外伝 瑠璃色の真珠【完全版】

あらすじ
かつてこの国には名探偵がいた。あらゆる謎を解き明かしたその探偵は、悪の教典と共に暗い滝壺で眠っている。
舞台は英国。不可思議な事件を巡る、残された者の物語__。
月が一際大きく輝く日。ヒトの姿に擬態できないエマ=ジェームズ・ワトソンはバケツの中でのんびり過ごしていた。そんなある日ワトソンの元に奇妙な案件が持ち込まれる。四人の女性に『購入した覚えのない宝石が突然届いた』という。その宝石は瑠璃色に輝く真珠で__? その宝石が持つ意味は何か。背後で渦巻く愛憎と犯罪とは……?
「窒息しそうな思いの果てに、あなたは何を願うのかしら」


ッシャオラ~~~~!!!! パワーで完結させました。『瑠璃色の真珠』!! 多分大体二か月ちょっと放置していた気がするんですけどもなんとか終わりました。
こっちもこっちで新章みを残しておくみたいな感じで終わらせたのはアレです。雰囲気です。雰囲気大事。なんだかすみません。全部繋がった状態の完全版なので長いです。お時間あるときに読んでください。パワーゴリ押し完結なのであんまりこう、その、何と言いますか。パワーです。はい。
楽しんで頂けたら幸いです!
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4



「やぁだぁ~~~~!!!!」

カフェに幼子の声が響く。べちべちと胸鰭でバケツの側面を叩くエマ。大変愛らしいが、すっかりこの一、二時間ほどで流暢に喋れるようになったせいでジェームズは盛大にいやいや攻撃を受けていた。
俺は脳裏で四肢をばたつかせる幼き日の長男坊を思い出す。そしてその長男を絶対零度の視線で見ていた次男坊を思う。今では皆立派なものだが、皆イヤイヤ期は一度通る道である。

……エマ。私はいなくならない。大丈夫だ。……スコットランドヤードへ少し調べものに行くだけだ」
「じゃあえまもつれてって!」
「駄目だ。お前は人の姿に擬態できないだろう」
「できるもん! じぇーむずのいじわる~~!!!! えまもいくの~~!!!」

髪鰭を赤く染めるほど全身に力を入れて、必死に人間の姿になろうとするエマは本当に三歳児ぐらいの子供に見えるので不思議である。俺はほほえましくバケツを抱えて小さなレディに言った。

「エ~マ、俺と一緒にお留守番してくれよ~。カフェは閑古鳥が鳴いてっから、話し相手がいないと俺寂しくて泣いちゃうよ~?」
「いやぁあ!! い!! や!! じぇーむずといっしょがい~~い~~!!!!」

そんな食い気味で拒否しなくたっていいじゃん。俺はさめざめと泣きたくなった。

「ジェームズぅ……
……すまない」 彼は俺の手からバケツを受け取り、「……よし、シャル。お前は今日から名探偵だ」

と言って、俺のエプロンのポケットに『諮問探偵開業許可証』をそっと入れた。いつぞや押し付けられたそれはすっかり大活躍である。

「へ?」
……頼んだ」
「いやいやいやいやいや!! 無理があるって!!」
……無理じゃない。大丈夫だ。お前を信じている」
「がんばえー、しゃーうー!」
「きゅ、急に厚い信頼寄せてくるじゃ〜ん!! ……この野郎、俺の扱い方をよくわかってやがる! __わぁったよ! 一日名探偵やってやるっつの!」


***


我ながら有り得ないぐらいちょろい性格なのはよく知っている。ジェームズから受け取った『諮問探偵開業許可証』をスラックスのポケットに入れて、俺は紙袋に準備しておいたコールドブリューをセット、警部に媚びを売る準備も忘れない(出くわせば大抵彼は「何でお前が来るんだ!」と怒り始めるのだ)。まあ会わなければ自分で飲めばいいだけの話で、実際それは俺の胃袋へ収まった。
ジェームズから頼まれたユリカ・コリンスの解剖調書をコピーし、コールドブリューを入れていた紙袋へそそくさとしまう。俺はいつになくしおらしいバレルが気になり話しかけようかと思ったが、どう切り出すべきか考えあぐね遂にはバレルから「あの__」と話しかけられてしまった。

「お、おう!?」 俺は慌てふためきながらバレルの方をじっと見た。「俺、やっぱなんか変……だよな」
「いや、シャルさんは別に変じゃないですよ。その。人魚連続殺傷事件は終わってなかったんだな……と思って」
「それって確か俺が日本に帰ってた間に起きたっつう事件だよな。ジェームズの部屋に扱いに困る証拠品のワインが」
「シャルさん知ってたんですね」 バレルは複雑な顔をして続けた。「若い女性の人魚が次々に殺される事件で……ヘカチェさんが言っていましたよね。マクシミリアン・オフェム……彼は『目の前で風船が弾けるようにして消えた』と」
「ああ__ん? でもその事件では血液がワインに混ぜられたんだよな」
「ええ。弾けて消えた彼女らそのものがワインに混ぜられたと言い換える方が正確だとは思うんですけどね」
「けど犯人は捕まったんだろ? 神秘管理局との司法協議だって進んでんじゃねえのかよ」

俺はバレルについていきながら尋ねた。このまま大英博物館__その地下にある神秘管理局の学術棟へ向かう。
一度ヤードの外に出て地下鉄へ通じる通路を歩いていく。通路は薄暗く、一部の蛍光灯が寿命を迎えそうなのか、不規則にチカチカと激しい点滅を繰り返していた。

「その、……協議はできなくなりました」
「は? なんでよ」
「犯人が独房で自殺したんです。しかも壁に『kilir』と血文字を残して」

キリル。
人の名前だろうが、その名に隠された狂気を背筋に感じ取る。
一方、俺はその名を知っているような気がする。
その名を__

「ものすごい力で首の肉を__自分の頚動脈を裂いていました。指で、こう……。ありえませんよ。だって指で人間の皮膚、裂けます? 普通。それに逮捕した時点で錯乱状態が酷く、薬物使用の疑いもあったんですが……
「薬物は出なかったってわけか」
「はい。明らかに尋常ではない死に方だったので、神秘案件に指定されて。シルヴィさんが神秘汚染鑑定を行いました」
「シルヴィが?」

俺は意外な人物の登場に驚く。確かに彼女は神秘管理局の医務官だというが__。

「彼女によると犯人は何らかの神秘に触れて発狂した可能性があるとのことでした。……この事件は明らかにおかしいですよ。上からもう捜査するなって色んなところから圧力もかかってますし。神秘管理局も動けないんです」
「もしかして、政府や貴族連中がその『キリル』の正体を知ってるとか」
「やめてくださいよ。普通に有り得そうだから嫌だ」

デカい組織が隠蔽体質化するのはある程度想定できる事だ。しかし透明性の担保は、厄介なことに規律だけでどうにかできるものではない。ハイドノーブル家の末路を見れば容易に理解できるだろう。
俺は顎に手を当てて逡巡した。少なくとも『キリル』という存在が幻想なのか、それとも人間で世にも恐ろしい殺人者なのか、今の段階で判断する術はない。だが或いは、ジュワイユーズならば何か知っているだろうか? 俺は秘匿体質のように思える彼の事を考えた。

(仮に知っていたとして、あいつがホイホイ喋るとは思えねえ……


ジュワイユーズ・イシュタリテは重要なことを何一つ話していない。だがそれでいて、気づけば俺たちの懐へするりと入り込んできている。
その仕草が多くを識る者故か、それとも別の目的のためか? 俺は己の手へと引き継がれた役目を考えた。

黒き高貴。__ヴィヴィアン・ノーブル。

少なくとも俺は『高貴』だなんて大袈裟な呼ばれ方をするような馬子ではないと、自分では思っている。
けれど大多数の、純血派と呼ばれている馬子たちからしてみれば俺は『黒き高貴』以外の何でもない。
その名を与えられた時、俺はシャルルマーニュ・ハイドノーブルではなくなってしまったようなものなのだから。


「シャルさん? 大丈夫ですか?」

バレルが歩を止めて俺の顔色を窺っている。随分と柄にもなく考え込んでしまっていた。少々無理やりにではあったが笑顔を作って彼に追いつく。
行こうぜ、と肩を叩いて地下鉄の構内へ入った__が、無人。点滅を繰り返す蛍光灯、その下に奇妙な__ヴェールを被ったような小さな人影を一瞬認める。
構内へ足を踏み入れたその瞬間、バチ、と音をたて遂にその寿命を終えた明かりが消え、周囲は完全な暗闇に覆われた。切符の券売機からも明かりが失われ、通過して行った地下鉄の音が風切り音のように反響し、僅かに残された非常口の明かりだけが浮かび上がるように光っていた。
幸い耳が良い馬子や半馬子は、反響推定で物や人の位置を把握することができる。俺とバレルは背中合わせに周囲を警戒し、バレルは躊躇わずに懐から拳銃を引き抜きマガジンを装填した。


「ちょっと、そう警戒しないでよ」

含みのある女性の声が響く。俺は声の方へ左耳だけを向けた。身長はおよそ百七十センチ、細身。武器の類は持っていない。バレルがそちらへ拳銃の先を向けた。

「両手をあげて。申し訳ないですが、もし武器を所持しているなら発砲します」
……そんな物騒な物、持っているわけないでしょ。さっさと確認して」

俺はスラックスのポケットからスマホを取り出し、ライトで声の方を照らした。

「え!?」

写真とは異なり、ボブカットになった金色のウェーブがかった髪の毛。はっきりした目鼻、エメラルドグリーンの瞳。まさしくモデル体型というべきボディーラインに、首を彩るのは『瑠璃色の真珠』__。

「キャサリン……ドーベル、だよな。あんた」
「ええ。ねえ、貴方でしょ? 『現代のシャーロック・ホームズ』って呼ばれてる名探偵」
「人違いッッ」

すぐに俺の口をバレルが勢いよく塞いだ。もがく俺を彼は警察官の剛腕で押さえている。

「そ、そうなんですよ! この人こそ! 現代に蘇った名探偵ホームズ、シャルルマーニュ・ハイド……じゃなかった、イヴノーブルです!」
「そ。よかった。ヤードから貴方たちが出てきたのを見て、後を尾けてきたの。でも何、停電? 一体どうなってるの?」

キャサリンは不安げに周囲を見回した。
先程俺が見たヴェールの小柄な人影は絶対に彼女ではない。ましてやあれは物理でどうにかできる代物だとも思えなかった。

「あー、ミス・ドーベル。とりあえず俺たちから離れないで。わからんが……誰かいる」

俺は彼女の手を引いて引き寄せようと手を伸ばした。おずおずと言った風で触れた指先の冷たさに俺はハッとする。
ジェームズは言った。幻想種は総じて人間や馬子よりも体温が低い、と。末端冷え性にしたって今は八月だ。俺は失礼を承知で伸ばされた手を掴み、手首に触れた。
氷のように冷えている。
彼女は多分、人ではない。ジェームズならば一瞬で看破しただろうが__。

「ちょっと! いつまで握ってるの!?」
「ごめんごめん! ちょ〜っと気になることがあってさ。でも気のせいだったみたい。許して」
……はあ。まあ、いいけど。ねえ、それより__」
「__! 伏せろ!」

火花が複数爆ぜる。バレルはキャサリンを庇いつつ素早く床を蹴って壁へと避難する。俺も慌ててそちらへ逃げ込むが、降り注ぐ火薬の波が止まってくれる気配はない。
わかるのは何者か__それも複数人に銃撃されていること、狙いは俺たちではなくキャサリンであるという事ぐらいだ。バレルが即座に発砲し何かが倒れる音が響く。この何も見えない暗闇でも正確に手か足を撃ち抜けるのはもう曲芸の領域だ。
俺は素早く聴覚を走らせる。直後俺の耳を熱いものが掠った__僅かに下へ当てられていたら俺は死んでいる! さっと血の気が引く。思考を止めればジリ貧だ。この状況を打破する方法を考えろ。何者かが停電させたのだろうが、そもそもここまで正確に俺たちを狙えるならば暗視ゴーグルを身につけている可能性が高い。だがなぜ? 何故こんな回りくどい事をする必要がある? バレルを警戒した? それとも俺か?

__『影であり続けよ。夜であり続けよ。』

理由はわからないが、俺はその一節を思い出した。
ハイドノーブル家の家訓だったその一節は、今はもう囂々と燃える煉獄へ放り込まれ、なきものになっている。

けれど。

(俺の血には、嫌になる程それが刻まれてるんだよなぁ)
「ちょ、ちょっとシャルさん!? 何してるんです!?」

俺はバレルの制止を振り切って銃火器へその身を晒した。直後肩に熱い何かが物凄い勢いで貫通したのがわかる。わかる、が__

暗闇が徐々に姿を得る。暗順応で視界がクリアに、ゆっくりと光が構内へ戻り始める。冗談きつい、四人もいたのかよ、と俺は痛む肩を気にしながら連中を睨んだ。明らかに訓練された傭兵に見える。平和な日本じゃそこにいる事自体があり得ないそいつらは、一様に小型のマシンガンを俺へ向けていた。

一斉に吐き出される弾丸が俺へ向かって空を裂き、一直線に飛んでくる。瞳に映るそれは随分スローモーションに見えて、

「使えるもんは使わねえと、な!」

呆けている傭兵を蹴り飛ばす。勢いよく吹き飛んだ彼は壁にめり込んで昏倒した。背後からナイフで襲いかかってきた傭兵が俺の視界の端で回転した。バレルが投げ飛ばしたのだ。流石に現役刑事の体術は見事なものだと感心し、俺は残っていた一人の側頭を軽く蹴った。
倒れ伏す四人を見てそっとキャサリンが穴ボコだらけになった壁から顔を出す。

そのタイミングを謀ったか__空間がぐにゃりと揺らぐ。
彼女の足が浮き上がり天井へと体が吸い寄せられてゆく。
まるで、首を吊っているかのように。



***



窒息の恐怖に怯え踠くキャサリン、同時に顕れたよく知る気配、視線の先にいたのは銀色の髪をボサボサに振り乱し、古いガス燈のようなデザインの杖を持った魔女だった。
目は血走り、泣き腫らした目元は赤く、丸いメガネにはヒビが走っている。きつく噛み締められた唇から虎が唸るような声が絞り出され、俺とバレルは命の危険を本気で感じて一歩後ずさった。

「ッ、シルヴィ!! やめろ!! キャサリンを殺す気か!?」
「黙ってて!! だって、だって……だってぇ!! こ、この。この女のせいよ。この、女が、マクシミリアンを……!!」
「違う! シルヴィ、聞いてくれ! オフェムは殺されたんだよ、彼女じゃなく第三者の悪意によって! いいか、あいつは魔女じゃなくて人魚だったんだ。人魚の伝承によってオフェムは殺された! 考えてみろ、そもそもキャサリンが犯人だったとして何故オフェムを殺す!?」
「う、うう、うううう~~~~!!!! 嫌!! 嫌よそんなのぉ!! だって、だってそれじゃあ、わ、わ、私が殺したようなものじゃない!!」
……ゔ、うぁ……、あ、ぁ……!」

形の良い唇の端から明らかに平時では有り得ない泡が吹きこぼれている。本当に頸部が締まって窒息しかかっているキャサリンは瞳の端に生理的な涙を滲ませた。このままでは本当に彼女が死んでしまう。それにシルヴィを殺人犯にするわけにはいかない。

「シルヴィ! 俺を信じてくれ! 俺は君の愛にはなれないが__俺とジェームズがいっぺんだって君を騙したかよ?!」
「黙ってよ!! あ、ああ! 違う、違うの! シャ、ル……わ、わ、わたし…………!」

へなへなとシルヴィは白いタイルの床に座り込んだ。キャサリンの首を締め上げていた魔力が消え去り、浮いていた彼女はバレルに抱えられて激しく咳き込んでいる。何とか一命は取り留めたようだが、くっきりと縄で締めたような痕が首には刻まれていた。
これが『絞首の魔女』と呼ばれる所以か。俺は目の前で項垂れるシルヴィの元に膝をついた。ぽろぽろと大粒の涙を零す彼女は眼も虚ろに泣きじゃくっている。
一方鬼のような形相でシルヴィを睨みつけるキャサリンは絶え絶えの息ではあったが、

「この__、このクソビッチ」
「ちょっと! 何喧嘩売ってるんですか! 気持ちはわかりますけど今は堪えてください!」
「ハァ!? あんたこそ何言ってんのよ。私はあの女に殺されかけたのよ!? 嫌味の一つでも言わなきゃやってられないわよ! 何がマクシミリアンよ! 誰よその男!? 知らない奴の事で勝手に恨まれて殺されかけて、冷静でいろ!? 莫迦にするのも大概にしなさいよ!!」

キャサリンはそう叫びながらバレルの顔をどつきまわした。強すぎるだろこの人。俺は怖~~……と思いながらキャサリンとシルヴィを交互に見た。

「痛いッ、痛い痛いですッ! ちょっ、引っ張らないでッ……!! 痛い~~ッ!」
「大体あんた、警察官のくせに右往左往してるだけで全然私の事助けてくれないし、そっちの探偵はそのクソビッチの味方だし、何なのよ!? もううんざり! __この宝石のせいよ全部!!」

キャサリンはそう言って首につけていた『瑠璃色の真珠』をあしらった首飾りを力任せに勢いよく引きちぎった。白い真珠が無惨に床へ散らばり、大玉の瑠璃色が俺の足元まで転がった。俺はそっとそれを拾い上げる。キャサリンはヒールを鳴らしてつかつかとシルヴィのもとまで近寄り、

「ちょっキャサリンさんッ」

慌てて俺は間に入って止めようとした__が、一撃ぎろりと睨まれてあまりにも恐ろしく俺は思わず「ヒン!」と鼻の奥からビビり散らした嘶きが漏れる。
次の瞬間、キャサリンは思い切りシルヴィの髪を掴んで上を向かせ、横頬を思い切り引っ叩いた。

「訴えてやるわ。この美しい私の首に、こんな傷つけて。絶対許さない」


左右にふらふらと足取り重く、キャサリンは来た道を去って行った。
俺はその背中を視線で追う事しかできなかった。バレルはどつきまわされ過ぎて半泣きになっている。俺はそっとシルヴィの手を取って引っ張り上げ、彼女を立たせた。意識を取り戻した傭兵たちも若干細かく震えながらキャサリンを見送っている。

「あの~~……ところでおたくら、何で俺らに発砲してきたのよ」
「彼らは、私兵なの」 シルヴィはそう言って右横に立っていた兵士のヘルメットをひょいと取った。中は空洞である。シルヴィが作り出した人形だったのだ。「マクシミリアンが、人形の作り方を教えてくれたの。……この装備とかは……通販で買えるものを組み合わせただけ……
「シルヴィさん。いくらなんでもやりすぎです。これは擁護の余地がありません。だって貴方、明らかに自分の意志をしっかり持ってキャサリン・ドーベルを見張り、殺害を試みましたよね」
……。ええ……。申し開きをする気は無いわ。連れていって」

そう言ってシルヴィは両手をバレルに差し出した。

「すみませんが、俺も仕事なので。__逮捕します」

黒い手錠がシルヴィの両手へ嵌められた。その手錠には魔術の使用を封じ込める呪詛が織り込まれている。
俺は引っ叩かれた彼女の左頬__唇の端から漏れている血液に気づき、彼女へハンカチをそっと差し出す。紺色のそれを受け取った彼女は、悲し気に俺を一瞥してバレルについて行った。