【#深淵覗きの断章】But It Is Not This Day

アレフ=レーシュ編、最終作。
夢を介して、『捨てられた地の大精霊の記憶』を見たガーベラとネモフィラ。
目覚めた彼らに、空の王国と星の子どもたちの運命を揺るがす試練が待ち受ける。

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※戦闘・流血描写を含みます。

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


 念動力が解除され、リトル・ガーベラと大精霊たちは肩で息をしながら起き上がる。
 草原の大精霊の右手で抱えられたイジーは、恐怖のあまり丸まって、無言で震えていた。
「大賢者様、ヤバい」
「あの気迫、『最初の叛乱戦争』の時よりコワすぎだって!」
 双子の大精霊も、当時の忌まわしき記憶を思い出して、すっかり震えあがっている。
 雨林の大精霊は双子を睨み、「今は怯えている場合ではなかろう」と呆れ気味に言い放つが、王の復活を渇望する『宰相殿』の、どろりとした感情の発露を目の当たりにして、密かな恐怖を覚えた。
 それを察知して、草原の大精霊は雨林の大精霊に寄り添い、華奢な肩に大きな左手を置く。「僕が傍にいるよ」という思いが伝わったのか、振り返った雨林の大精霊の眼光が幾らか和らいだ。

「ゴホッ、ゴホッ……
 その一方で、孤島の大精霊は咳き込みながら杖をつき、捨てられた地の大精霊とリトル・ガーベラに介抱されていた。
「ふー、幾らか楽になったわい。しかしラメドの奴め、ネモフィラを傷付ける事を厭わず、無理やり攫うとはのう」
「イジーの記憶映像を見た時から、すごく嫌な予感はしてたわ」ガーベラは溜息をつく。
「でも、あの執着ぶりは想像以上でぞっとする。早く大賢者様とネモを探し出さなくちゃ! でも、二人は一体何処へ……
「思い当たる場所はひとつしかない」捨てられた地の大精霊が答えた。
「書庫の地下にある、秘密の宝物庫だ。そこには、かつて陛下が魔力を込めた《光の王冠》と、陛下が神に至るために作り上げた《至高天の玉座》が、修復された状態で保管されている。宰相殿はそれらを使ってネモフィラを王に新たな神にするつもりだ」
 ネモフィラが無理やり王冠を被せられ、力尽くで玉座に据えられる様を想像し、リトル・ガーベラは恐れ慄いた。
「ガーベラよ。宰相ラメド殿の心と願望は、かつての私と同じように狂気で満たされている。罪を重ね、国も民も救えず、自暴自棄になっていた私は、ラメド殿に心を救われた」
 捨てられた地の墓所の焚火で見た、あの勇者の記憶の夢を思い出し、ガーベラは息をのむ。
「だからあのお方を慕い、その願いに賛同し手を貸してきたが……今はもう、手放しで肯定は出来ない」
 しばし沈思した後、捨てられた地の大精霊はまた言葉を続けた。
「何故なら、あのお方の願いは、この星の子の時代を、いや、それどころか、お前たちの存在そのものを否定することになるからだ。ラメド殿は『全てを初めからやり直すため』にネモフィラを求めている」
……そんなの、止めなくちゃ」
 親愛なる友を攫った書庫の大精霊の目的に、そして、かの大精霊の願いが齎す恐ろしい未来に、ガーベラは居ても立っても居られなくなった。
「何がなんでも、大賢者様を止めなくちゃ。 これまでの冒険が、ネモとの思い出が無かったことにされるなんて、絶対に嫌よ! その宝物庫の場所を教えて!」
「ああ、案内しよう。あそこは普段以上に強固な魔術で守られている。故にだ。私とお前で特別な秘技を使うぞ」