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影喰い
2024-10-09 22:39:55
20307文字
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零れ話
TLの練習まとめ。
時間軸バラバラ。カプじゃないものもあります。
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【髪留めと噂】
・学パロ伊剣。
・こっちではまだ剣の性別どちらでもの程度で(内訳は男性です)
「見ろ、あれは確かA組の」
誰がそんな話を始めたのかはもう覚えていない。休み時間の男子高校生たちはいつもふざけた話題をして、つまらない授業から気を紛れる。今日で話のタネになるやつもそのうちの一つにすぎない。
ゆびに指す方向へ向かい、三つ編みでしっかり髪を留める生徒が、違うクラスでもいろんな噂が広がっている。
古い口調は実に古代から来た人間とか、女子生徒なのに男子生徒の服をよく着るとか、男子生徒だとしても気が向いたら女装も化粧もするとか。結局「どちら」なのか誰も知らない。そもそもA組と親交があったやつもいない。
当然のことだが、そんなことだけでわざわざあちらの誰かと友達を作る人は絶対、嫌がるのは間違いないだろう。
「で、今回はなんだ」
「髪だよ、髪」
気付けば、そのみつ編みを繋ぎ止めるものは赤いリボンだ。制服にあるネクタイもリボンも色合いに合う。ちなみに今日は女子制服の方だ。
「だからリボンはどうした。まさかその勢いで告白でもするか」
「違う、俺を殺す気か!あれは──」
大声を出したやつが突然自分の口を塞いだ。例のひとは、他の取り巻きと一緒にこちらへ近づいている。そういえばA組はこの先にあった。
「それもかわいいけど、いきなり赤いリボンはどうしたのか?」
「イオリの借りてきた!」
何一つ照れもなく、間柄がいい友達から借りたかのようだ言い方をするだけ。それを聞いた生徒たちは、どれも急に言い難い表情になっていた。
「その、うちのクラスでは、いおりっていうひとはないよね
……
?」
「お隣さんや学校以外の友達、ですよね
……
?」
「いや、どうしてその方向を」
「聞くんじゃなかった
……
」
「お前も同じ顔を出るんだな」
「だからって、」
授業を告げる鐘の音が建物中を響き渡る。廊下にいる生徒たちはみんな慌ててそれぞれのクラスに戻る。彼らはずっと教室にいるからそんなに忙しくはない、が。
「授業が始まるぞ。席に戻れ」
廊下から成年男性の声が明らかに彼らに向かえて伝わってきた。しばらくすると、何もなかったかのようなこの時間の先生が門を開け、黒板の前に立つ。
起立、
礼、
着席、
その後、一枚の紙切れをこっそりとこちらに渡した。
『先生の名前を思い出せ』
最初はその一言で戸惑いをするだけ。
チョークを握る先生の背中をぼんやりと見つめて、なんとなく目の前のひとについて思い返す。癖った長い髪を適当に結う先生が女子の中ではなかなか人気があるらしい、そのためいやでもそのひとのことを一応聞いたことがあった。
昔は剣道をやってるからよく体育の先生と見間違える。一見真面目な先生ですけど時々授業でゆるめなところもある。あとは、そのトレードマークの赤い髪留め、たまには誰かがいたずらをしたような、変な結び方をすること。
……
あれ?
そういえば、今日の先生は、黒い髪留めだった。
「──えっ」
視線をまた問題の紙切れに移した。宮本先生の名前。つまり、
「どうした、何か分からないこともあったか」
声を出したせいで、先生からも気を遣うようになった。前方にいた紙切れを書いた元凶も振り返って「ごめん」の口パクをした。
「いや、なんでもありません!」
「そうか。なら授業は続けるぞ」
──みやもと
いおり
先生。
「そろそろ返せて貰うぞ」
「かわいいと褒められたぞ。それに、イオリせんせいのそれも悪くないと思う」
「駄目だ。もう気付いた生徒がいる」
伸ばした手を軽々と躱した彼は、放課後も女子生徒の制服を着る。その動きで揺らした三つ編みに、いつも使っている赤い髪留めがある。
……
本気で掴めようとしたのはいつでもその腕を掴むくせに、今はその気が、決してならないようにと自分に戒めるをした。
「いいんじゃないか?ちょうど、お互いのムシヨケにもなるぞ」
「笑い話ではない。いざとなればどちらも痛い目に遭う」
「はあ。その時はなんとかしてくれる」
「暴力は駄目だともう約束しただろう」
この話によって拗ねたいのは一体どちらかもう分からなくなってた。一つ溜息をつくと、彼はつまらなさそうにまた隣に座っていた。弾力があったソファの上で、細い足がこの時点でまさしく目に毒すぎる。
「解った解った、返すぞ」
半分呆れるような口調で彼は髪を解け、長くて赤い髪留めをこちらに投げていた。それを手にいると、元は彼の物の黒い髪留めをそちらに差し出す。
「なあイオリ」
指先は髪留めを取り上げることもなく、ただ自分の掌に円を描き続ける。
「手を出さないの?」
「それは犯罪だぞ」
「二人きりで何の目撃者もないのに?」
「それでも俺はそれを許さない」
嘘ではない。この社会では規則を踏まえて生きねばならない。それも自分を、彼を守る最適策だと思う。
「未成年者を家に招き入れる時点では疑われると思ったが」
「
……
では明日から来るなと言ったら?」
「絶対に嫌だ」
だろうな、と笑いつつ彼の物を強引に押し返した。
「おまえの頭がいいから、それを拒んでいないの意味を察してくれると助かるよ」
学校の外で説教されたくないから見逃してやる、結構年相応の建前で返した彼はまだ長い髪をほどいたまま。
「髪を結んでやる。おいで、タケル」
見慣れた三つ編みを戻した途中、ふと壁に掛けるカレンダーを意識を向ける。あとどれくらい、同じ言い訳を使うべきなのか。その話題になった黒い髪留めは一日が経ったあと、ようやく持ち主のところまで戻った。
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