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匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public
東リベ
辿り着きたいのは美しい終焉
今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。
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カレイドスコープのまぼろし
「エマ、これやる。」
「ニィ、これなに?」
「万華鏡。」
まだ兄であるイザナと一緒に住んでいた時、イザナから誕生日プレゼントととして万華鏡を買ってもらったことがある。
周りは人形だったり、ぬいぐるみをもっていた子たちが多かったけれど、エマにはそんなものを与えられたことがなかった。
羨ましいと思いながらも、自分がそれを手にすることは無いだろうとどこかで諦めていたのだ。
それは、母親がそこにお金を割くような人じゃないと分かっていたから。
そんなエマにとって、イザナからプレゼントされた万華鏡は大切な遊び道具だった。
丸い筒を回しながらカシャンと音を立てる万華鏡。小さな穴を片目を細めて見ると、キラキラと輝いて綺麗だったことを憶えている。一度手を回して見れば、もう同じ柄の景色を見れることは無いだろうと言われている万華鏡。
この柄が綺麗だから取っておこうと万華鏡を置いておいた時もあったけれど、次の日にはそんなことを忘れており、クルクルとまた色んな景色を楽しんで遊んでいた。そんなイザナからもらった万華鏡は、今もずっと大切にエマの部屋の机の上に飾られている。
「
…
あ、これ、懐かしいね、万華鏡じゃん。」
「
…
ああ。」
「
…
ニィそんな柄じゃないじゃん、どうしたの万華鏡なんて。」
「
…
昨日施設のガキと一緒に作ったヤツだ。」
エマが目の前に出されているお菓子に手を出しながら、イザナと近況報告のようなものをしていると、イザナのそばに置かれていた小さな筒のような物が目に入った。
どうやらそれは、イザナが昨日施設の子どもと一緒に作った万華鏡らしい。
イザナの隣にあった万華鏡を取って、幼い頃のように小さな筒から片目を細めて覗いてみるとあの時と変わらない綺麗な景色が拡がっている。カシャン、と音を立てて、回す度ににもう二度と出会うことの無い柄が消えて違う柄へと移り変わってゆく。
柄にもなく万華鏡に夢中になっていると、玄関の方からガチャッという音が聞こえた。
玄関の方から鶴蝶の声と、もう一人の男の声が聞こえる。
「来たな。」
「
…
ウチに会わせたい人?」
「ああ。」
まあ、見たらわかる。と告げ、何も言わなくなったイザナにエマはため息を吐いてリビングのドアが開くのを待った。ドタドタとこちらに進んでくる音が聞こえる。
足音が近づいてくるたびに、エマの心音がドクドクと音を立てる。妙な緊張感が伝わるリビングのドアノブがガチャリ。と音を立てて開く。
最初にドアから見えたのは鶴蝶で、その背に隠れたもうひとりの青年らしき子がエマの目に映った瞬間、エマは呼吸の仕方を忘れそうになった。
エマの目の前に現れたのは、彼女が片時も忘れることの出来なかった花垣武道に似ていたからだ。目の前にいる青年を見つめながら、エマの脳内には武道との思い出が蘇っていく。
「マイキーくん!」
「あ〜!タケミッちじゃ〜ん!」
「よお、タケミッち。」
「ドラケンくんもチーッス!」
いつも兄である万次郎や、彼女が好いていた龍宮寺の隣に居た花垣武道という男である。タケミッちという愛称で万次郎をはじめ周りからそう呼ばれていた影響もあってかエマもその愛称で武道のことを呼んでいた。
万次郎や龍宮寺のようには喧嘩も強くないけれど、芯の強さだけは人一倍強くてどんな絶望的な状況でも諦めない心を持っていた男の子というのがエマが武道に抱いていた感想だった。
エマが武道と言ったら思い出すのは、エマが好いていたドラケンのことを救ってくれた八三抗争の事もあるが、やはり武道が自分のことを救ってくれた関東事変の日のことである。
「
…
エマちゃんッ、危ない
…
ッ!」
「きゃっ
…
ッ!」
ドン!と武道がエマを押すとその間をバイクが通り過ぎていく。バイクの後ろに乗っていたひとりがエマを目掛けて金属バットを振り下ろした。
「
…
ッ!」
ドンッという鈍い衝撃音がエマと武道を襲う。振りかざさされた金属バットの重みに武道は耐えられず、エマをなんとか抱きしめるように咄嗟に守ったが、後ろのコンクリートブロックに頭を打ち付けてしまい、そこからエマの意識は朧げだった。
武道が必死にエマの声と、バイクを振りかざした相手に向かって叫んでいたことを朧気な意識の中で聞こえていた。
目を覚ました時はもう白い天井が見えて、一生懸命エマの手を握っていた龍宮寺と、万次郎がいた事を憶えている。そこから泥のようにまた眠ってしまい、次にエマが目を覚ました時には何もかもが終わっていた頃だった。
エマが武道の訃報を知ったのは関東事変があった五日後のことでエマが目を覚ますと、そこは知らない天井で目を開けると直ぐに規則的に落ちている点滴のようなものとピッ、ピッ、となり続ける機械の音が聞こえる。
(あれ、ウチなにしてんだろ
…
?)
目を覚まして状況を確認しようとしても声がすぐには出ないし、起き上がるにも一苦労だった。
なんとか体を起き上がらせてみると、自分が今いるここは病院だということがわかった。白い天井に、自分の腕から刺されている点滴と頭に巻かれている包帯、そして自分が生きている証を示すかのようにピッ、ピッと規則的に鳴り続ける機械の音からエマが導き出した答えだ。
当たりを見渡すと、備え付けの机に付箋貼られていて、もし一人でお目覚めになりましたら、後ろのナースコールボタンを押してください。という文字が書かれていた。
なんとか力を振り絞って震える手でナースコールを押すと、ナースと医者の方がバタバタとこちらに駆けてきた。最初に記憶喪失が無いのかという確認のように氏名と倒れた場所の確認を丁寧に行われて、最後に自分の置かれている状況について説明を受けた。
どうやらエマはコンクリートブロックに頭を打ち付けてしまい、脳震盪を起こして病院に送られたらしかった。
「これで説明は以上になります。」
退院は明後日になりますので、御家族の方々にご連絡させて頂きますね。と医者たちが去っていく。五日も眠っていたため、一日ほど様子を見てから退院をするらしい。
医者たちが去った後、エマはいままでの状況を纏める為に一生懸命自分の頭のなかの記憶を思い起こした。
あの時一緒に居たのはタケミッちと少し遠くにはマイキーとケンちゃんが居たし
…
救急車を呼んでくれたのはその中の誰かで
…
確か、最後に自分が見た日付は二月二十二日だったから
…
今が二十七日だからもう五日も眠ってたんだ!みんなに心配かけたよね、みんな無事なのかなあ。なんて考えながら状況を整理してゆく。
そんなことを考えながらゆっくりしていると、数十分経てばバタバタとした足取りがこちらに近づいてくるのがわかった。ナースの人から「そこ!走らない!」と怒られているけれど、そんなのを気にしないのかまだ走っているみたいだ。
「エマ!」
バーン!音を立ててと開かれたドアから兄である万次郎と、そしてドラケンたちがエマの姿を見るなり泣き始める。二人の泣いている姿を見て、エマはギョッとしつつも声が本調子でないから頭を撫でることしか出来ない。
エマに縋り付くように無事でよかったと二人は口を揃えて言い、改めて二人のことを瞳に映すと彼らの目の下にはくっきりとした隈があった。
心配かけちゃったな。なんて思いながら頭を撫でるのを続けていると、その手を止めた万次郎がエマ。と震えた声で彼女の名前を呼ぶ。万次郎の瞳は、ヘドロに汚染された海のように真っ黒に濁ってしまって一切光を映さない色になっていた。
「
…
な、に?」
掠れた声で彼が言葉を紡ぐのを待つ。万次郎から紡がれた言葉は、エマも予想だにしない言葉だった。
「タ、タケミッちがッ、死んだ。」
一瞬、この世界の時計の針が止まったかのような雰囲気が病室に伝った。万次郎と龍宮寺はそれから下を向いたまま言葉を発しないし、エマもエマで未だに状況が受け止めきれていないのか万次郎から紡がれた言葉を反芻している最中だ。
やっと、万次郎の言葉を理解出来た時にはもうポタポタと瞳から溢れる涙を止められないでいた。
「
…
ウソ、だよね?ウソって言って、おねがい、ッ、」
「
…
嘘じゃない。本当のことなんだ、」
オレたちだって嘘であって欲しいと何度も思ったよ
…
ッ!と血が滲み出るほど握る拳を見てしまい、嘘でいて欲しいと願っていても万次郎と龍宮寺たちの悲痛な顔が全てを物語っており、エマは残酷な現実を突きつけられた。
エマが最後にみた武道の姿はエマちゃん!と必死に声を掛けてくれていた姿だった。
万次郎から武道はエマの兄であるイザナと、そのイザナを王と崇めている鶴蝶を庇って死んだのだと聞かされ、エマはベットの中で蹲った。自分の兄が助かってよかったという安堵感と、自分と兄を救った命の恩人である武道が死んでしまったことによるショックでどうにかなりそうだったから。
「なんで、っ
……
タケミッちが死ななきゃ、いけないのッ
……
!」
誰にも聞こえないように小さく呟いた言葉はエマの啜り泣く声と共に空気に溶けて消えていった。
(こんなこと、ないでしょ
…
。)
エマはありえない。とさっきまで夢中になっていた万華鏡を握りしめながら目の前の男を見つめている。
クルクルと回せばもう同じ柄が出ることがない万華鏡のように、一度死んだ人間が生き返ってくるなんてエマは思っていなかった。
というか、人間が生き返るなどという戯言など今まで生きてきた中で一度も考えたことなどなかったし、そんなことを考えるなど馬鹿馬鹿しいからだ。死んだ人間が生き返るのはフィクションだと。
それこそエマはイザナや鶴蝶のように武道の死に際にも武道の葬式にも出られなかったが、武道が死んだという事実は変わりようのない事だと思っていたのだ。
武道が死んでからの万次郎は、一時期見るに堪えないほどの落ち込みようをしていたのを間近で見ていたからだ。
まるで生気がなく、生きることを放棄しているかのように食べることも寝ることも拒否していたあの姿を誰よりも近くでエマは見ていたから。
結局、万次郎は「オマエがこんなところで死んだらタケミッちが思い浮かばれねェだろ!オレらはアイツが掴んでくれた未来を見る使命があるだろ!」と龍宮寺に胸ぐらを掴まれたおかげで何とか生きている。
まあ、関東事変が起きた前後はだんだんと元気がなくなっていくのだが。
いつもそんな万次郎の姿を見る度に、どうしてタケミッちが死ななきゃいけなかったんだろう。とエマは思っていた。
武道が鶴蝶とイザナを庇って居なかったら、もしかしたらふたりが死んでいたのかもしれないし、どちらかが命を落としていたのかもしれない。
もし、あの時武道が死んでなかったらと考えるなどいまさらだが、誰かが死ぬかなどその瞬間にならないと分からないし、人はいつか死ぬなんて分かりきっていることだけれど、それでもあんな死に方はあんまりだと思うのだ。
彼にはいっとう綺麗な恋人がいて、お揃いのネックレスを首に付けていてもうそれはお似合いだった。
エマはこの二人が生涯ずっと一緒にいるんだろうなという確信すらあったし、あのふたりのことを運命と言うんだろうなとすら思っていた。
だけど、そんな運命はあの日に崩れ落ちてしまい今、彼女の隣にいるのは武道ではない誰かだ。それも風の噂で知った。あの日から彼女とはもう関わっていないから。
(そっくり
…
というかホンモノ、じゃん、)
今、鶴蝶と共にリビングのドアから入ってきた青年は、そんな死んだ武道によく似ている
…
というか瓜二つだったのだ。
目の前にいる青年は黒髪だけれど特徴的な癖っ毛をしているし、エマが武道だと感じる一番の理由は目の前にいる彼が、武道と同じ青い瞳を持っていたことだった。
「幻
…
?」
驚きのあまり、ボソッと思ったことを口にしてしまうとエマの隣に座っていたイザナが、幻なんかじゃねェよ、ホンモノだ。と告げた。
エマに穴が空くほど見つめられている武道は彼女が目の前にいることに対して軽くパニックに陥っている。
爆弾発言を落とした張本人のイザナは我関せずを貫き通すのかエマと武道の二人を交互に見つめながら紅茶を飲んでいるし、鶴蝶に関しては眉間にシワができていた。
この状況から見るに、武道とエマを邂逅させることを鶴蝶は知らなかったと武道は推測した。
この騒動?に巻き込まれてしまっている武道は、心の中でイザナにアンタが始めた物語なんだから何とかしろよ!とイザナに目線を送っているものの、イザナはフンっと鼻で笑いながら助けてくれやしなかった。
「タ、タケミッち
…
なの?」
震える声でエマが武道の顔を見て言う。武道は観念したとでもいうように。そうだよ。と答えた。
「エマちゃん、久しぶり。綺麗になっ
…
ゥッ!」
まるで数年ぶりに会ったかのように接する武道にエマはタックルのようなハグをかました。ぎゅううと抱きしめる力に武道はぐえ
…
と声を出しながら背中に手を回す。エマの抱擁を武道が辞めさせないのは啜り泣く声が聞こえているからだ。
「イザナ、オレには伝えるべきだろ。」
「テメェは嘘が下手だからエマと会うって言ったら余計な世話するだろーが。」
エマと武道が抱擁を交わしている後ろで、鶴蝶は少しぶすくれながらイザナに言い放ったが、ごもっともなイザナの発言に鶴蝶は黙るしか無かった。だってさっきの新幹線の中で武道にも嘘が下手と言われた後だったのではァ。とため息を吐きながら武道の荷物を彼の部屋に移動させに行ってしまった。
鶴蝶が去ったリビングには未だにエマに抱きしめられている武道のふたりと、それをただ見つめているイザナが居る。
「エ、エマさん、そろそろ
…
はなして、もらっても
…
?」
かれこれ数分この状況にいるのにエマは武道のことを離す気配は微塵にないし、イザナもそれを面白そうに見つめているだけで助け舟を出してくれないことはわかった。
この場にいる鶴蝶も来てくれる気配は無いし、武道はガクッと肩を落とす。エマが武道を離したがらないのは幻だと言っていたから離したら消えてしまうんじゃないかと思っているんじゃなかろうか?と武道は斜め上の考えをしていた。
「エマちゃん、オレ離しても消えないよ
…
?」
遠慮しがちな声をエマに出してみると、そんなの分かってる!と返されてしまった。じゃあどうしろと。もう八方塞がりである。
最後の助けだとでも言うようにイザナの方に目線を向けるとはァ。とため息をこぼし、エマ。そこまでにしろ。と彼女を剥がしてくれた。
武道はホッと胸を撫で下ろす。というかため息付きたいのはここまで何も知らさずに来て巻き込まれているオレ自身なんだけどなあ。と武道は思っているがそれをイザナに言う勇気は微塵もない。
「
…
ニィ、いつからタケミッちのこと知ってたの?」
「オレもつい最近だ、鶴蝶が見つけてきたンだよ。」
「ハハハ
…
」
見つけたきたというか偶然にも出会っただけだし、イザナに関しては突撃してきたに近いのだが。そんな事実を隠しながら武道は乾いた笑いを零した。
「
…
タケミッちのことマイキーには?」
「まだ伝えねェ。今回はオレたちが最初に見つけたンだからな。愚弟には最後に会わせる。」
「
…
それ、あとになって面倒くさくなるやつじゃないの?」
「
…
だからオマエには共犯者になってもらおうとおもってな?」
「
…
なにそれ!ニィの横暴!バカ!」
この会話は武道には聞こえていない為、武道目線からしたら睦まじい兄妹喧嘩だなあ。としか思われていない。そんな武道からの生暖かな目線を察知したイザナからはうぜェ。と言われてしまった。
「
…
ハハハ、いいじゃないすか、オレが救った人たちがこうやって幸せそうにしてンの。」
本当に幸せそうに笑った武道に、エマは尽かさず武道のことを抱きしめに行った。
「
…
ホンットにバカ!なんにも良くない!フツーは死んだら終わりなの!分かる!?」
「
…
わ、分かるっスけど
…
。」
エマのキレように武道は、あ。と思った。そういえばタイムリープ知ってンのこの仲に居ないな
…
?と。
武道はタイムリーパーだと知っているのは彼の最愛だった橘日向の弟である直人と武道の相棒だった千冬と、そして万次郎のごく一部の東卍メンツしか知らない情報だった。
武道が亡くなった時に万次郎や千冬、そして直人がタイムリープのことを公言してないのならばこの二人と別室にいる鶴蝶でさえもこの情報は知らないということになる。
幾度となくタイムリープをしてきたせいで仲間の死よりも自分の死の方が軽かったのは確かだ。それで救える命があったのならばそれでいいと思うのが武道だ。
だけど、それを良しとしていないのかエマは随分と怒り心頭で、武道がしまった。と思った瞬間にはもう遅かった。
「タケミッちはなんもわかってない!自分のこと軽く見すぎ!」
「は、はひ
…
」
「
…
自分が死んだから良かったなんて思わないで!あの日からずーっとアンタのことを忘れられないまま生きてる人もいるの!ウチだってそう!ずっと、なんでって
…
、」
エマから掴まれた肩の掴む力が少しばかり痛い。それほどエマの気持ちが痛いほど伝わってくる。
「
…
ごめん、さっきのはオレが悪かったね。でもね、エマちゃん。あの時キミと、イザナくんとカクちゃんを救えて本当に良かったって思うんだ。」
武道の肩を掴んでいるエマも、その後ろにいるイザナもただただ武道の言葉に耳を傾けている。タイムリープのことは今は言うべきでは無い。いつか、言わなければいけないことは分かっている。だけど言うにはまだ早すぎる。とタイムリープの言及を避けながら武道は言葉を紡いでゆく。
「
…
もしあの時に今戻ったとしても、オレは同じ選択をすると思う。キミたちを死なせることなんて出来ない。キミたちはオレにとって大切だから。」
「
…
ッ、そんなの、ウチらだって、タケミッちのこと大切なのと一緒、じゃん
…
ッ」
そんなこと知ってると言われても仕方のない事だけれど、武道にとって大切なのは事実だった。今言ったらまた怒られるだろうけど、命を差し出してでも救いたい相手だったのだ。
彼女の兄である万次郎にとって、そして龍宮寺にとってエマがどれだけ大切だったかなど、彼女のいなかった未来を見れば明白だったから。エマが居ればそんな未来が忌避できると思ったからしたまでのことだ。
まあ、稀咲が銃を持っているなど想定外だったしそこで自分が死んだのも予想外だったが。
「
…
ハハ、ありがとう。オレが死んだっていう過去は揺らぎないものだけどさ、今度はちゃんとキミたちの隣で生きるって約束するよ。」
肩を掴んでいたエマの手を下ろしてぎゅ、と握る武道。二人の手のひらを伝う体温は、ちゃんと二人がここに生きているという証だ。エマは武道が死んだ時、そばに居ることなど出来なかったし寝ていたから葬式すら出ることも出来なかったから、彼を最期に見たのは自分が倒れた時に一生懸命声を掛けてくれていた時だ。
次に彼を見た時にはもう彼は人の形なんて保っておらず、小さな壺に入っていたのを未だに憶えている。
もう、あんな姿で再会するのも嫌だし、万次郎たちの憔悴しきった姿など見たくは無い。もし今度、武道になにかあったとしたらきっと大半は立ち直れなくなってしまうのは目に見えている。
「
…
約束ッ!絶対だからね!」
エマが武道の前に小指をつき出すと、武道は自分の小指を絡めた。お馴染みのゆびきりげんまんという歌が二人によって紡がれる。
ゆびきった!と歌が終わったあとに、涙を零して笑うエマにタケミッち!と呼ばれ、顔を上げると満面の笑みで彼女に抱きしめられた。
「
…
おかえり、タケミッち!」
そんな彼女に対してただいま。と言い返してまたエマからの抱擁を受けていると、どこからが武道の頭の上に手刀が落ちた。
痛ってェ
…
と独りごちると、オレの妹泣かせた覚悟は出来てんだろうなァ、武道〜?とでも言うようにイザナの目線が突き刺さっている。
「
…
オラ、離れろ。もういいだろ。」
尽かさず武道とエマを離すイザナにエマはふふっと笑うだけだ。
「
…
ニィ、見苦しいよ?」
「フン、言ってろ。コイツは天竺 オレらのモンだからな。」
「ニィのものなら、ウチのものでもあると思うんだけどな〜?」
「勝手に言ってろ」
武道の頭上の上でエマとイザナの火花がバチバチとちりばめられている中、武道はイザナとエマの間に挟まれてイザナに手刀を落とされて未だに痛い頭を抑えていたのだった。
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