【#深淵覗きの断章】But It Is Not This Day

アレフ=レーシュ編、最終作。
夢を介して、『捨てられた地の大精霊の記憶』を見たガーベラとネモフィラ。
目覚めた彼らに、空の王国と星の子どもたちの運命を揺るがす試練が待ち受ける。

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※戦闘・流血描写を含みます。

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


 『声』の源を目指し、暗い荒野を両手両脚で掛け続けて1時間後。
 獣のガーベラは、捨てられた地の戦場跡から外れた所に位置する、真っ暗な大坑道の入口にたどり着いた。
「ここか……ランタンの代わりに『爪』を使おう」
 星の子の髪型や衣服や装備は星の子の持つ光によって形作られ、光が尽きれば“素体”だけの姿となる。同じ要領で、ガーベラは己の光で獣の姿と膂力を維持している。それ故、獣のガーベラのケープは黒ずんだ襤褸となり、背負う道具も使えなくなってしまう。
 ガーベラは両手の金色の爪を鎌のように伸ばし、炎を纏わせた。金炎の爪は、ランタンや松明よりも明るく輝き、ゴツゴツした岩肌と地面の錆びれたレールを照らし出す。
『たスけて』『ハやくキて』『たすケて』
 朧げな声に導かれるまま奥へ直進すると、崩落した岩石で塞がれた大扉が現れた。よじ登って確かめると、扉の上部は破損しており、星の子1人分通れそうな隙間が空いている。
「よかった、先へ進めそうだね」
 変身を解いたリトル・ガーベラは、ランタンを手にして隙間を潜り、その先の空間の床に飛び降りる。そして、照らし出された光景に目を見開いた。

 無数の石柱で支えられた、果ての見えない空間。
 書庫や秘宝の環礁の海中遺跡に似ているようで、全く異なるその場所には、大きな金色の花が幾百幾千も、整然と並べられている。
「違う、花じゃない。機械付きの大きな檻だ。鐘や風鈴に使われてるのと同じ金属で出来てる」
 近付いてよく見ると、それらは内側から破壊された金属製の檻であった。蕾の根元に当たる箇所は複雑怪奇な未知の機械が取り付けられ、檻の制御に使われた事が察せられた。
 そして、檻の中や檻の周りで蠢くのは、仄かに発光する、あまりにも歪で名状し難い生き物の群れ。
『アアアアア』『キタ』『やっときた』
 際限なく生えては溶ける橙色の眼を瞬かせ、薄灰色に光る不定形な身体をくねらせて、生き物たちはリトル・ガーベラににじり寄る。
『フシぎなヒ』『ダイセイレイさまとチガウ』『シロいホのオのケモノ』
 生き物たちは幾本もの触腕を伸ばし、ガーベラに触れようとする。その先端の形状は、どう見ても精霊の5本指の手と同じだ。

 瞬間、ガーベラの記憶の奥底で、『深淵覗き』の二つ名を得た日の光景が蘇る。
 捨てられた地の大精霊のそばで転がっていた、黒くて大きな怪物の亡骸。あれも、無数の腕と眼を備えてはいなかったか?
「そうだ、あの時勇者様が殺していたのは……きゃっ?!」
 突如背後に現れた殺気を悟り、リトル・ガーベラは獣のガーベラへ姿を変え、振り下ろされた赤く燃え盛る大槍を長い爪で受け止めた。
 そして、襲撃者の正体を知り、驚きの余り全身の毛を逆立てた。