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太公望と普賢
トリミング 望普編9
twitterなどに掲載していた極短編のまとめです。望普、伏普、原作軸、現パロなどいろいろ。
「普賢真人、実は崑崙十二仙になりました!」
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【日々の枷を響かせて】
動きに合わせて、シャラシャラ、チリチリと音が鳴る。身にまとった装束に縫い付けられた金属の飾りがぶつかり合う音だ。さながら陽の光のきらめく音のよう、というのが白鶴童子の感想だった。
「重い」
見るからに動きにくそうなそれに、普賢が思わずそうこぼした。太公望が「もう脱いでもよいのでは」と言ったが、少々くたびれた笑顔で「まだだよ」と横に振った。
「この後、元始天尊さまや他の十二仙の会食があるんだ。この恰好で来いと言われているから」
普賢真人が十二仙になった。
形式にのっとった式典が無事終わり、あとは内々で酒を酌み交わす習わしだった。それならこの恰好じゃなくてもよいのだが、あえて指定しているのは、おそらく誰もがまだこの晴れ姿を見ていたいからだろう。白鶴もどこかうっとりした口調で「とてもよくお似合いですよ」と太鼓判を押していた。
「それにしても望ちゃんが来てくれるとは思わなかった」
意外そうに普賢が瞬きをした。
「てっきり来ないかと思っていたよ」
シャラシャラと音を立てながら、普賢は用意された椅子に腰かけた。
「白鶴に連れてこられたのだ。わしが来たくて来たわけではないよ」
こほんと咳ばらいをしてごまかしたけれどが、普賢はくすくすと笑う。
チャラチャラ着飾ってとか、大げさだとか、なんだあの余裕の笑みはとか、そういうことをブツブツ言うのを「ご本人に伝えてはいけませんよ!」と釘を刺された。
「感慨深そうにご覧になっていました」という白鶴の言葉に「そうなんだ」とくすりと笑ったのは、きっと言外に隠したものを察したからだ。
「ああ、それにしても疲れた」
両腕で顔を覆って椅子にもたれかかるのを、太公望はしんと見つめた。
十二仙にまでなるだなんて、考えもしなかった。実力がないということではなく、地位とか権力とか、そういうものの対極にいると信じていたからだ。自分などよりずっと自由できままで、これからも時間の許す限り己の興味と関心を究めていくのだと疑わなかった。だからこうして式典を終えた今も、まだ信じられない心持ちでいるのだった。
「おぬし、どうして十二仙になった?」
いまさらながらそう訊ねると、うーんと唸ったあと「枷がほしかった、からかな」
「枷?」
師表としての重責を意味するのだと、太公望は思った。だが普賢は「勝手に飛んでいかないための錘だよ」と苦笑する。
「望ちゃんはそういうのがなくても迷わないだろうけど、僕は大きな看板でも背負っておかないと、好き勝手どこかへ行ってしまいそうで」
そういえば二人そろって下界へ行って、途中で普賢が行方不明になったのは一度や二度ではない。目についたもの、興味があるものについわれを忘れて引き寄せられるのは性分なのだろう。
「邪魔な看板など、いつでも捨ててきてよいぞ」
「もうそういうわけにはいかないからね」
もっともな顔で苦笑したけれど、案外普賢は、不要だと思えばそんなものはさっさと手放してしまうだろう、そんな気がする。きっと驚くほどかろやかに、重い装束を脱ぎ捨てて飛び立っていくにちがいない。
準備が整ったのだろう。戸口で新たな十二仙を呼ぶ声が聞こえた。目を見合わせて「行け」と促す。
「しゃーない。おぬしが重くて歩けぬときは、わしが片棒を担いでやる」
「頼りにしてるよ、望ちゃん」
シャラシャラと音を響かせて、普賢が立ち上がった。きっとこれが彼をこの世界につなぎとめている。陽の光のきらめきが、普賢の後を追った。
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