【#深淵覗きの断章】But It Is Not This Day

アレフ=レーシュ編、最終作。
夢を介して、『捨てられた地の大精霊の記憶』を見たガーベラとネモフィラ。
目覚めた彼らに、空の王国と星の子どもたちの運命を揺るがす試練が待ち受ける。

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※戦闘・流血描写を含みます。

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


 同じ頃、捨てられた地の骨だらけの墓所。
 その隅の、岩に隠れた安全な焚火の傍で、リトル・ガーベラは荒れ地の勇者の昏い夢から目を覚ました。
「捨てられた地黄金の荒れ地の大精霊様……最も美しく最も恐ろしい、夕闇の地の勇者様。大昔にあんな思いをしてきて、私たち『残り火』に何を望んでいるのかしら」
 身に纏う暗黒竜ケープと共に、凝り固まった肩や背中や腕を伸ばしながら、ガーベラはひとりごちる。
「あのひとは、星の子のいる今の王国を、どう思ってるのかしら……キミはどう思う?」
 傍の地面からゴソゴソと起き上がった、温厚な“煤無し”の闇の蟹に尋ねてみるが、かの子の“獣の力”を用いても、そのキイキイ声の意味は理解できなかった。
 だが、蟹たちの鳴き声や足音、遠くの暗黒竜が出す唸り声や殻の擦れる音の只中に、ガーベラはある『言葉』を聞き取った。

『タ す ケ て』

 その不安定で小さな、怪しい声は、星の子のものでもなければ精霊のものでもなかった。

『タけて』  『すけテ』  『タァァァァすケて』

「こんな場所で、光の生き物? でも、なんか違うような……うーん?」
 鳥、マンタ、クラゲ、魚、楽園のエルダーマンタ、ウミガメ、巨大魚。
 マッシュヘアを掻きながら、リトル・ガーベラは、これまで“獣の力”を介して意思疎通してきたあらゆる光の生物たちの声や思念の響きを思い浮かべた。
 だが、それらのどれにも似ているように思えて、当てはまらない。
 普通の星の子どもなら、警戒心や恐怖を抱いて逃げ出すのが正常な反応だろう。だがガーベラは怖いもの知らずな『深淵覗き』は、勇気と好奇心と仁義に導かれるまま駆けだす。
 その小さな身体は金の炎を纏い、精霊より一回りも二回りも大きい純白の獣【白イタチのガーベラ】を模した、外つ国伝承の“人狼”めいた巨獣へ姿を変えた。
 ふわふわの長い尻尾を揺らす【獣のガーベラ】は、甲高い咆哮で『声』に応えると、威嚇し突撃してくる暗黒竜たちをひらりと躱し、墓所の断崖を駆け上った。