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匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public
東リベ
辿り着きたいのは美しい終焉
今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。
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やっと夜が明けたね
「ッチ、出ねェ。ンだよ寝てんのかよ。」
朝早くから天竺の事務室で電話を掛けているのはここの施設長であるイザナだ。イザナが電話を掛けている相手は彼の右腕であり、下僕としてこき使っている鶴蝶である。
いつもなら直ぐに出るはずなのにイザナの耳には無機質な音声メッセージを促す声だけが聞こえる。
彼のトラウマになっている二月二十二日を乗り越えたが、まだ本調子が出ない鶴蝶のことを配慮して毎年、その翌日を強制的に休ませて電話なども掛けないように例年通り心掛けている。
だが、今年は鶴蝶の担当している案件の問い合わせが偶然にも来てしまい、出来れば今日中に回答が欲しいとのことなのでこうして鶴蝶に朝っぱらから電話を掛けているのだが一向に繋がる気配を見せない。
「ぐっすり眠れてるワケねェしな
…
」
昨日ここから退勤する前、最後に見た鶴蝶の目の下のクマは驚くほど深く刻まれていたし、例年なら寝れずに起きているか浅い睡眠を繰り返しているはずだろうに電話に出ないということはどういう事なんだろうか。とイザナは頭を悩ませた。
それでもこの案件は今日に片付けないといけないし、イザナはイライラしながら鶴蝶と共有している位置情報が取得できるアプリを開いた。
「
…
ン?家じゃねェな、ここ。」
鶴蝶の居場所は中華街に近いホテルを指し示しており、車を走らせれば二十分も掛からないところにいた。
鶴蝶が何故ホテルに居るのかなどイザナには理解が出来なかったが、電話に出ない以上突撃しに行くしか他ないと鶴蝶に電話をかけ続けながら、運転手にこのホテルに迎えという司令を出し車に乗り込んだ。
車に乗っている間も鶴蝶に電話をかけ続けてみるものの、返ってくるのは無機質な音声メッセージを促す声だけで、あと一度だけ掛けたら諦めようとイザナが電話を掛け始めると、プルル、プルルという何度も聞き飽きた呼出音が止み、もしもし。という声が聞こえた。
「
…
ッチ、やっと出やがった。オイ、下僕。今どこにいる。」
位置情報がホテルを指し示しているのだからそこにいることは間違いないだろうが念の為、本人から自分の居場所を聞いた方が確信が持てると思ったイザナはそう電話越しの鶴蝶であろう相手に向かって問いかけた。
数秒何も言葉を発しない鶴蝶に、寝ぼけてんのか?と言おうとした途端、イザナの耳にいつか聞いたことのある声がスーッと入ってきた。
「すみません。現在、鶴蝶は席を外しておりまして。ご要件なら私がお伺い致します。」
その声を聞いた瞬間、イザナは言葉を発せなくなってしまった。電話越しにいる相手は、かつて関東事変で鶴蝶とイザナを庇って死んだ花垣武道にそっくりだったからだ。
鶴蝶がそのホテルにいるということは、自然と武道もそのホテルにいるということになる。そして昨日は偶然にも花垣武道という人間が死んだ二月二十二日だった。
本当に生まれ変わりなんであるもんなんだなと、こんな奇跡などあるのかとイザナは開いた口が塞がらない。
さっき初めて聞いた声なのにもう花垣武道だと認識しているイザナの脳に、自分で笑ってしまいそうになった。
えっと、大丈夫ですか
…
?とこちらを伺う武道の声に、イザナはハッとした。
「テメェ、花垣武道だろ?」
そう電話越しの相手に問いかけると返ってきた答えはいいえだった。そんな、そんなはずが無い。
イザナの直感がコイツは花垣武道だと言っているのだからと彼に言ってみるものの彼はいいえと言い続け、話を逸らそうとしていた。
あの日、イザナは目の前で花垣武道が死んでいく瞬間を見たし、彼が白い棺の中にいるところも見た。花垣武道がこの世に居ないことなんてとっくの昔に理解しているはずだ。
でもどうして、この画面越しにいる相手が花垣武道だと確信できるのかなんて答えは一つに決まっている。
イザナは花垣武道という存在をずっと忘れられないからに決まっている。総長も副総長もおらず、仲間たちが諦めかけていた圧倒的不利な状況をたったひとりで打破し、東卍を勝利に導いた彼の姿を、あのキラキラ輝く青い瞳と、テメェらなんかに負けねェ!と叫び続けた声とか色々。
あれからずっと彼に魅入られ続けているイザナの直感がそういうのだから絶対。オマエは絶対花垣武道だという自信がある。そうじゃないのならここで死んだっていい。とすらイザナは思っている。
ホテルの地下駐車場に着いたイザナは、運転手に鶴蝶のいる部屋を確認してこいというメモを渡し、画面越しにいる相手を追い詰める準備に入った。
「それなら、テメェが花垣武道じゃないことを証明してみろ。」
一気に畳み掛ける様に武道にそう言うと、証明してなんの意味が?と返されてしまったので白を切り続けるからだろ。とイザナが正論のような言葉を言って、なんならビデオ通話してもいいんだぜと言ってしまった途端、武道は黙ってしまった。
その間にイザナはホテルのロビーに行き、音を出さないように運転手から貰った武道が居るであろう部屋のカードを手に入れ、エレベーターに乗る。電話越しから微かに音が聞こえる。きっと、逃げようとしているのだろうか。
(もう、逃れられないのにな。)
エレベーターから降りたイザナはスタスタと武道と鶴蝶のいる部屋の番号まで歩いていき、その扉の前で勝ち誇ったようにこう言い切った。
「さぁ、花垣武道。チェックメイトだ。」
バンッとドアを開けると、ベッドで何も知らずに寝ている鶴蝶とキャリーケースに服を詰め込む武道の姿を捉えた。
数年ぶりに見た武道は金髪ではなかったけれど、あのキラキラ輝く青い瞳は健在で、やっぱりオレの直感は正しかった。とイザナはニヤリと笑った。
状況を把握出来ていない鶴蝶を殴りつけ、事の顛末を鶴蝶に話し、彼に全てを任せてイザナはキャパオーバーして気絶した武道を抱えて運転手の待つ地下駐車場へ向かった。
「やっぱりあれ如きでくたばる人間じゃなかったか
…
。」
車の中でそう呟くイザナだったが、彼の手は武道の胸に添えられている。
電話越しの相手が武道だと信じてやまなかったイザナだが、彼が生きているということに対して実感がまだ湧いていないからこうして彼の胸に手を添えているのだろう。
ドクン、ドクンと脈を打つ音が聞こえる。その音があるということは、彼が今、ここで生きている証だ。
「しぶてェ奴
…
。」
気絶した武道にそう言葉を吐き捨てたイザナだが、武道に向ける眼差しは柔らかいものだった。これから向かうのはイザナと鶴蝶の拠点である天竺だ。
彼には言いたいことも話してもらわなければならないこともいっぱいある。そして今頃猛スピードで準備をしている鶴蝶にも。
「
…
やっと、夜明けか。」
もう空には朝日が昇り始めているから、この時間に夜明けという言葉を使うのは間違っているけれど、イザナはハッキリとその言葉を言って笑った。
イザナの言う夜明けとは、鶴蝶の心を指し示している。花垣武道が死んでからずっと鶴蝶の心は闇に沈んでゆき、時が止まったように動かなくなってしまった。
鶴蝶はただ、武道に最期に言われた幸せになってという呪いのような言葉に生かされ続けているようなそんな危うい人間だった。
今日ホテルで鶴蝶の顔を目にしたイザナはやっとこいつの心にも、夜明けを迎えることが出来たのかと思ったのだ。武道を見る鶴蝶の顔は、今までになく甘い顔をしていたのだから。
「これから、騒がしくなる、か
…
。」
きっと、武道が見つかったとなれば武道の古巣である東卍や、彼が総長を務めていた黒龍の連中共が黙っていないことは確かだ。
鶴蝶ほどでは無いが、イザナの愚弟である佐野万次郎も彼が死んだ時は荒れに荒れていたし、黒龍の彼らは彼らできっとどこかで武道が生きているかもしれないと情報を集めているという噂を聞いたことがある。
でも、それでも今世で花垣武道を最初に見つけたのは鶴蝶で、鶴蝶が属しているのは我らが天竺だ。
(天竺が囲っていると知った時、愚弟はさぞ悔しがるんだろうな
…
。)
万次郎の悔しがる顔を想像してイザナはすこし心が晴れやかになった。前世、武道を見つけたのは万次郎でその事実は揺るぎないけれど、今世で武道を見つけたのは鶴蝶だ。その事実もきっと揺るぎないだろう。
さぁ、これからどうやって万次郎に武道をお披露目してやろうかとイザナは計画を立ててゆく。まあ、それでもそれは後でいい。しばらくは鶴蝶と天竺で囲ってゆけばいいのだから。
ここまで、一人で生きてきたであろう彼をじっくり離れさせないように囲えばいい。自分たちじゃなきゃ嫌とまで言えるように。
「
…
楽しみだなァ、武道。」
未だに意識がない武道の頭を撫でながらイザナは微笑みながら呟いた。彼の目には地下駐車場をこちらに向けて走り続けている鶴蝶の姿が映っている。
「遅せェ。」
「
…
ッ、これでも急いだんだが。」
「まあいい、これから聞きてェことも沢山あるしなァ、覚悟しとけよ?」
「
…
ああ。」
出せ。と司令された運転手が地下駐車場から車を出した。向かうは彼らが本拠、天竺。朝日に照らされた鶴蝶の顔は、昨日までの隈が酷い顔などではなく、晴れやかな顔をしていた。
イザナはそんな鶴蝶を見てフッと笑った。イザナの肩にもたれかかっている武道の意識はまだ、どこかにいったままだった。きっと武道が目を覚ました頃には、彼らの本拠地に運ばれたあとだろう。
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