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匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public
東リベ
辿り着きたいのは美しい終焉
今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。
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せめて今だけはひとりじめ
「
…
ズズ
…
ッ、オレぇ、ちゃんと泣かずにいけた?」
「ちゃんといけてたぞ。
…
ほら、ティッシュ。」
「ありがと
…
」
一方新幹線車内では武道が涙を流しながら、鼻を啜っている横で鶴蝶が世話を焼いていた。
あれほどカッコつけて子どもたちの前では泣かないようにしていた武道も、本当は足にしがみつかれて泣かれていた時点で少しウルっと来ていたらしい。
施設が見えなくなるまで手を振り続けて、施設が見えなくなった瞬間にこうしてドバっと涙を流しているもんだから、横浜に着く頃にはきっと瞼がパンパンになっているだろうと鶴蝶は思っていた。
あれほど子どもたちの前では泣かないようにと年長者の矜恃を出していた武道に成長したなぁと親目線でほろりと涙を流しそうな鶴蝶はなぜか心が晴れないような表情をしていた。
いくら武道が施設から出なければいけない決まりがあったと言えど、あれほど泣き喚いていた子どもたちから武道を取り上げてしまったような気がして鶴蝶はずっと気になっていたのだ。
鶴蝶は施設の職員であるから、見送る側の気持ちは痛いほどわかる。ずっと自分たちの手で手塩にかけて育てた子が段々と大きくなり、そして巣立ってゆく。
その姿を見られることは鶴蝶、施設の職員にとってはその過程を見られることこそが喜びなのだが、施設から出ていく子どもたちの姿はどうにも堪える。
巣立っていけばこれから一人で全部何とかしなくてはいけなくなる。大人になったら当然だけど、まだ高校生を卒業した何も知らない子どもが社会へと溶け込んでいけるのかいつも不安になるのだ。
いつでも帰ってきていいんだぞ。と武道が言われたように鶴蝶も、いつでも助けになれるように、そしていつまでもずっと家族だとでも言うように別れ際に伝えているが、ちゃんと子どもたちへ届いているのかはその子たち次第だと思っている。
だからこそ何とも言えない罪悪感に苛まれながら、移動販売していた職員の人から駅弁を買って食べていると、さっきまで鼻水を垂らしながら泣いていた武道がカクちゃん、変な顔だね。と口いっぱいに駅弁を頬張りながら言った。
「食べながら喋んな。行儀悪いだろ。」
「ごめんて。」
またオレを子ども扱いしたな
…
!という目で睨んでくる武道だったが、鶴蝶より一回り小さい武道なのだからそりゃあするだろ。という目で見つめ返すと、勝負に負けたのかはァ
…
とため息をこぼした。
「で、カクちゃんはどうしてそんな顔してるワケ?」
「
…
別に大した事じゃねェ。」
「いーや、違うね!」
そんな嘘をつく時のカクちゃんって目ェ泳ぐもん!オレは分かる!とずいっと顔を近づけてくるものだから、嘘をついていたことがバレたことと、嘘をつく時にそんなことをしていたのかと少し恥ずかしくなった。
そういえばイザナにも言われていた気がする。オマエは嘘が壊滅的に下手。まだガキの方が嘘つくのが上手いと。鶴蝶の目の前にいる武道も本当に昔から嘘が下手だよねェ、カクちゃん。と笑っている。
「そんなに嘘下手か?」
「多分、前世のオレより下手!」
「なんだよ、それ
…
ッ」
なんだか凄くバカにされてしまった気分になってしまった鶴蝶は、もきゅもきゅと食べる武道の頬を横に伸ばした。
武道が嘘をつくのが下手だったのは幼少期の時もそうだったし、関東事変が起こる前に出会った時もそれは変わらなかったのを覚えている。
武道は嘘をつく時、必ず視線を下にずらして頬を掻く。本当に嘘をつくのが下手な人がやる典型的な例をしているのだ。
そんな武道に嘘をつくのが下手だといわれたら流石の鶴蝶も武道になにかしたくなる訳だ。まあ、それが頬を伸ばすことであるが。
なんだかそんなほわほわしている武道に毒気を抜かれてしまった鶴蝶は、このもやもやとしていた感情を武道に話した。
施設から出ていかなければならない武道が、施設の子どもたちに行かないで。と言われていた武道を見て、なぜか子どもたちから取ってしまったような感覚になってしまってモヤモヤしてしまっていること。それを包み隠さず話した。
武道はうん、うん。と時折相槌をしてくれながら真剣な表情をする鶴蝶のことを聞いて、話し終わったとなるとプハッと笑い始めた。
…
いや、笑う要素がどこにあったんだよ
……
?と困惑する鶴蝶を他所に、武道はとんでもない事を言ったのだ。
「ははっ、そんな事で悩んでたの?」
思わず、武道の口から出てきた言葉には?と言ってしまった。鶴蝶にとっては大きな悩みであったのに、武道にそんな事で片付けられてしまったから呆気に取られてしまったのだ。まだポカンと口を開けている鶴蝶を見て笑いながら、武道はあの日のオレを思い出したら分かるんじゃないかな。と言った。
「カクちゃん。あの日、キミと出会ってなかったらもうあそこには帰らないつもりだったんだよ。」
あの日、横浜第七埠頭で関東事変が起こった二月二十二日に、偶然ながら目の前の彼と久しぶりに出会った時、武道はもう一人で生きていこうと頑なに決めていたことを改めて思い出した。
久々に会った時の武道の瞳には光すら映っていない濁った青色の瞳だったし、つついてしまったらシャボン玉のように、直ぐに消えてしまいそうなそんな儚さを持っていたのを憶えている。
鶴蝶が大好きだったヒーローという面影は消え、鶴蝶らと過ごした日々を過去と決め、過去に縋りつかないように。と埠頭に訪れたという武道。
これから先、とてつもなく長い人生を、こんなに広い世界に、たったひとりで生きようとしていた彼をどうしても一人にしたくなくて、どうにか彼の人生に一ミリでもいいから関わりたくて、必死に繋ぎ止めた。
武道は変なところで負けず嫌いだし、一度決めたら意志を曲げないことを知っていたから、彼を説得させるのは本当に骨が折れたけれど、それでも、鶴蝶が頑張ったおかげでこうして武道はひとりぼっちではなく、鶴蝶の隣にいるわけだ。
「ねぇ、カクちゃん。あの日、オレをみつけてくれてありがとう。あの日、キミと出会わなかったらこんなこと一生なかったよ。」
オレに帰る場所を作ってくれてありがとう。とにこやかに笑った武道に少しだけ、泣きそうになった鶴蝶。
もう歳だから涙腺が弱くなっているのかもしれないと言い訳を心の中で零しながら何とか涙を引っ込めた。おー。と出た言葉はちゃんと震えずに言えただろうか。
武道は目を細めて笑っている気がするから、鶴蝶が泣きそうになっている事には気づいていないはずだ。というか気づかないままでいて欲しい。
もう武道の瞳は濁ってなどおらず、鶴蝶のだいすきな海のように透き通った綺麗な青い瞳だ。あの日、武道の手を掴むことを辞めないで良かったと思う。どうにか彼をひとりにしたくなくて、必死に言葉を紡いで良かったと。
「
…
これからうんと幸せにしてやるからな、覚悟しとけよ?」
「はは、楽しみだなあ。」
まだ余裕そうに笑う武道に、鶴蝶は少しムキになってワシャワシャと彼の頭を強引に撫でた。
横浜に着いてしまったら、イザナがいるからとうんと武道を甘やかしてスキンシップを多めにする鶴蝶。
本当はずっと、イザナにも会わせずに武道をひとりじめをしておくつもりだった。自分だけをその青い瞳に映してほしくて、ずっとふたりっきりで居たくて、どこかへ逃避行でもしようという考えは少しあったのだ。
今世では佐野万次郎を筆頭とする東卍より、武道を主体として乾青宗と九井一という両翼がいた黒龍より、武道を始めに見つけたのは自分だったし、彼らが武道が生きているということを知らずにいるのに少しばかり優越感はあるのは確かだ。今回はオレが最初に見つけたのだから。
でも、いつかは見つかるだろうし、見つかったら仕方ないとは思っていたけれど、まさかこんなに早く見つかるなど思っていなかったので、武道をひとりじめすることがあまり出来なかったのだ。
「も〜!カクちゃん、苦しいってェ〜!」
嫌そうにしながらも鶴蝶の背に手を回してされるがままにされている武道を見ながら、鶴蝶は今だけしかできない武道ひとりじめを堪能している。
武道の冷たくなった体の感触がずっと残っていた鶴蝶の手には、今や武道の温もりを感じることが出来ている。
ああ、本当に幸せだ。と鶴蝶は唇を噛み締めながら一滴だけ涙を落とした。
武道と鶴蝶が刻刻と横浜へと近づいている中、イザナが住んでいるマンションにはひとりの女性がリビングへと招かれていた。
「んもう、ニィったらいつも急だよね!用があるならもうちょっと前々から言うべきだし!」
「
…
悪かったよ。こっちも急に決まったもんでな。」
「ニィだから許すけどさぁ
…
?」
イザナのことをニィと呼ぶのはこの世界でたったひとり、イザナの妹であるエマだ。エマは昨日、突然兄であるイザナからメッセージが来たと思えば、明日予定を開けといて欲しい。というメッセージが来て、驚愕と何故?という疑問を抱えて、横浜へと降り立ったのだ。
本当は運良く休みだった万次郎でも連れて、ショッピングモールへ行ってコスメや、服を見ようかなあ。なんて計画を立ててたのにぃ〜!と少しご立腹だったが、年に数回しか見ることの出来ない兄の突然の上目遣いに少したじろいだ彼女はゴホン、と次の話に移ろうとわざとらしく咳払いをし、イザナにで、用ってなんなの?と言った。
「
…
オマエに会わせたい奴がいる。」
「会わせたい人
…
?」
真剣に目の前の兄がそう語るものだから、エッなに!結婚相手とか!?とキャーッ!ニィもやったじゃん!と早とちりするエマにそんなんじゃねェよ。と付け加えた。
なら、どうしてイザナはわざわざエマを横浜に来させたのだろうか。もうイザナもいい歳だし、会わせたい人となると恋人か結婚相手とかそういう類だと思っていたのに、そんなのじゃないとは。
…
はっ、もしかして隠し子が居たんだろうか?とひとりで唸っているエマを他所に同居人が増えんだよ。と独り言のように零した。
「
…
同居人
……
?そんなウチに会わせるほどの?」
「
…
ああ。」
特にオマエにとっては恩人にあたる奴だからな。と紅茶を啜るイザナに、エマは一瞬ポカンとしたのち、ねぇ〜、もっと情報はないの?と兄の肩を揺するものの、来るまではお楽しみだとでも言うように頑なに口を開いてくれなかった。
「
…
も〜、待てばいいんでしょ〜待てば!」
ほんっとにウチのニィって横暴ッ〜!なんてエマは心の中で思いながら、目の前に出されているお菓子に手を出した。武道とエマが
邂逅を果たすまであと三十分。武道は何も知らないまま、横浜へと足を踏み入れようとしている。
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