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匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public
東リベ
辿り着きたいのは美しい終焉
今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。
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青さに目眩らむ
「そういえば、なんでオレって分かったんですか?」
「ア?」
少し落ち着きを取り戻した武道がイザナに問いかけた質問は、どうして電話越しなのに武道だと分かったのだろうということだった。
武道は彼らの目の前で息を引き取ったし、それをイザナも見ているはずだ。だけどあの時、イザナは迷わずオマエは花垣武道だと言い切った。死んだ人間が生き返るなど普通では考えないことだし、ましてや生まれ変わりなどあるはずがない。
まあ結局武道が生まれ変わっているのでないとは言い切れないが、あれほどに武道だと言いきったイザナの自信がどこから来ているのか武道は純粋に気になったのだ。
武道に質問されたイザナはフッと笑いながら、そりゃぁ、オレが唯一負けた相手だからなァ。と言った。
「
…
ン?いま、なんて?」
「オレが、唯一負けた相手。」
「な、ナンデェ!?」
キミが負けたのはマイキーくんでしょ!と武道が言うと咄嗟にマイキーになんか負けてねェよ。とイザナが言い返した。
…
なんだ、そんな所は変わってないのかと生暖かい目で見る武道に、視線がうるせェ。と武道の頭を鷲掴みした。
「イダダダ!」
「キメェ視線寄越すテメェが悪い。」
「スンマセン!!頭が割れます!!」
ギチギチと聞いたことがない音が頭で響く音がしたので恐怖を感じた武道は、離して貰えたと同時に鶴蝶の後ろへと逃げ込んだ。
カクちゃあん
…
と情けない声を出しながら抱きつく武道と、それに応える鶴蝶を見て、イザナははァとため息をこぼしながら喋り始める。
「テメェはあの絶望的な状況のとき、一人だけ諦めてなかったろ。」
イザナが指すあのときとは関東事変のことだろう。あのときは何だってできた。彼女が死ぬ未来を忌避するためならなんだってできたのだ。痛いのも、苦しいのも、辛いのもぜんぶ、ぜんぶ。関東事変のときも、傷だらけで身体中があちこち痛くてイザナに、鶴蝶に、天竺の下っ端に蹴られ殴られていた時も言うまでもなく身体が痛くて痛くて死ぬんじゃないかというぐらいだった。
「東卍はゼッテェ負けねェ!!」
武道だってあのとき、痛くて苦しくて辛くてもうこんなこと辞めてしまおうかなんて思っていた。身体中が悲鳴をあげていたし、殴られ続けていたから目が霞んで焦点もあっていないぐらいだった。
それでも、簡単には諦められなかった。武道の脳裏には、彼が救いとることの出来なかった彼らの姿が目に焼き付いているからだ。
何度も悲惨な未来を見てきた。その度にタイムリープをしていい未来にしようと思っていた自分の意思はどうなるというのだ!今まで死に物狂いで頑張ってきた自分の頑張りをこんな所で捨ててもいいのか!と違う世界線の武道たちが叫んでいたから。
ヒナに幸せな平凡な日々を送って貰うために、佐野万次郎を筆頭とする東卍のメンバーたちが闇へと堕ちないようにする為に。
あのとき、そう叫んだのはボロボロになっている仲間への激励も兼ねて自分の意思が砕け散らないようにする為だった。殴られようが蹴られようが立ち上がれ!オマエが未来を変えねェでどうする!と自分を叱責する為に。
「あの時は気力だけで成り立ってたっていうか
…
なんていうか
…
まぁ、気合いっスね!オレは弱いからただああすることしかできなかったですから。」
万次郎やイザナのようなカリスマ性もなければ、腕っぷしもない武道があの場で出来ることはただ来るか分からない総長と副総長が来ると信じて待つのみだった。殴られようが蹴られようが決して折れることなく立ち上がるのみ。
ずっとそれが自分がやってきた事だったから。殴られて身体中が痛くても、もう視界がぼやけていても、ゾンビのように相手より長く立ち上がることが相手に恐怖を与え、仲間には勇気と団結力を生むということを武道は知っていたからだ。
「気力だけでもあんなに踏ん張れねェよ普通は。」
「へへ、そうッスか。」
「
…
褒めてねェわ。あのとき、ずっとオレは天竺が勝つと信じてやまなかった。言わずもがな他の連中もな。」
でも、たった一人の男が簡単に形勢をひっくり返したんだ。それがオマエ、オレが唯一負けた相手、花垣武道だ。
アメジストを嵌め込んだかのような瞳が武道の青い瞳とかち合った。武道はその発言にただ驚いているだけだった。
「そんなことは無いですよ、あれはマイキーくんとドラケンくんが奇跡的に来てくれたから勝てたわけであって
…
。」
「確かにマイキーとドラケンが来てから形勢は一気にひっくり返った。
…
でもずっと劣勢だった東卍を支え続けていたのはテメェじゃねェか。」
オマエがいなきゃ東卍は負けてたし、オレたち天竺が勝ってたんだ。オマエが居たから東卍は勝って、天竺は負けたんだよ。
あの日、天竺が勝つと信じてやまなかった日。オレは、我らが天竺はたった一人の男に勝ち逃げされたんだよ。それがオレは許せなかった。我らが天竺にたった一人で勝ったくせに、勝ち逃げするなんて。
カツ、カツとイザナの履いている革靴の音が地面に響く。いつの間にか鶴蝶の後ろに隠れていた武道を、イザナは自身の方へと引き寄せた。
「だから、待ってた。オマエがオレの目の前に現れる日を。ずっと、ずっと。」
イザナの手が武道の頬に触れた。イザナのアメジストのような紫色の瞳と、武道の海のような青色の瞳の視線が重なり合う。
武道はその場から一歩も動けなかった。まるでイザナに魅入られたかのように。
「関東事変はオマエの一人勝ちだ、武道。テメェが全部何もかもかっさらっていったんだ。勝利も、オレの心も、鶴蝶の心も、ぜんぶ、ぜんぶオマエがあの時からずっと。」
だから。とイザナは言葉を続けながら、武道の唇に人差し指を当てた。そして、息を吸うと同時にこう言い放つ。
「オレたちの世界を書き換えた責任を取ってもらわねェとな。」
なァ、下僕。とニタリといまから悪戯する子どものような顔で鶴蝶の顔を見たイザナはまた武道の方に視線をやった。
武道は、そんなもの盗んだ覚えがないとでもいうように口を少し開けて固まっているだけだった。
「せ、きにんとは
…
?」
「
…
そのまんまじゃねェか。責任だよ、責任。」
あの日、テメェの青い瞳を見てからなにをみても綺麗とか思わなくなっちまったンだよ。
オマエは死んだ。だからもう綺麗なんて言う言葉を使う機会も失ったと思ってた。でも、また目の前にオマエが現れた。モノクロだった世界が急に色付いたンだよ。
「だから、責任取ってオレの傍に置いてやろうと思って。」
「
…
いや、どんな暴論!?」
そう言い退けるイザナに思わず武道はつっこむしかなかった。つっこまれると思ってなかったイザナはあからさまに不機嫌そうなオーラを出している。
「うるせェ下僕二号だなァ、下僕は王に従う決まりなの知らねェのか?」
「下僕になった覚えなんてありません〜ッ!それにオレ、東京に進学ですし!イザナくんの隣にずっと居れるわけじゃないっスもん!」
「進学先は?」
「
…
○✕大学っスけど
…
。」
「なら、ちょうどいいぞ武道!」
パチンと手を叩いて武道の名前を呼んだのはイザナではなくずっとさっきまで静観を貫いていた鶴蝶だった。
「○✕大学ならオレたちの住んでる家の最寄り駅から行けばすぐじゃなかったか?」
「そうだな。」
「えっ、なんでそんなにお互いの家の事詳しい
…
?」
あ、でも王と下僕っていう関係性だからお互いの家なんて知ってて当然か!位置情報も共有してるんだしな〜!と斜め上の考えをしてどうにか自分を納得させようと首を振っている武道を見たふたりは、互いの顔を見ながらニタァと武道の顔を見つめた。
イザナと鶴蝶、ふたりに見つめられている武道はな、なんッ、と少し慌て出す。
「な、なんでそんなにオレのこと見てンの
…
?」
「
…
まあ、なんというか、なァ、鶴蝶?」
「
…
はは、武道。いい報告がある。」
ニタァと笑うふたりには悪いが絶対悪い報告しかねェだろと武道は思ったが、ふたりに伝える勇気など無に等しかったので自分の胸の中に留めることにして鶴蝶が言葉を発するのを待った。
「いい、報告って
…
?」
「喜べ、武道。オレと鶴蝶と一緒に住む権利を与えてやる。」
「な、な
…
!?なんでそんな話がぶっとんでるンですか!?てかなんで一緒!?」
話がぶっ飛びすぎてさっきからいやいや!としか発していない武道。一緒に暮らすとは?なんでそうなった?と武道の脳内はそればかりだった。そんな武道をイザナは当然だろとでも言うように続ける。
「は?決定事項だろうが。今の文脈で分かるだろ、オレたちは一緒に住んでるンだよ。」
「ェ
…
!?エ!いつ決定事項になったんスか!」
「今だろーが。」
「ナンデェ!?」
困惑している武道を宥めながら鶴蝶は武道がふたりの家に来ることで利点となる所を上げてくれた。イザナと鶴蝶の家に住めば家賃が浮くだとか、家事もある程度はするから心配しなくていいだとか色々な事を鶴蝶に言われた。
確かに武道がひとり暮らしをするにあたっていちばん痛手なのは家の事だった。進学するために上京するとなれば住む家がいる。
だけどまあ首都圏となれば家賃相場は上がるわけで、武道のいる施設らへんは田舎だからワンルームでも安いところで二万円さえあれば借りれたりする所もあったりしたが、そんな安いところなど東京にはなく、ワンルームでも大体五万円は軽く超える所がほとんどだった。
このひとり旅が終わったら東京へ自分の住む家を探しに行こうと思っていた武道にとって家賃が浮くという提案は本当に喜ばしいことだった。毎月少なくとも五万円の出費が無くなるとなれば奨学金返済にも余裕が出るし、自分の好きなことにも使える。一石二鳥だ。
「で、でもそれってふたりの邪魔になりません?」
互いが互いを信頼しあっているふたりの間に武道が入って邪魔にならないのだろうかと武道は率直にも思ってしまったのだ。、思ったことをそのまま述べる武道に鶴蝶は苦笑いをし、イザナははァとため息を吐いた。
「え、何か変なことでも言いました
…
?」
「ンっとに鈍感すぎンだろ、コイツ。おい、鶴蝶、コイツにも分かるように説明しろ。」
「なんかバカにしてません!?」
「分かってねェオマエが悪い。」
「はは、武道は本当に鈍感だよなァ。」
「
…
カクちゃんまで!なんだよそれ!」
「まあそんな怒んなって。武道、オレらが言いたいのはさ。オマエと一緒に住みたいってことだ。簡単に言えばな。」
「エッ、なんで?」
そこまで言っても分からないのか。とでも言うような顔になったイザナが、ズンズンと武道の所まで歩いていき武道の顔を至近距離で覗き込んだ。
「そんなの、テメェを離したくねェからに決まってンだろ。それ以外に理由なんてあるかよ。」
「ピ
…
ェ
……
」
また恐竜語でも喋ってんのか。と笑うイザナに対して、武道の心臓はバックバクに鳴っていた。たぶん今、心拍数を測れるのなら心拍数でビートは刻めるぐらいにはなっている。
ドックンドックンと鳴る自分の心臓を落ち着かせようとしていると、鶴蝶の大きな手が武道の頭を撫でた。
「武道はなんにも心配しなくていい。体ひとつできてくれても十分だ。何でも揃えてやれる金はあるし。」
「イヤイヤ!それは悪いよ。オレの事だし。」
「
…
武道。もうオマエはひとりぼっちじゃないんだぞ?もっとオレに頼ったってくれていんだよ。オレは、頼られる方が嬉しいし。」
その言葉を聞いた途端、武道の脳内には夢に出てきた施設長との最後のやり取りの場面の彼女が言った言葉を今思い出した。
「
…
そうね、キミはもうここから出ていかなくちゃならない。けど、武道くん。キミはもう少し人を頼ってもいいと思う。ひとりで生きていくにしても、他人に頼ることもあってもいいと思うわ。なんでもこなせる武道くんには必要のないことかもしれないけれど
…
」
案外、頼られた方も嬉しいのよ。と笑う施設長の顔が武道の脳内に浮かんでいた。ずっとひとりぼっちだった武道は、頼るということを忘れてしまっていたのだ。
それは、ひとりで生きていくために武道が全部出来るようにならないとと踏ん張っていたからだ。
勉強や家事にしろ自分が後で困らないようにとできるようになるまで一人で頑張ったりしていたから人に頼るという概念が抜け落ちていたのだろうと思う。
彼女からそう言われた時はどうせこれからずっとひとりなのに、そんな機会など無いだろうとすら思っていたのに、いざこうして鶴蝶に言われてしまうとなんともむず痒い気持ちになってしまう。
頼りたい気持ちはあるけれど武道には人に頼るということをしなかったからどうやって頼るのかが分からない。たすけてというのも何となく違う気がするし、お願い。というのも違う気がする。ならば、どういえば頼ったというふうになるんだろうと武道が考えていると、武道。と呼ぶ声が聞こえた。
「なに、イザナくん。」
武道を呼んだのは鶴蝶ではなくイザナで、アメジストを嵌め込んだかのような双眸が武道を見つめた。
「
…
武道、オレたちのために一緒に住んでくれないか。オマエはなんにも考えなくていいから。だから、一緒に住め。」
たぶん、武道が頼り方を分からないと思ったのかそう問いかけるイザナに武道は少し驚いた。
選択肢があるように見せかけて最後は命令してるけれど、武道が断りにくくするようにこうしているのだろうと思う。武道はなにか頼み事をされると断れない性分なのを見越してイザナがそう言っているのなら末恐ろしいが。
「そう言われたら断れないでしょ
…
。でも本当にいいんですか、オレがいても。」
最後の確認だとでもいうように念押しする武道にイザナは本当に鈍感だなァ〜テメェは〜!と武道のほっぺをつまみながら呆れていた。鶴蝶はそれを見て笑うだけだ。
「カクちゃあん〜笑ってないでたすけてェ〜!」
「
…
さっきのは武道が悪い。」
「カクちゃんの薄情者〜ッ!」
社長室に武道の叫び声が響き渡る。三人で過ごす日々はまだ最初のページが開かれたばかりだ。武道の華やかなキャンパスライフはまだ始まってすらないが、きっと楽しい生活が送れるは確かなのだろう。多分。
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