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匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public
東リベ
辿り着きたいのは美しい終焉
今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。
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Even without me life goes on.
オレが居なくても人生は続く
武道が前世といわれるものを思い出したのは小学校に上がる手前の冬だった。養護施設で流行していたインフルエンザをもらってしまい、高熱を出した時。
施設の職員に抱き抱えられて病院に連れ込まれた武道は、新型インフルエンザです。という医者からの判定を受け、一人寂しく隔離されていた時に脳にビビッ!と電流が駆け巡ったような衝撃が走る。
ああ、なんか
懐かしい
・・・・
感覚 だな。と脳に記憶が行き渡った頃にはもう遅かった。
「
…
う、ぁっ
…
」
そこからはもう地獄だと言えばわかるだろう。思い出したくはなかったあの血腥い記憶。自分が死ぬ瞬間を何度も何度も見せられ、大切な人が死ぬ瞬間を見せられるこの絶望。
まだ小学生にもなってない脳でそんなショッキングな出来事を受け止め切れるはずもなくキャパオーバーした武道の脳は、高熱を出すことでショートした脳を正常に戻そうとしていた。
あれ?ワンチャンもしかしてオレ、高熱で死ぬンじゃね?というぐらい連日四十度近い体温をを叩き出す武道に、施設の職員が付きっきりで看病してくれたおかげで1週間ほどで熱が下がったのである。
高熱の時の記憶は朧気だ。あるようでないようなそんな感覚。だけど、施設の職員の人によると誰かにずっと謝っていたらしかった。ごめん、ごめんね。と。なにか怖い夢でも見てたの?と聞かれて五歳児らしくドラゴンに追いかけられる夢を見た。と言っておいた。職員のおばさんは優しくオレのことを抱きしめてくれた。
熱が下がってから自分の境遇を思い出してみるとそれは酷いものだった。どうやら自分は母親に捨てられたらしい。
胸のど真ん中にある痣が母親にとって気味悪いものだったらしくそれを理由に捨てられたそうだった。
―
ごめんね、ごめんね
…
ッ、
施設に置き去りにされる前に最後に見た母親の姿を思い出した。まあ正しく言い換えると流れ込んできた、だが。
その時はまだ赤ん坊であ、う、うという言葉しか喋ることが出来なくて彼女がどうして泣いているのかも分からなかったが、顔に落ちてくる大粒の涙に目も開けられないほどだったな。と武道はまた思い出した。
母親に捨てられた事実はあるものの、武道はどうしても母親のことを憎めなかった。彼女の去り際の大粒の涙にほんのすこし、愛情を感じたからだ。そんなこと、なんて馬鹿にされるかもしれないけれどそれでよかった。
武道にしかわからない、武道だけが受け取ることのできた愛情でいいと。寧ろ、こうして施設に預けてくれる選択をしてくれただけマシだとも思った。それは武道自身が数々の家庭環境を見てきたからだろうか。
「これから、どうしようかな
…
。」
一人でボソボソとベットの上であぐらをかいて考え込む姿はどう見ても五歳児には見えない。五歳児にしては随分大人びすぎている。施設の職員が武道のこの姿を見たら本当に五歳児か
…
?と疑うレベルくらい。
でも誰か来たとしても武道は気づかないだろう。それくらい集中しているみたいだから。
武道がこれはタイムリープではなく転生だと気づいてしまったのは、インフルエンザに罹って隔離された部屋の壁に立てかけられたカレンダーの西暦を見てからだった。
一瞬、見間違えたのかと目を擦ってみたが、間違えていたのはカレンダーではなく、無情にも武道の目だったのである。
タイムリーパーである武道とトリガーである橘直人が握手をし、タイムリープが起こると決まってある年に戻される決まりなのに対し、今の西暦は関東事変から数年経っているみたいだった。
…
ということはだ。
「オレ、死んでからすぐに転生してるってこと
…
?」
しかも多分、みんなが生きている時代に。なんの意図があってそうしたんだよ!と神様の胸ぐらをつかみたいところだ。
武道はタイムリープをすることで彼がタイムリープをするキッカケになった橘日向や、彼女を救う過程で本来死ぬ運命であった龍宮寺堅や、場地圭介たちを救った。
死ぬ運命だった彼らを助けられたのは、武道にタイムリープという能力があったからだ。過去と未来を行き来できる武道だからからこそ出来た偉業なのだ。なのに、今ときたら。
武道は関東事変であっけなく死んでしまったからタイムリープというチート能力は備わっていないだろうし、今更自分が彼らのところに行って出来ることがあるかといえば無いに等しい。
なぜならば、武道は子どもになってしまったから。
関東事変の頃もまだ未成年で難しいこともよく分からない子どもだったけれど、今の武道はそれよりもっと子どもだった。
やけに気味の悪い声変わり前の甲高い声と、もみじ饅頭のようにむっちりとした手と、極めつけには手洗い場に背伸びしないと届かない位の小さな身長の自分。
そんな小さな自分が彼らのところに行ったって何も出来ないし、寧ろ迷惑ばかりかけてしまうのでは無いか。というのが武道の導き出した答えだった。
現にタイムリーパーだったとき、タイムリープのことを知らせた千冬にはずっと迷惑をかけていたし、トリガーだった直人にも千冬同様に自分の頭が良くないばかりにたくさん迷惑をかけた。
それなら別に会わない方がいいんじゃないかと武道は思った。みんなに迷惑をかけるぐらいなら、会わない方がマシだと。
「みんな、生きてるのかなあ。」
まだ記憶が戻って数日しか経っていなくて彼らが生きていることも、そもそもこれが彼らが生きている軸なのかすら分からない。
仮に生きていたとしても、彼らはきっと自分が居なくても生きていけると漠然と思ったのである。彼らは強い。喧嘩の腕っぷしはもちろんのこと、芯の強さとか、仲間を思う心とか、その他もろもろ。
それはずっと一緒にいて、彼らを傍で見てきた武道がいちばん知っている。
ならば、武道が彼らにしてあげられることはもうなにも無い。それは、自分がタイムリーパーでは無くなったから。もう誰かを救うことも命を張ることもできない。
最後のリベンジだと、意気込んでたやる気はもうなくなってしまった。
そんな、なにもできなくなってしまった武道を、彼らはきっと必要としてくれないだろう。
彼らは、ヒーロー
だった
・・・
自分を見てくれていて、ヒーロー だった武道だからこそ一緒にいてくれたのだから。本来なら会うことも、道すら交わることのなかった人たちだ。
最初に戻っただけじゃないか。と武道は自身を納得させるように首を縦に振った。
生まれつき胸のど真ん中にあるこの痣はきっと、関東事変の時にイザナと鶴蝶を庇った時に出来た銃創がそのまま痣として現れてしまったのだろうと武道は考えた。
男の勲章と言うべきなのだろうが、神様がヒーローになり得なかった自分に施した罰なのだろうとさえ思う。こんな痣、生まれつき持っていたらそりゃあ母親も気味悪がるわけだ。まあだからといって捨てられるのは頂けないけど。
でもきっと憎めないのは、彼女の愛情を知っているからだろう。彼女なりに武道のことを愛してくれたけれど、結果こうなった訳で。だからひとえに母親が悪い訳でもないのだと武道は思った。これから、どうしようか。という考えが頭の中に思い浮かぶ。
「会いにいきたいけどなあ
…
でもこんな姿見たらオレだって気づいて貰えないだろうし
…
。」
寒空の下独りごちながら武道はフゥーっと息を吐く。本当は自分が必要とされなくても、今すぐにでも彼らが生きているかとか、ちゃんと生活しているかとか、闇落ちしてないかとか確認をしに行きたかったのだが、なんせ今世武道が生まれた場所はいつも自分のマイホームだった東京ではなかったのだ。寧ろ東京より、京都の方が近いという。
物理的な距離と年齢による妨害に武道はガックリと肩を落とすしか無かった。東京に行く手段は新幹線か夜行バスかそれとも飛行機か。どれも保育園児だけで行く手段では無いことは確かだ。
「遠い、なあ
…
。」
距離とか、年の差とか、何もかも。掴めそうで掴めない月のように、彼らとの距離はジャンプで追いつくようなものではなくなってしまった。
まあ前世もそんな追いつける位置にはいなかったけれど、それよりもっと離れてしまった。そんな現実に、武道は少し泣きそうになった。これからずっと一人で生きていかなきゃいけないという現実が武道を襲ったからだ。
今の武道には施設という枠に収まっていて、その中の一員として含まれているけれど、高校を卒業したらここを出ていかなくてはならない。それが決まりだからだ。
そうなれば一人で生活しなければいけなくなるし、一人で生きていかなきゃいけない。どの軸でもほぼレンタルビデオ屋のバイトだったり、雇われ社長だったりで働いていたがああはなりたくないなと思った。前世は誰かが助けてくれて、それに甘えながら生活していたけれど今回はそうもいかない。
頼れる人なんてものは今世に産まれた武道にはいないから、自分のことは自分でできるようにならなくちゃいけないのである。
「
…
頑張るしかないかあ。」
唯一の肉親にも捨てられ、ひとりぼっちになってしまった武道には、今この世界で信じられるのは自分しか居ないのだ。まあそれでも五歳児の武道にできることは限られているから、それは追追。
「
…
ねむ
……
ねよ。」
ふあ〜。と欠伸をして武道はまた眠りについた。緊張感のかけらもないが、これが武道の平常運転だから仕方の無いことだ。
だって彼、精神年齢は五歳より遥か上で肝だけは据わっている子なので。
ずっと避けて通ってきた学業と家事等の生活スキルの向上。まだ五歳の子が掲げる目的としてはだいぶ現実寄りすぎて本当に五歳児か
…
?と疑われそうだがまあ見た目は五歳だけど精神年齢はなあ
…
と遠い目をする武道。
果たして記憶が戻ってから保育園児のテンションについていけるかという不安だけが彼を襲っていた。
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