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さもゆ
2024-11-15 22:45:21
59923文字
Public
BF
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【BF腐】これは私の宝箱だ
8月に開催されたついったーの素敵企画「青いバナナの皮をむく」に参加させて頂いたやつと、リクエスト募集した時に書いたものをぎゅっとして箱に詰め込みました。本当にありがとうございます!
2019.10.3 たまごのお粥pixiv投稿作品
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お題
…
A英、『クラーケン』の一場面パロ
※私のためでしかないリクエストでしたありがとうありがとうクラーケンはいいぞ
※クラーケン大好き
※愛してるクラーケンー!!!!
なんの夢を見た?
絹を裂くような悲鳴が自分の喉から、それも無意識のうちに漏れていると知った時、英二は紐でも持ってきて首に括りつけた方がいいのではないかと本気で危惧した。一体、いつからだろうか? 彼はここ最近ずっと夢見が悪く、朝だって朝食を用意するまでに数度の溜め息を要して、そしてそれはおそらく一週間は前から続いていたのだ。きっと、その頃から睡眠時の英二の喉は意思とは無関係に開いていただろう。そうして絹を裂くような、はたまた蒸気機関車の汽笛のような声を上げていたというわけだ。それに気づいた時、つまりは今夜、たった今、彼は喉を押さえて飛び上がり、未だ喘鳴を漏らす自分の喉を締め上げてしまった方がいいんじゃないかしらと思った。
だって英二より遥かに夢見の悪いアッシュが、これに気づかぬわけがない。
「きみは
……
」
シーツを指が白むほど握り込み、隣のベッドを見もせずに訊ねた。
「気にならないの? 僕が、なんの夢を見てるか」
ずるい質問だ、と英二は思った。隣の彼が横たわったまま、こちらを見ているのが分かる。ずるい質問だ。なんの夢を見てるか? 僕は一度たりとも彼にそんな質問を投げかけたことはない。彼が泥濘を掻くように悪夢から身を起こす様を、気づかぬふりしてただ側にいるだけだ。安らかに眠っているようにベッドで手足を伸ばして。僕はそれがもどかしかったけれど、アッシュはそれで良かった。英二はそれをよく分かっていた。そのアッシュが、英二の夢の内容を訊くわけがない。英二にしか分からない夢の内容を、自分のせいだと思っているはずだった。
「気になるよ」
やがてアッシュが答えた。
英二は彼を見なかった。
「なんの夢を見た? って訊かないのかい」
「
……
なんの夢を見たんだ?」
「毎晩なんの夢を見てる? って訊いてくれよ」
「毎晩なんの夢を見てる?」
「きみが、いなくなる夢だった。僕の前から。死んでしまう夢だ」
「そうきたか」
「だけど
……
」だけど、きみはちっとも苦しそうじゃなかったんだ。むしろ、穏やかな顔して、自由を手にしたみたいだった。
衣擦れの音がし、ベッドが軋みを上げ、いつもならそれ以上掻き混ぜられることのない冷たい空気を流動させたアッシュが、英二の側に腰かけた。
そこでようやく英二はアッシュに目を向けた。
「俺が、易々と、誰かに殺されるわけないだろ」彼が囁いた。
「
……
違うよ、アッシュ」
「何も心配ない。大丈夫さ。俺がお前を守れなくなるなんて」
「そうじゃないんだ、聞けよ、きみは
……
」
「殺されたりしない」
「アッシュ」
そうじゃないんだ、と英二は思った。殺されるとか、殺されないとか、そういうんじゃなかったんだよ。ただ、きみは、満足して死んでいくようだった。僕はそれが、すごくつらかったんだ。
隙間風ばかり漏らしていた喉では、充分なものは何一つ紡げやしなかった。英二は、果たしてあれが本当に悪夢だったのかどうかも、分からなかったのだ。
(「ぼくがどんな夢を見ているか、きみはどうして聞かないんだ? 気にならないのか?」「どんな夢を見てるんだ?」「今夜どんな夢を見たかって聞いてくれよ」「今夜はどんな夢を見た?」等
――
チャイナ・ミエヴィル『クラーケン』の一場面、ビリーとデインの会話より)
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