匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public 東リベ
 

辿り着きたいのは美しい終焉

今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋‪くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。


ふたりならなにも怖くはないよ

「ん……
 夢の外へ放り出されてしまった武道が目を開けて初めに見えたのは昨日見たホテルの白い天井ではなく、色とりどりの風船が描かれた壁紙の天井だった。
 まるで自分がいる施設の子ども部屋のような場所のベットにいるらしい。自分が寝ているベットの横の窓から太陽の木漏れ日が漏れているから、まだ昼間ぐらいなんだと大まかな時間の認識ができた。どこからか、子どもたちが遊んでいる声が聞こえる。
「ここ、どこなんだろう……。」
 そして、カクちゃんとイザナはどこに行ったんだろう。とりあえずベットから降りて状況を確認しないと。と思った武道は寝ていたベットから降りて子ども部屋らしきドアの扉に手をかけようと手を伸ばすと、扉が開いた。
 武道が開けようとしていた扉の先にいたのは、武道よりもひとまわり小さい子どもだった。
「あー!にぃちゃん!めぇさめた?」
「うん。あ、ねぇ
「なら、カクチョー呼んでくるね!」
「あ、まって……
 ここはどこだということを聞こうとしたのに武道の姿を見た瞬間、武道よりひとまわりちいさな元気いっぱいな男の子はドタドタと武道がいる方向と反対方向へと走り去ってしまった。相変わらず子ども行動力は早い。
 武道のどこにも行き場の無い手が宙にさまよっている。まあ、カクちゃんを呼んできてくれるならいいか。と武道は元いたベットの片付けをすることにした。
「にーちゃん!カクチョー連れてきたよ〜!」
 ほどなくしてドタドタと廊下を走る音が聞こえたかと思えば、さっき武道と話していたちいさな男の子と手を繋いで鶴蝶がドアの前にいた。
 鶴蝶はその男の子に伝えてくれてありがとうと言って、彼の頭を撫でた。彼は嬉しそうにうんっ!と言いながらまた廊下を駆けていく。
「武道、大丈夫か?」
 ベットに座っている武道に跪くように鶴蝶が隣に来る。武道はそれに慌てるようにベットから立ち上がった。
「カッ、カクちゃん!そんな跪かなくても!」
「それ子ども用のベットだからさ、オレが座ったらどうなるかわかんねェからこうしただけだ。」
「あそういうことね……。」
 盛大な空回りに少し恥ずかしくなってしまった武道は、赤くなった顔を見られたくないがために鶴蝶の顔から視線を逸らして、ここはどこなの?と聞いた。
「ここか?ここは天竺。イザナとオレが経営する施設だ。」
 大体予想は付いていたけども、やっぱり彼らの総本山に来ちゃったかあ。としょぼくれている武道にとどめを刺すように、武道が起きたら社長室に連れてこいって言われてるんだが。と少し遠慮気味な声量で鶴蝶が言った。
 ここまで来て、会わずに帰すなんてないよなあ。とは思っていたので予想通りではあるけれど、電話越しにイザナに対して啖呵を切った罪があるので本音を言うならばここから今すぐにでも逃げたい武道。逃げれる確率などほぼ無に等しいが。
はァ、逃げたすぎる……。」
 電気ネズミのしわくちゃ顔のようになってしょぼくれている武道にオレも、オレも傍にいるから大丈夫だ!と声援を送る鶴蝶。
 少しだけ気力は回復したけれどそれでもまだまだイザナに立ち向かう気力など足りなかった。
 これがRPGのゲームならイザナは王様で、鶴蝶はその側近で武道はどこにでもいるモブのような立ち位置の人間だ。なんで啖呵なんかイザナに切ってしまったんだ!と数時間前の自分を揺さぶりたい衝動に駆られている。
 武道の横で心配そうな顔をしている鶴蝶には悪いけど、この部屋から出たくない。というかずっと気を失っていれば良かったとさえ思う。
 ため息を吐き続ける武道に鶴蝶はなら、ここから逃げるか?という予想外すぎる発言をしてきたので思わず鶴蝶から逸らしていた視線を合わせざるを得なくなった。
「エッ、今なんて……?」
「イザナと会わずに、ここから二人で逃げ出すか?」
 武道にニコッと笑いかける鶴蝶に冗談だよね?と聞き返すと、冗談じゃないぞ?とまたニコッと返された。
 嘘だろ。と武道は思わず心の声が出てしまっていた。逃げたいとは思っていたが、まさか鶴蝶からそういう提示をされるとは思っていなかった。
 未来でも鶴蝶は幼馴染の武道を撃つほどイザナの命令に忠実な人間であったし、武道から見ても、万次郎とは別にイザナは人を動かす統率力を持っている。暴力で従えた奴ばかりだと彼は言っていたが、彼らが服従しようと思ったのは確かにイザナにコテンパンにされたからというのも理由の一つかもしれない。
 けれど、彼のカリスマ性に惹かれたからこそ、あんなにもイザナの周りには人が揃っていたのだと思う。
 そんな彼を王と崇めている鶴蝶がイザナを選ばず武道を選ぶとすら言うのだ。そんなに彼に自分の死が影響してしまっているのかと思っている武道を見透かすように、鶴蝶は責任を感じてるわけじゃないぞ。と武道の瞳を見て言い切った。
オレの脳内覗いた?」
「はは、思ってることが筒抜けだからなあ、武道は。ほら、言っただろ。なんにもできなくたっていい。ただ、隣に居てくれるだけでいい。って。」
 鶴蝶が武道の手を握る。鶴蝶の手から伝わるじんわりと暖かい熱に、武道は少し泣きそうになってしまった。そうだ、自分が命を差し出してでも守った人はこんなにも暖かい人だったことを再確認したからだ。
 このまま、逃げてもいいのか?と武道は自分に問いかける。この先、二人で生きていくとしてここで逃げたとしたら?武道は最初の人生のようにずっと逃げ続けてしまうだろう。
 最初の人生は散々だった。友達や両親ですら置いて逃げて、そのくせ人を僻んで生きていた自分。こんな暖かい人が隣に居るのに、自分がそんな人間になってしまうことは武道にとって許せないことだ。
 暖かい心を持った鶴蝶の隣に立てるような人でありたいと武道は思う。もうヒーローではない武道が、鶴蝶の隣に立てるような人になれるのかなんて分からないが、鶴蝶に見合う人である為なら努力さえ惜しまない。と武道は思っている。
 それならば、絶対にここから逃げるわけにはいかない。イザナとちゃんと会わなければ。武道は自分を奮い立たせるように頬をバチンと叩いた。
 鶴蝶はそんな武道を見て驚いていたが、武道の顔を見て微笑む。彼の意志が固まったことが分かったからだ。
「カクちゃん。オレ、逃げないよ。ちゃんとイザナに会う。」
 鶴蝶の手を握り返した武道の瞳は、鶴蝶のだいすきなあの海のように透き通った、波を打つ度に太陽に反射されてキラキラと輝く水面のようなあの青い瞳だった。
「そうか。」
「でもさ、」
どうした?」
「ひとりじゃ無理だから、ずっと隣にいてくれる?」
 そういう約束だもんね?と意地悪げに笑う武道に、鶴蝶は一瞬呆然としながらも、次の瞬間にはもう武道のことを抱きしめていた。
「ッ〜、やっぱり武道は最高だな!」
 訳も分からずに抱きしめられる武道を片手で抱きながら、鶴蝶は子ども部屋を後にした。
 エッ、ちょっと待って!カクちゃん!これで行くの!?という武道の声は気分が高揚している鶴蝶には聞こえず、社長室に行くまでに施設の子どもたちにわ〜!にーちゃんずるーい!カクチョー!オレも!ワタシもやって!という声があちこちに飛び交っていた。