤回するよ、だから教えてくれないだろうか?お前はどういった存在なのか」
『
……………
ふん、貴様ら人の言い方で表すなら神獣といった所だろう、少なくとも妖怪の類とは真逆であり人に害をなす事はない』
「そ、そうだったのか!なるほど、それは無礼な事を言った、改めて謝るよ、すまなかった」
『
……………
』
家康が唸り声に臆することなく目を見えて話していると、いつの間にか九尾の唸り声はなくなっており、九尾は鼻先を家康が触れられそうな程に近づけているのを見て九尾が体を寝かせている事に気付く
「どうした?もしや傷が痛むのか!?」
『狭い、人の姿に戻る』
「あ、あぁ、そういう事か」
「
………
ふぅ、何故、こうも狭い所に住んでいて平気なのか理解に苦しむ」
「ところでまだ聞けてないんだが、怪我の理由はなんなんだ?」
「
……………
」
怪我の理由を尋ねた途端、青年は美しい顔を歪めて家康から顔を背ける
その態度に家康は、聞いてはいけない事を聞いてしまった事を察する
しかし青年は苦虫を潰したような顔で話し出す
「話したくないのなら深くは追及しない、だがこの辺りは人が住んでいる
…
話せる範囲で良いから聞かせてほしいんだ」
「
………
私には倒さなければならない男が居る、許されない事をした男だ」
「
……………
」
「私は、その男をさっきまで追いかけ戦ったが
…
あと一押しのところで逃げられたのだ」
「
…
なるほど、人ならざる者たちの戦いだから誰も気付かなかったのか」
青年の話に多少の現実味はなかったが、先ほどまで現実的ではないものを見た家康は青年の話に頷く
青年と言えば、逃げられたのが悔しいのか青年は家康に背を向けて話を続ける
「貴様らが気付かなかったのは私が追う男が結界を張っていたからだろう、それより聞きたい事がある」
「うん?なんだ、改まって」
「私の近くに男か、狸は見なかったか」
「へ?た、狸?とにかくどちらも見ていないが
…
」
「そうか
……………
斬撃は浴びせた、気配も感じるのだ
…
必ず近くに居る筈だ!」
青年は言い終えると落ち着いていた敵意を再び膨らませ、刀と空気が震える程に刀を握りしめて殺意を曝け出していた
■
神のように崇めていた主君、豊臣秀吉を討たれた復讐心だけで動いていた三成は、かつての友であり復讐の相手であった男、徳川家康と天下分け目の大戦の場で争い、家康を斬首する為だけに生きていた
しかし黒田官兵衛の乱入や織田信長の復活などの予期せぬ邪魔、戦う事を止めようと動いていた前田慶次たちの動きによって戦は起こったが終結へと向かった
家康を殺せなかったー
………
その事実だけが三成の心を占めていた
何故、家康との一騎打ちを周りの者に邪魔されなければならないのかと自分の運を忌々しく思うし、また邪魔する理由も様々であったが邪魔された事実は変わらないので三成にはどうでもよかった
ただ一つ分かる事は、会う者は皆『豊臣秀吉』を過去として出すばかりであった
この事実は、三成にとって不愉快でしかなく、何故に皆が己の軍を「凶王軍」や「石田軍」と総称してくるのかが不思議で堪らなかった
しかし、もはや戦は終結へと向かって行き、家康とは刃ではなく言葉を交わす事しか許されてはいなかった
秀吉が倒された当初よりは冷静な判断が出来るまでには回復していたが、憎しみが消える訳ではない
否、消せるはずがない思いだった
そして今日(こんにち)も日ノ本の為、話し合う場が設けられていたが三成は大谷に止められていた
「三成よ、徳川と顔を突き合わせ刀を抜かぬ事ができるか」と問われたのだ
その問いに偽りを知らぬ三成は肯定も否定もする事ができなかった
今の三成には、もう己の心を計りかねていた為である
そんな三成を見て大谷は左近を引き連れ、ただ一言「しばし話してくる」と部屋を退室してしまったのだった
慌ただしく出て行った左近が開けっ放しにして行った障子を閉める気にもなれず、三成はただ庭を濡らす重苦しい雨を見つめながら未だ抱えている疑問を口にしていた
「家康
…
何故、貴様は裏切ったのだ
…
」
共に豊臣の兵として並び立っていた頃、友と思い背を預けた事もあった事を思うと忌々しくも、家康に心を開いていた事になると冷静な頭が告げていた
しかし三成にとってその事実は己の心を焼き切る程の苦痛しか生まぬものであった
そこまで静かに考え込んでいると、考える邪魔をするようにドタドタと品の無い足音が部屋へと近づいてきていた
「三成様!暇でしょ?酒、かっぱらってきたんで飲みませんか?」
「騒がしいぞ、左近、第一
…
何故、酒なんぞ持っている」
「あー
…
それなんですけどね?宴会になっちゃったんですよねー刑部さんも呆れちゃって部屋に戻っちゃったみたいですし」
「何ぃ!?刑部が居て、この有様とはっ!やはり私も行くべきであったっ!」
「まぁまぁ!三成様!まだ初日ですから!まだ日数はあるし今日くらい息抜きしましょ!」
笑顔で三成の傍へと近寄ると両腕いっぱいに持っていた酒の入った瓢箪やつまみの品を三成の前へ広げていく
そんな左近を止めようとはせず、好きにさせながら先程までの考えなどは次の機会だと頭の片隅に追いやる
三成のそんな考えなど露ほども知らぬ左近は、準備を終えるとお猪口を差し出す
その素直な好意を寄せる左近の態度に自然と力を抜き、お猪口をいつの間にか取っていた
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