Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
instant
Public
太公望と普賢
トリミング 望普編9
twitterなどに掲載していた極短編のまとめです。望普、伏普、原作軸、現パロなどいろいろ。
「普賢真人、実は崑崙十二仙になりました!」
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
【反魂香】
「きみもどうだい」
手渡されたのは小さな薬包だった。手のひらにそれを受け取ると、ふわりと甘い香りが立ちのぼった。香だよと太乙はいう。香を焚く趣味があったのかと訊けば「きみにも必要かなと思って」とわずかに目を細めた。
「よく眠れるそうだよ」
反魂香というらしい。太公望は手渡されたものをじっと見つめた。
その話を聞いたことがあった。煙の中に死んだ者の姿を浮かび上がらせる香。眠る前に焚けば夢で逢うことができる。ただ、
「そんなのは嘘だって言いたいんだろう? 知ってるよ」
うっとりした口ぶりで、太乙は手のひらに包んだものに頬を寄せた。伝説だというそれは雲中子が持ち込んだもので、はなっから信じてなどいなかったといった。
やはり、と太公望はため息をつき、薬包を卓に戻した。
「わしは使わぬよ」
「そうなんだ」
「そもそもそんな怪しげなものを試す気にはならん」
「なんだっていいんだ、私は。嘘でも幻でも」
誰にいうともなく、歌うように太乙は笑った。
「長く生きていると、こういう瞬間があるんだよ。若いきみにはわからないだろうけれど」
嘘でもなんでもいいから会いたい。夢でもいいから姿を見たい。一人の人生は退屈すぎて、大切な人の面影すら薄れていくことに耐えられない。
一瞬だけ目を閉じ、意を決して踵を返した。彼の誘いがどれほど魅力的か知っていた。夢でもいいから会いたいと、そう願いながら目覚めた朝が幾度あったことだろう。
「普賢に会ったら、言うことはあるかい?」
振り返った先で、太乙は新たな香に火をつけていた。甘く重い香りが白い煙とともに部屋に広がっていく。
息を止めた。吸い込めばきっと歩き出せない。ここで立ち止まるわけにはいかない。
「そこでおとなしくしておれ、と伝えてほしい」
「了解」
楽しげに太乙は言った。「きっと伝えておくよ」
眩暈がするほど甘い香りを扉の向こうに閉ざして、太公望は長い廊下を歩きだした。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内