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ツキシキ
2023-07-02 00:29:32
72006文字
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★刀剣乱舞・刀剣乱夢まとめ
7作品9振り。愛憎夢(刀さに)、死ネタ、ホラーなど。
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できない審神者と刀剣男士の鬱々とした朝 加州清光・妥協
女審神者(死にたがり、苛められっこ気質、痛々しい、口だけ、学習能力なし、無神経)。愛され嫌われより、蔑まれ要素が強め。出来の悪い上司みたいな奴が審神者になったら彼らはどう反応するのか、をコンセプトに短編連作の形式。
2Pのみ、刀剣男士は食事を日常的に必要としないという捏造設定を含みます。
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朝日が柔らかく降り注ぎ、歌う小鳥の声が耳に心地よく、時折吹く風も爽やかに。
歌仙兼定と違って、俺はそんなに風流だの雅だのには興味ないけど、春先の過ごしやすさは悪くない。庭に咲く桜が目について、たまには爪紅の色を変えてもいいかもな、と思いつく。
ふと縁側に目をやれば、主が俺と同じように桜の景観を眺めていた。どうやらこっちには気づいていないらしい。俺は桜から目を離して、主の方に歩み寄る。
一人で気を抜いているのか、彼女はほぅ、と息を漏らした。そして、ぼそっと呟く。
「あー
……………
死にたい
………
」
待って。
「朝から暗いこと言うのやめてキッツイ」
すかさず止めに入ってしまった。これだけ天気が良ければ主の気分も晴れるかと思ったらこの反応だ。ぐったりと肩を落とした。
主は俺の落胆を意に介さず、ぼそぼそと暗い調子で続ける。
「だってなんか、お日様らんらんしてると逆に私こんな暗くて良いのかなっていやむしろ良いわけないよねって思ってすごい自己嫌悪
……
お日様こわい
……
」
ああこれはいつもにも増して重症だ。
俺は呟き続ける彼女の横に腰掛けた。この人は目と目を合わせようとすると途端にキョドりだすので、なるべく視線を向けないよう、花咲き乱れる庭を眺めるふりをする。
「なら明るくなればいいじゃん。楽しいこと考えるとかさー」
なんだかなあ、と思いつつ、提案してみる。けど、彼女はすっかり鬱々と考え込んでしまった。
このモードに入った時の彼女は、言ってしまうとすごくウザい。暗い話に付き合い続けるとこっちも疲れるということを、俺は嫌と言うほど知っている。だいたいは周りの奴のせいだ。沖田くん沖田くんと嘆いてはすぐ気落ちするうざったいあいつや、写しだなんだと卑屈に呟くあいつ。よくもまああんなに毎日落ち込む理由が作れるもんだと思う。
そりゃ、まあ? 俺だって沖田くんのことは忘れられないし、山姥切国広の複雑な境遇には同情しなくもない。けどそれらは全部言ったってどうしようもないことだ。ならわざわざ口にして傷口を広げなくたっていいだろうに、その辺りわかっていない奴らには苛々させられる。
その点、主の方はまだ救いがある、と思う。たぶん。きっと。暗い方に思考がいきがちというところはどうしようもなく面倒だけど、天地がひっくり返っても治せない性質ってわけじゃない。だからきっといつかはなんとかなる。ただ、かなりの努力はいるはずだ。その辺りがしんどくって、こうしてどんよりし続けるんだと思う。
まあ、ぶっちゃけると、俺が主の人格改善とかに気を遣う必要は全くない。気が向かなければ見捨ててしまっても良いわけだ。でもやっぱり、身近で落ち込まれるのは鬱陶しい。一応今の主は彼女なわけであって、変えようがないのだから、ある程度折り合いをつけないといけない。そのためには、まあ多少は向こうにも頑張ってほしいなー、なんて。俺も時にはその手伝いができるよう、こうして気晴らしに声をかける。
と、俺もつられて考え込んでしまった。そうじゃなくて、何か楽しいこと、楽しいこと。俺が脳内で候補を挙げていると、横でまたぼそりと独りごとのような声がする。
「清光ってなんだかんだ根明だよね
…………
私はネクラだから仕方ない
……
」
ネアカ。性格が明るいこと。
え、俺ってそうだったの。驚いて、つい彼女をまじまじと見つめてしまう。目を逸らされた。ちょっとショック。
庭に向き直って、改めて自分の性格を考えてみる。正直、明るいって言うなら陸奥守吉行や山伏国広辺りの方がふさわしい。そもそもそんな明るい暗いなんて考えたこと無かったし、頭にあるのはせいぜい、ウジウジすんのはウザい、ってくらいだ。
けど、ここで安易に審神者の言葉を否定するのも良くない。俺明るくないってー、なんて言ってしまったら最後、なら自分はどうなる清光が明るくないなら自分はどん底の汚泥だと、そういう類の答えが返ってくるに決まっている。
だから俺は、なんとか彼女の思い込みを修正しようと、
「主が勝手に自分は暗いって決めつけてるだけじゃないのそれ。嫌なら変われば良いじゃん」
と言ってみた。
「それができるなら死にたがらない
…………
」
「えぇー
……
」
俺からすれば、できないことにしたいだけとしか思えないんだけど。
まあかといって、ここで人は変われる変われないの暗い討論をする気はない。ここは素直に折れることにしよう。
何か新しい話題を探そうとしたところで、ふと、朝餉のみそ汁の香りが漂ってきた。そろそろ頃合いだ。俺らは別に食事なんていらないけど、主は人間だからちゃんとご飯を食べないと生きていけないらしい。
「じゃあせめてご飯食べようご飯。多分燭台切が作ってるからさあ」
「
……
うん」
食事は人の楽しみの一つ、と言ったのは誰だったか。言った人は知らないのに、なんでか言葉だけは知っていた。ともかく、食べ物の話題を出せば主の思考は意外にも落ち着いてくれる。
主は素直にのそのそと立って、茶の間の方へ向かった。彼女の丸まった背中を見届けつつ、考える。
これはただお茶を濁しただけで、本当は何の解決にもなっていない。暗い話題になりかけたら話を誤魔化し始める俺は、本当の意味であの人を明るくすることはできないんだと思う。
(
…………
でもまあ、それは俺の仕事じゃないし)
あそこでもっと辛抱して説得すれば、もう少し彼女の中でも何かが変わるかもしれないと、予感をしておきながら。俺は結局自分本位に、万屋に桜色の爪紅は置いてあるのかな、なんてことを考え始めた。
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