外伝 瑠璃色の真珠【完全版】

あらすじ
かつてこの国には名探偵がいた。あらゆる謎を解き明かしたその探偵は、悪の教典と共に暗い滝壺で眠っている。
舞台は英国。不可思議な事件を巡る、残された者の物語__。
月が一際大きく輝く日。ヒトの姿に擬態できないエマ=ジェームズ・ワトソンはバケツの中でのんびり過ごしていた。そんなある日ワトソンの元に奇妙な案件が持ち込まれる。四人の女性に『購入した覚えのない宝石が突然届いた』という。その宝石は瑠璃色に輝く真珠で__? その宝石が持つ意味は何か。背後で渦巻く愛憎と犯罪とは……?
「窒息しそうな思いの果てに、あなたは何を願うのかしら」


ッシャオラ~~~~!!!! パワーで完結させました。『瑠璃色の真珠』!! 多分大体二か月ちょっと放置していた気がするんですけどもなんとか終わりました。
こっちもこっちで新章みを残しておくみたいな感じで終わらせたのはアレです。雰囲気です。雰囲気大事。なんだかすみません。全部繋がった状態の完全版なので長いです。お時間あるときに読んでください。パワーゴリ押し完結なのであんまりこう、その、何と言いますか。パワーです。はい。
楽しんで頂けたら幸いです!
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5


「あの時、私の事を本気で案じてくださって、ありがとうございました」
……いや。私は貴方を救えなかった。気休めにもならない、誰かの行為を模倣した優しさだった。貴方の心に寄り添えてなどいるものか。結局貴方は__」
「そんなことはありません」

フィニアは初めて会った時のように少し頬を赤らめて微笑んだ。

「嘘ばっかりだったけど、これは本当です。私は貴方に案じていただき、本当に嬉しかった」
「フィニア。君は……いや、今のあなたは明らかに幻想の内側に足を突っ込み、引き返せないところにいる! 何故だ。……何故、」

ジェームズは椅子から腰を少し浮かせ、前かがみになってフィニアに言った。
悔し気に歪む表情は誰に向けられたものなのか、俺にはよく分からない。けれどそれはきっと彼自身へ向けられる怒りであるのだろうと思った。

「ワトソン先生には、敵いませんね」

フィニアは聞こえるか聞こえないかほど、小さな囁きを零した。

「ですが今の私は、ロジェールマーニュ・ハイドノーブルの牙です。彼の命に従い、彼の敵を追い詰めて噛み砕く。此度は皆様とその利害が一致しております」
……貴方の目的は分かっている」

静かに、燻る怒りを滲ませてジェームズは続ける。

「この件についてずっと考えていた。泡泳竜を密輸するには金も時間も人脈も必要だ。オフェムだけでできるはずはない。彼は末端だ。だが末端であるがゆえに馬子の背骨に触れてしまった、だから消された。ある種想定外の殺人だっただろう。
……推測だが、ミザリーは娘であるアリスティアラの命を永らえさせることを、ひいては回帰者にする方法を探っていたんだろう。同時に、イシュタリテ卿もこう考えた。彼女が回帰者となり人であることをやめるならば、己の愛を達するに足りると」
「おい、ちょっと待ってくれジェームズ__」

俺は恐ろしくなって思わず彼の腕を掴んだ。

「ミザリーは自分の娘を無理やり幻想へ回帰させたのか? だからアリスティアラ・イーグルアイは馬子の身でありながら惑星魔術を__」

俺の疑問に対して、ジェームズは今までに見たことがないほど憎悪と嫌悪が綯い交ぜになった表情でフィニアを睨んだまま答えた。

……ああ。そうだ。ハイドノーブル家が保護したアリスティアラはもう、抜け殻同然だろう」
「__!」

フィニアはそれを指摘されることを恐れていたかのように固く己の手を握った。

……キリルの復活。それは、アリスティアラが回帰に失敗したという唯一の答えだ」