匣舟
2024-06-18 20:25:09
68641文字
Public 東リベ
 

辿り着きたいのは美しい終焉

今まで書いたものをまとめました!年内には完結させたいなあと思っています!
転生パロです。関東事変で🎴くんと🦋‪くんを庇っ
て、死んだら直ぐに転生した🎍くんの話です。一応キャラクターの死表現あります。そこだけ注意してください。
若干pixivに出しているのと加筆修正やタイトル変更をしたものです。まあ気にしないでください。


ひとりぼっちごっこ

「武道くんは、最後まであまり私たち、大人を頼ろうとしなかったねえ。」
 横浜へ一人旅行へ行く前日の日のことだった。この施設を出る前の本当に最後の面談の時、施設長の先生にそう言われた場面に武道は何故かいた。
 あれ、オレってイザナに出会ってどうしたんだっけ。そこからの記憶が全くないということは、多分気を失ったのだろう。
 イザナに喧嘩を売らなかったら、そもそも電話を取らなければあんなことにはならなかったのに。と武道は自分の行動に後悔した。
 でもきっと鶴蝶と関わるとなればいずれはばれる運命だったのかもしれない。と自分を納得させるようにした。
 あれ、こんな場面見たことあるぞ?という武道がこれは夢なのか!と考えるのにも時間は掛からなかった。
 優しい眼差しで武道のことを見つめる彼女にはずっと、武道のことがどう映って居たのだろうか。記憶を失う前の自分がどんな子だったのか武道はあまり覚えていない。なにせ前世の記憶のインパクトが強過ぎたからだ。
 あんな血腥い前世を五歳に見させるなど本当に神様はイジワルだと思うし、普通の子ならきっと記憶喪失するレベルの前世だと武道は思っている。
 あんな前世を生きた武道だからこそ、こうして何事もなくこうして生活を送れているのだ。そこら辺は神様に感謝して欲しいとすら思う。
 記憶を取り戻してから、武道は出来ることはなんでもやった。職員の人に手伝うことは無いかと聞いたり、小さい子の面倒を見たりなど。
 歳が上がれば上がるほど、自分で出来ることが増えていつしか身の回りの事は自分でできるようになった。
 勉強も、部活も、料理も、裁縫も。部活など完全におまけでしかないが、不良をしている間にはできないかったことなので自己満足をさせる為に全力で取り組んだりした。
 要は、前世の自分ができなかったことを取りこぼさないようにと全てしてきたのだ。全ては、一人で生きていく上で苦労をしないようにと。ちゃんと自分は楽しく生きてきたんだぞと証明できるようにと。
「いつか、結局ひとりで生きていかないといけないですから。」
 すらすらと自分の口から出た言葉は、かつて自分が施設長に向けて言った言葉と同じだった。
 そう、これは夢だからだ。この武道は鶴蝶と横浜で出会う前の自分。前世を捨てて、一人で生きようと必死だった時の武道。
 いつかなんて嘘だ。武道はずっと独りで生きる気だった。いつかと曖昧に付け加えたのはずっとお世話になってきた施設長の彼女を心配させないためだった。
“タケミっち、お前の手、あったかい。”
 武道には、自分の隣に誰かがいる未来など描けるはずが無かった。それは、かつて自分が不甲斐ないせいで死なせてしまった彼らに申し訳ないからだ。
 武道の手には、いつかフィリピンで抱いた万次郎の温もりが消えていくあの感触が残っている。
彼らには普通の家庭を築いて、幸せに生活してくれればそれで良かったのだ。でも、そんな未来を武道が不甲斐ないせいで壊してしまった。武道じゃない人がタイムリーパーだとしたらきっと救えた命はたくさんあっただろう。
 だけどあのとき、武道は苦しんでいた万次郎を救うことが出来なかった。そんな壊してしまった側の人間が、そんな幸せな生活を送るなどできないのだ。と。
 そんな武道の硬い意思表示に、施設長の彼女は相変わらず優しい眼差しを向けたままだった。
「そうね、君はもうここから出ていかなくちゃならない。けど、」
 武道に微笑んだ彼女が何か言葉を言いかけるところで子どもたちのはしゃぐような声が聞こえる。
 もしかして、もう夢から覚めてしまう合図なんだろうか。これが。と思った途端、目の前の視界がぼやける。あの時、施設長の彼女は自分に向けてなんて言ったんだっけ。
「武道くん。君はね……。」
 彼女の声が聞こえ始めたと思った時、武道は彼女から言われた言葉を思い出せないまま、夢の外へと放り出されてしまった。