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チーバオ(QiBao)
2024-01-08 02:03:10
21800文字
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Sky二次創作『深淵覗きの断章』
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【#深淵覗きの断章】But It Is Not This Day
アレフ=レーシュ編、最終作。
夢を介して、『捨てられた地の大精霊の記憶』を見たガーベラとネモフィラ。
目覚めた彼らに、空の王国と星の子どもたちの運命を揺るがす試練が待ち受ける。
⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※戦闘・流血描写を含みます。
Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作
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「
……
そのために、この『玉座』と『王冠』で、オレを新しい神にしようってのか?」
書庫の地下、秘密の宝物庫。
魔術封印が施された金属製の大扉を背にし、黒い石と黄金でできた《至高天の玉座》と、その座面に安置された《光の王冠》の前で、ネモフィラは書庫の大精霊と対峙していた。
「はい」大精霊は喜んで肯定する。
「この玉座は、朝露フェリシアをはじめとした、アレフへの信奉の厚い子らのお蔭で修復できました。彼らはアレフの復活を待ち望み、彼らの黄金の血を玉座に捧げたのです」
そう言って、書庫の大精霊は愛おしげに玉座を撫でる。
「そして、最もアレフに近い残り火が
……
宙の意志
メガバード
に愛されしアレフの後継こそがあなたなのです、ネモフィラ。あなたが再び光の王冠と至高天の玉座を得たならば、あなたの望むままに、欠片たる全ての星の子は終わりなき贖罪の使命から解放され、彼らの生命はあなたのものになる」
大精霊はネモフィラに迫り、身をかがめ、かの子の頬に両手を添えた。
「そして、あなたは新たな神
―
新たなアレフ=レーシュとして過去をやり直せる。世界と我らの絆は取り戻され、空の王国は蘇り、銀河の煌めきは永遠となる! わたくしは、今度こそ過ちを犯す事なく、あなたと共に栄華を取り戻したいのです! 我らの過ちを知ったあなたなら、過ちを犯すはずがないのですから!」
熱弁を振るう大精霊に対し、ネモフィラはただ黙し睨んだ。
あの大賢者の双眸は、熱意と狂気で銀色に燃えている。ネモフィラではなくアレフ=レーシュの残り火しか見ていないのは、先王に対する忠誠と愛情、そして王を喪った悲しみの深さ故のこと。
それでも、ネモフィラの胸中では、怒りが共感を遥かに上回った。
「テメーらの苦しみや望みは理解できる。王国の滅びを、アレフの死を目の当たりにしたのなら、そう望むのはおかしい事じゃねえ。けどよ、理解はできても、賛同できるか否かは別だぜ!」
そう言い放ち、大精霊の両手を強引に振り払う。
「
……
なんですって?」
呆気にとられる大精霊に構うことなく、ネモフィラは怒鳴り続ける。
「『過ちを犯すはずがない』とテメーは言うが、本当に繰り返さねえ保障があんのか? 今後王国を滅ぼす度に、何度も残り火の子を玉座に据えてやり直す気か? オレが他の星の子を、ガーベラを犠牲にすると思ってんのか?」
親友の名を出した瞬間、書庫の大精霊は微かに体を振るわせた。
「オレたちの
……
全ての星の子どもたちの生死の在り方を、一纏めに悲劇だと決めつけられてたまるか! 何より、ガーベラとの出会いが無かったことにされんのはッ! メチャクチャ腹立つに決まってんだろーが!!!」
ネモフィラの渾身の叫びに、応える者が現れた。
「同感だ!!!」
それは、背後の大扉の向こうにいるガーベラだった。
書庫の大精霊とネモフィラが振り向くのと同時に、激しい破壊音と共に魔術封印が砕け散り、大扉がひしゃげ、庫内側に脱落する。
入ってきたのは、獣のガーベラと捨てられた地の大精霊。
彼らの右手は、青白く輝く魔力を纏っていた。
「まさか今のは
……
『
月光拳
げっこうけん
』?」気づいた書庫の大精霊は驚愕した。
それは、捨てられた地の大精霊だけに授けた秘儀の一つ。
月光の如き魔力を拳に纏わせ、あらゆる守護の魔術を無効化して対象を破壊する技である。
そんな特別な技を、どうして
……
書庫の大精霊は、リトル星の子の姿に戻ったガーベラを睨んだ。
「大賢者様。あなたの願いは、再び愛し子に会いたいという思いは、痛いほど解かる。でも、ごめんなさい。私は、美と驚異と業に満ちたこの世界に魅せられた。ネモや他の友達とも、精霊たちや大精霊様たちとも繋がって、空の王国で沢山の思い出を作れた。それを全部無かったことにするのは
……
皆の空の旅を勝手に終わらせることは、絶対にできない!」
リトル・ガーベラはネモフィラの前に歩み出て、書庫の大精霊を見上げた。
「いつの日か、全ての星の子どもたちの使命が果たされるか、『生まれ変わりのない死』を迎えるかして、空の旅を終える時が来るかもしれない。私やネモが書き記した旅の記録も、王国の各地に残した痕跡も、全て消えて忘れ去られるかもしれない。けれど、それは
……
今日じゃないわ!」
書庫の大精霊は、虚ろな目でガーベラを見下ろした。
「ああ、こんなことになるなら
……
」
怒りで声を震わせながらガーベラに歩み寄り、振り上げた右手に一振りの光の剣を出現させる。
「はじめから
……
お前をネモフィラから引き離せばよかった!」
書庫の大精霊が剣を振り下ろそうとする寸前で、孤島の大精霊と雨林の大精霊がガーベラを庇う様に現れた。
虚を突かれた書庫の大精霊は、そのまま捨てられた地の大精霊に抱え上げられた。
「放して、ツァディ!!! どうしてあなたまでこんなことを!?」
光刃を突きつけて喚く宵闇の賢者に、荒れ地の勇者は囁いた。
「今度は私があなたを止める番だ、ラメド」
「
……
ッ?!」
「これ以上はいけない。あの時の私のように引き返せなくなってしまう。このツァディは、深淵覗きたちと同じく、過去をやり直すことを望まぬ」
賢者は驚きのあまり目を見開き、その手に握ぎる光の剣は溶けるように消滅した。勇者はそっと賢者を地面に下した。
「あなたも、アレフ=レーシュの真の帰還を、過去をやり直すことを望んでいた筈では?」
戸惑う賢者の問いかけに、勇者は跪いて答える。
「確かに望んではいた。だが私は、新たな神によってやり直される過去ではなく、ラメドと共にある
現在
いま
を選ぶ」
勇者の真摯な言葉に、賢者は光の涙を滲ませる。勇者はさらに言葉を続けた。
「そして私は、深淵覗きをはじめとした星の子らがどんな時代を築いていくのか、この目で見てみたいのだ」
思わず姿勢を正すリトル・ガーベラに、ネモフィラは微笑む。
「私も『全てをやり直したい』と夢想したことがある」と雨林の大精霊。
「『陛下の幼い頃に、我が森であの鉱物を見つけなければ』と何度思ったことか。だが、王国は滅び、この世界は新たな世代
―
空を駆け星を紡ぐ子どもたちに託されている。彼らを守り、見定める事はあっても、過去の我らの過ち諸共無かった事にして良い訳がない」
「テスの言う通りじゃよ、ラメド」
孤島の大精霊は、視線を床に落とす書庫の大精霊の肩に手を置く。
「闇の嵐の中心にいる陛下の一部も、星の子らの時代を望んでいるのではないかのう?」
その時。宝物庫内の全員が、一斉に至高天の玉座を見た。
玉座と光の王冠が光を発し、ひび割れ始めたからだ。
*『ネモフィラ、ネモフィラ
……
我が片割れ、我が後継よ
……
』*
皆が声を上げて困惑する中、ネモフィラだけが、王冠から響く声を聞き取った。
王の影と似た言葉遣いの、子どもの声であった。
*『嵐の中へ、我が元へ来ておくれ。我が願いを、貴公に託さねば
……
』*
至高天の玉座と光の王冠は砕け、謎の声は止んでしまった。
「ネモ、どうしたの?」とガーベラ。
瓦礫と化した玉座を見つめたまま、ネモフィラは答えた。
「呼ばれたんだ。オレたちが『原罪』で死んだ後にハグするアイツ
―
アレフ=レーシュの一部に。『我が願いを、貴公に託さねば』って言われた」
孤島、雨林、捨てられた地の大精霊は驚き、書庫の大精霊は目を伏せる。
「あの子は、愚行を重ねたわたくしではなく、あなたを信じることに決めたのでしょう。ええ、きっとそれで良いのです」
書庫の大精霊の言葉は寂しげであったが、言葉の端々は暗雲が吹き散れたかのように清々しくもあった。
「玉座と王冠を壊したのは、あの子の願いが私の願いと異なる証です。どうか、天空であの子の願いを教えていただけますか?」
「おう、任せときな!」ネモフィラは快く頷いた。
「それじゃあ」リトル・ガーベラはネモフィラに手を差し出す。
「早速一緒に『原罪』へ行こう! あっ
……
でも
本拠点
ホーム
で一休みして、着替えてからになるけど」
「
……
ありがとうよ、ガーベラ。まったく、一日で色々起き過ぎだぜ」
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