影喰い
2024-10-09 22:39:55
20307文字
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零れ話

TLの練習まとめ。
時間軸バラバラ。カプじゃないものもあります。


【彼岸のものより】
・本編軸剣陣営。

 水辺まで逃げ込んだのは運の尽きと思え。魔力を操った水で妖異の動きを封じ、無抵抗のままで薙ぎ払う。
 人ならざるモノに手加減の必要はない、民に加害する存在を斬り捨てるのも良きことのはず。これで文句の一つも聞こえないだろうか。

 赤、黒の液体をまみれる死骸が静かに赤い花の隣に横になった。これをどうする気もないが、無性に花の養分にしても大丈夫だと思った。
 血の色。炎の色。川に沿って群生した花は、まさしく死の色彩と似合う。
 「セイバー」
 青年の声が川の向こうから。ここの騒ぎはもう収まったと判り、その双刀も鞘に納めてしまった。
 「もう片付けたぞ。にしてもここの花、少し他所のやつと違った気がする」
 「彼岸花だ。セイバーの生きる時代ではまだない植物だろうか」
 「ヒガンバナ」
 湿った場所を好む花みたいで、彼からそう教わった。
 「毒もあるが、それと名前のせいで一般的に不吉な花と見られる。常世、とも似てる言の葉だ」

 なるほど、それで死骸と似合うってことか。綺麗に咲いてる赤い線が長く続き、自力でその川を渡ることもなくて。
 一歩を歩き、足元にぐしゃ、と音が響いた。下を向いたら、花茎まで妖異の血で赤く染めた一輪を潰したのが見えている。
 まあ、人じゃないなら怒られない。

 「──凄いな」
 「何かだ」
 一瞬で鋭い視線を浴びている気だが、この男に?まさか。直ぐこちらを追いつけない弱いやつのくせに。
 「ああいや、ただ返り血もないかと、思ってただけ」
 そういえばそうだった。白妙の衣に何一つ汚れてもいない。
 「本当に汚れても心配は要らぬ。そも洗濯の必要もない」
 「そう、か」
 「そうだ。この仮初の体が霊体化で汚れを落ちる」

 亡者と生者の間にある絶対的な違い。止まったものが、決して川の流れに抗わない掟。儀が終わったら、いずれ常世に帰って行く。

 そのことわりを解らくもない男なのに、どうして。
 時折、
 亡者を羨ましそうな目でこちらを見るだろう。