匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public 東リベ
 

辿り着きたいのは美しい終焉

今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋‪くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。


天秤はどちらに傾くか

「ん
 フワッと意識がはっきりとしてきてぱち、ぱちと瞼を開けると見慣れない天井が武道の目に飛び込んできた。あれ、昨日そういえばどうしてたっけな?とウンウンひとりで唸っていると、隣からんんという明らかに武道では無い地響きのような低い声が聞こえた。
 ビクッと肩を揺らしながら、ギギギとブリキのおもちゃのように首を反対方向に向けると、武道の瞳に飛び込んできたのは鼻先が触れるほどドアップの鶴蝶の顔だった。
ォァ!?」
 思わず叫びそうになった武道だが、なんとか自分の口に手を当てたことで叫ぶのは回避出来た。叫ぼうと思ったら叫べたのだがすやすやと眠る鶴蝶を邪魔したくない為、武道はなんとしても声を抑えないとと思って口に手を当てたのである。
 まあ、少しだけは漏れてしまったけれど、それはまあ吐息のようなものだと思うから大丈夫だと自分に言い聞かせた。
 すやすやと隣で眠る鶴蝶の目の下にはくっきりと隈が刻まれている。
“い、きてる、たけみちッ、”
 数刻前に鶴蝶が武道の姿を見て取り乱していた事が武道の頭の中に思い起こされる。きっと武道が死んだことを自分のせいだと思っていた鶴蝶だから、それを負い目に感じていてずっと眠れないでいたんだろうな。と武道は思った。
 鶴蝶に向けても言ったが、関東事変の幕引きはあれが最適解だったと思うのだ。関東事変が起こる前、佐野万次郎の妹である佐野エマを武道のせいで殺し損ねた稀咲はあの時、ほんの少しだけ焦っていた。あの最悪な未来のように佐野万次郎を操る為には、彼に絶望を味わせ無ければならなかった。
 だから妹であるエマを殺そうとしたのだ。でもそれが武道のせいでダメになっていたからもうあとが無かったのだろう。だから万次郎の義兄であるイザナにシフトチェンジすることにしたのだ。
 でも、イザナには鶴蝶という稀咲にとって最も邪魔な相手がいた。喧嘩でなど稀咲には勝ち目がない。
 だから拳銃を使い、鶴蝶に狙いを定めたと見せかけてイザナを狙ったのだ。稀咲の読みは、イザナが大切にしている鶴蝶を狙えば、きっとイザナが出てくると思っていたのだ。アイツはそういう奴だから。
 だけど結局、稀咲が撃ったのは鶴蝶でもなく、イザナでもなく、計画を邪魔されていた相手である武道だった。
 そして、武道が出てきたせいで何もかも彼の思いどおりにはいかなくなってしまった。何度も稀咲に先手を打たれていた武道にとって、やっと武道が掴んだ勝利だったのだ。
「はは、てめえの思い通りになんて、させねえよ、ばーか。」
 あの時、死に際に出てきた言葉は自分の本心だったし、死に対しての恐怖なんてサラサラなかった。
 むしろやっとこれでタイムリープが、誰も死なずに終わるのかという達成感の方がでかかったのかもしれない。
 武道は思う。あの時、武道を撃ったときのあの稀咲の間抜け面は一生忘れないと。初めて自分が稀咲から掴んだ勝利が死だとしても、武道は稀咲に勝ったという高揚感をずっと憶えている。
 だからまあ最期の死に際に中指を立てて挑発ができたのだ。今になっては少し恥ずかしい黒歴史ではあるが。
 
 あれから稀咲がどうなっているか武道は知らない。今やネット社会の世の中で検索さえすれば簡単に出てくるだろうに武道はそれをしなかった。
 武道は前世と今世を割り切って考えているし、そもそも自分が生きている境遇があまりにも酷かったし、一人で生きていくという目標を掲げ、それに必死だったため、そこまで考える気にならなかったというのが正解なのだが。いかにも武道らしいといえば武道らしい。
 すやすやと眠る鶴蝶の頭を撫でながら、どうしてこんなことになってしまったんだっけか。とまだ寝ぼけている頭で考える。寝癖が付いているぴょこぴょこ頭でウンウン唸りながら。
 ああ、そういえばこれでここに来たんだな!というホワワワーンという昔のアニメに出てきそうな効果音が武道の頭の中で出てきた。
「ワーァ!中華街だ〜ッ!カクちゃん!みて!あれ美味そう!」
「こら、落ち着け。」
 横浜第七埠頭を後にした二人は武道が行く予定であった中華街へと繰り出し、晩御飯ジャンケンは何度もあいこの末武道が勝ち、念願の肉まんを食べていた。と言っても中華料理のお店にしたので鶴蝶もチャーハンを食べていて、結局二人とも自分の希望通りのものを食べていたのだが。
 明日は休みらしく、武道に会えた記念にと生ジョッキを持ち出した鶴蝶は、武道が肉まんの熱さと闘っている間にどんどん飲み進め、あっという間に酔っ払い人間になってしまったのである。
 武道の姿を見て、夢じゃないんだよなぁと泣き始めた時はどうしようかと思ったが、武道も武道で鶴蝶がこうなってしまった原因が自分にあるとわかっているので何も言えなく、気づけばこうなってしまっていた。
 武道はまだお酒を飲める歳ではないが、タイムリープの時は酒やタバコに逃げていた時もあったし、飲みたいという気持ちもあったがなんとかその欲求を抑え、辛うじて意識がある鶴蝶の手を引きながら中華街を後にした武道はあることに気づくのだ。
 あれ、オレってカクちゃんの家知らなくね?
 と。武道は今世で横浜に来たのがこれが初めてなので、土地勘など全くない。
 まあ、前世もあの関東事変前ぐらいに訪れたぐらいで中華街やみなとみらいなどの有名な所しか知らないのだ。後ろの鶴蝶を見てみれば今にも寝そうな勢いで、武道はどうしようと頭を悩ませた。
 もし、鶴蝶がここで寝てしまったら武道ひとりでは絶対に対処出来ないことは確かだ。そもそもここに鶴蝶を置いていくという選択肢は絶対にありえないし、タクシーに預けるというのも武道の選択にはなかった。
じゃあ、鶴蝶の携帯を借りて誰か助っ人を呼ぶか?という考えが武道の頭の中に浮かんだが自分が花垣武道の生まれ変わりだと信じてもらえる確証はないし、生まれ変わりだと知るのは今後の人生の中で後にも先にも鶴蝶だけにしたいという武道の願いからその選択肢も消え去った。
「カクちゃん、行くよ〜寝ないでね!マジで!」
ん、」
 なら、自分の泊まるホテルに運ぶしかないか。という武道の導き出した考えにより、なんとか意識のあるうちにホテルについて、こうして鶴蝶とホテルで一夜明かしたという訳だ。
 幸い中華街から近いホテルを取っていたので、鶴蝶が寝る前になんとかホテルに着いた武道は部屋に着いてから鶴蝶をベットに寝かせ、シャワーを済ませて持参のパジャマに着替え、鶴蝶が眠る一つしかないベットに潜り込んで寝たのである。
「なんとなく記憶が戻ってきた気がする。」
 そう独り言を呟きながらふわぁと欠伸を零した武道は、机の上に置いてあるデジタル時計を無意識に見た。時刻を確認するとまだ七時すぎだった。
 カーテンの隙間から昇り始めてきた朝日の光がチラチラと顔を出している。予約したホテルは素泊まりだから朝ごはんは自分で用意しないといけない。
 でもまあこのホテルにあと一泊はする予定だし、すやすやと寝ている彼をまだ起こすには早いなと鶴蝶が寝ているベットからサッと降りた武道は今日の旅行のプランを立てる事にした。
 ベッド横にある机に移動し、携帯を操作しながらどこに行こうかと考える。横浜に行く目的はもう昨日で達成してしまったし武道は計画を立てるのが苦手だから昨日も夜に横浜第七埠頭に行くことだけを目標にしてあとは自由気ままに散策していただけだ。
「行きたいところ、かあ……
 検索画面を開いたままだったスマホに横浜 おすすめ 場所 と在り来りな検索をかけてみる。検索ボタンを押すとすぐさまオススメスポットが色々出てくる。
 水族館とか、有名なカップ麺ミュージアムとか。まあでもそれも残り予算と相談だなあ。と考えつつそうか、あと一泊すれば横浜ともさよならするのかと武道の脳内に突然そんな考えが過った。
 元々はもう横浜に来るのは、これっきりにするはずだったくせに幼馴染である鶴蝶に再会してからどうにもひとりぼっちに耐えきれなくなってしまったのか、寂しいという感情が武道に植え付けられてしまったのだ。
 寂しいだなんて思ったのはいつぶりだろう。産みの母親に捨てられたことを理解した時でさえ寂しいとすら思わなかったのに。
「あ〜もうやめだやめ!」
 せっかくこれまでの努力した人生に対して頑張ったなという自分へのご褒美旅行なのに陰気臭いのは嫌だと自分の頬を叩いた。
 バチンと叩いた後にん〜と寝ている鶴蝶が寝返りをしたので起こしてしまったか!?とビクッと肩を揺らしてしまった武道だったが、寝返りをしただけらしくホッと息を吐いた。
 時刻はさっき時計を見てから一時間を過ぎたところで今日も行き当たりばったりで行くかあと決めた武道はとうとうやることが無くなってしまったので洗面台にも行って歯磨きでもしようかなと洗面台に行きかけたところ、ピリリ、という機械音とブー、ブーという携帯のバイブの振動音が部屋にこだまする。
 机の上に置いてある自分の携帯は無音で何も振動しておらず、武道の携帯では無いことは確かだ。ということは鶴蝶の携帯か。とベット脇に置いた鶴蝶の仕事用カバンのなかを調べるとピリリと音が鳴りながら振動している携帯を見つけた。
 とりあえずすやすやと寝ている彼の睡眠を妨げないために消音モードにして、洗面台にある小さなタオルに包んでバイブの振動音が響かないようにした。
 ある程度するとバイブの振動音が消え、一仕事を終えふぅと息を吐いた武道は当初の目的である洗面台に行こうとした。
 洗面台に行こうと足を踏み出した途端、また鶴蝶の携帯のバイブの振動が始まり、一仕事を終えたかのようにスッキリしていた武道の喉がキュッと鳴った。
(ど、どうしよう、代理として電話に出るべきかな)
 昨日聞いた話では今日は一日休みだと鶴蝶から聞いていたし、電話の心配もないと上機嫌にジョッキを煽る鶴蝶が武道の頭の中に思い浮かんでいる。
 けれど休日にも関わらず、立て続けに電話をしているということは何か起こったのかもしれない。
 でも、すやすやと寝ている鶴蝶を起こすのは気が引けるな。と考えているうちにまたバイブが振動する音が聞こえる。
 携帯の画面は鶴蝶の個人情報に関わることだから武道は見てはいないけれど何回もかけてきているということは同一人物ということで間違いないだろう。
 ブルブルとタオルに包まれた携帯を見ながらこれを見送ってもう一度携帯が振動したら電話を取ることにしようという賭けに出た武道は、心の中で鳴るな、鳴るな!とそればかり祈っていた。バイブ音が消え、ああやっと静寂になった。と思った途端、タオルが震え出した。
(ちゃんとフラグ回収すんのかよ……。)
 ああ、こんなことならそんな賭けなんてしなかったら良かった。と思ってしまったが言ったのは自分だからやるしかない!と武道はタオルに包まっていた鶴蝶の携帯を取り出し、宛先を見ずに電話に出た。
「も、もしもし。」
ッチ、やっと出やがった。オイ、下僕。今どこにいる。」
 電話の奥から聞こえる声に武道は終わった。と心の中で声を漏らした。なんせ武道が電話を受けとった相手は、鶴蝶が王と崇め慕っているイザナだったのだから。
 うわぁ、昨日のフラグ回収今ここですんのかよ。と武道はゲンナリした。しかしまあ、数年経ってもイザナだって声でわかるもんなんだなあ。と関心しながら、いや落ち着け、まだバレる訳じゃない。とドクドクとうるさい心臓を落ち着ける。
 さっきまで汗なんかかいてなかったのに、額に汗が溜まっているような気がしてならない。声を震えさせないようにと武道はぎゅっと自分の手を握りしめた。
「すみません。現在、鶴蝶は席を外しておりまして。ご要件なら私がお伺い致します。」
 武道がつらつらと言葉を述べた途端、画面の向こうにいるイザナは、なんにも言葉を発しなくなってしまった。
 もしかして言葉が変だったのかな!?とか自分の名前名乗ってねえ!いや、名乗ってどうする!?オマエ、自分からバラしに行く気か!?とどうでもいい喧嘩を脳内の武道たちが騒いでいて、武道は一人で混乱していた。
 そんな武道を他所に、画面の向こうにいるイザナは武道に向かってオイ。と言葉を投げかけた。
「は、はい。なんでございましょう。」
「テメェ、花垣武道だろ?」
 よく分からない日本語を喋る武道に向かってイザナがそんなことを言うもんだから、一瞬時が止まったようなそんな感覚に陥る。
 いやいやそんな。画面越しなのにそんなこと分かるわけ無いはずだと武道はドクドクと鳴る心臓を落ち着け、震えないように声を発した。
「いいえ、違います。その方はどちら様でございますか?」
 緊張しすぎて声が裏返りそうになってしまったが、なんとかいつもの自分の声で彼の質問に対して受け答えすることができた。
 鶴蝶のように姿を見られたのならまだしもイザナは画面越しにでしか会話が出来ないし、これは言い逃れすることも容易いだろうと武道は思った。白を切ればいい話なのだし。
 すみません。よくわかりません。と無理難題を押し付けられた音声機能のように言えばいいのだと。勝ちを確信したかのようにイザナの返答を待っていると、彼はしっかりとした声の通る声でこう言い返した。
「テメェは絶対、花垣武道だ。そうオレが言ってンだからな。王の言うことは絶対だ。」
 何故、画面越しの相手が花垣武道だという絶対的確信をイザナが持っているのか武道には訳が分からなかった。生前彼と関わりがあったのはあの武道が死ぬきっかけになった関東事変だけだ。
 鶴蝶のように王と下僕という関係性があり、数年間一緒にいたのならまだしも、イザナと過ごした日数なんて鶴蝶に比べれば月とすっぽんで、イザナと武道の関係性などほぼ赤の他人に等しいレベルで、あれほど血の繋がりを求めていたイザナが全く血の繋がってない武道に、どうしてそんな確信めいてるのかが全く分からなかった。
「すみません。仰っていることがよく分からないのですが。ご要件が無ければ切らせて頂きます。」
 こうなってしまったら話を逸らそうと武道は当初の目的であるイザナがどうして鶴蝶に電話をかけてきたのかということを聞き出すことにした。
 このままイザナと押し問答のようなことをしていても一生平行線のままになってしまうと思ったからだ。どうせ武道は明日になったら横浜を離れるし、彼に会うことは無いという確信をもっているから。鶴蝶と出会ったのは偶然だと武道は思っている。
 だからこれから東京へ進学するとしても、自分が花垣武道出会ったという事実を隠し通せる自信を持っているからこんなに強気に行けるのだ。
 そんな白を切り続ける武道にイザナはフッと笑いながら、なら、テメェが花垣武道でないという証明をしてみろ。と言ってのけたのである。
「証明?何故、そんなことをする必要が?」
「テメェが白を切り続けるからだろ。」
 なんならビデオ通話にでもしてみるか?と余裕綽々に言うイザナに次なる一手を考える武道。
どうしよう、このまま電話をブチ切りして今日は観光なしにしてそのままもう帰ってしまってもいいな。となんとか逃げる方向に足を向けているとそんな武道の考えを遮るようにイザナは逃げようだなんて考えンなよ?と言葉を投げかけた。
「え、」
 イザナに考えを見透かされた武道はおもわず心の声が出てしまうほど動揺している。さっきまで武道が優位に立っていたはずだった盤上は、もう全方位から敵に追い詰めてられているようなそんな感覚に陥った。チェスでいうならばチェックメイト寸前。
 どうしよう、やっぱりここから早く逃げた方がいいのかもしれないと危機感を募らせた武道は室内に散らばった自分の衣服をキャリーケースに戻そうと片方の手を伸ばした。
 もう、電話を切ろうかと考えている武道の耳に、イザナの声が響き渡る。
「さぁ、花垣武道。チェックメイトだ。」
 勝ちを確信したようにイザナの声が画面越しに聞こえたかと思えば、武道の宿泊しているホテルのドアがバタンッと豪快な音を立てて開いた。
 ドアの向こう側にはさっきまで画面越しに聞いていたイザナの姿がある。
 目の前にイザナが現れた武道は、今にも白目を向いて倒れそうな勢いだ。豪快な音が聞こえたからか、鶴蝶は流石に睡眠を妨げられたのか目を擦りながらんーと唸っている。
 ちなみに鶴蝶は寝起きなのと、久々にぐっすり寝れた弊害でまだイザナが目の前にいることを把握してない。
 傍からみればカオスすぎる状況だが、ここには武道とイザナと鶴蝶しかいないので誰もつっこむ者はいなかった。
「オラ、下僕起きろ。」
 未だにベットの上で目を擦る鶴蝶にムカついたのかイザナはスパーンッ!といういい音を立てながら鶴蝶の頭を叩いた。イテッと声を出しながら目を開けた鶴蝶は自分の王が居ることと、知らない場所で寝ている自分に驚く。
「イッ、イザナなんでここに!というかここは?」
「テメェが電話に出ねェから位置情報取得してオレが直々に来た。ここは中華街近くのホテルだ。多分そこでキャパオーバーして倒れてるソイツが予約してたんだろ。」
 イザナが指差す先には本当にキャパオーバーをしてキャリーケースに手を伸ばしながら意識を失っている武道の姿があった。
「タッ、武道!大丈夫か!オイ!」
 すぐさまベットから起き上がり倒れている武道を抱えた鶴蝶はすぐさま武道の脈を確認した。ドク、ドクと正常に動いている脈に鶴蝶はホッと息を撫で下ろした。
「なんでこんなことに?」
 まだ起きたてほやほやの鶴蝶はただただ状況が掴めず、頭の上にハテナが重なるばかりで、イザナにそう言葉を投げかけてみると、予想外の言葉が返ってきた。
「数コールしても出ねェから、ホテルに向かいながら電話掛けてたらオマエじゃない誰かが電話に出やがったンだよ。鶴蝶は席を外しているから自分が代理として伝えておくってな。その声がいつか聞いたことのある声にそっくりで、初めはまさかな。とは思ったが。」
「武道が、電話に出たってことか?」
多分テメェの睡眠を妨げないためとかだろ。」
そうか。」
 もしかして寄っていた時に寝れなかった理由をポロッと言ってしまったから武道はこうしてずっと自分を寝かせてくれていたのだろうと鶴蝶は考えた。よく眠れたが最悪の目覚めであったが。
 やっぱり昨日起きた出来事は夢じゃないと実感するように、鶴蝶は腕の中にいる武道の頬を撫でる。
 相変わらず生まれ変わっても武道は変わらない。電話がなった時点で自分のことを起こしていたら少なからずはこうなることは無かったのに。ただ鶴蝶を寝かしてあげたいという一心で電話を取るなんてお人好しすぎる。と鶴蝶は武道に向かって笑みを零した。
 そんな鶴蝶にイライラしたのかイザナはオイ。と不機嫌そうな声を出しながら鶴蝶に詰寄る。
「どうした?」
「さっさと支度してここ出るぞ。オマエにも、ソイツにも色々聞かねェといけないこともあるしな。」
 鶴蝶の腕の中で気を失っている武道を奪い、抱えたイザナは地下駐車場で待ってンぞ。早くしないと置いてくからな。と言って早々と消えていった。
 バタンッと勢いよく閉じられたドアの音でハッとした鶴蝶は置いていかれないようにと早々にシャワー室へ駆け込むのだった。