河童の皿箱
2025-04-02 09:42:52
33860文字
Public 遊戯王:長め
 

娑楽斎が端午の節句を祝うだけ

娑楽斎が端午の節句を祝うだけ
※設定に誤りがある部分あり。未修正。



 深い深い森の奥へとトラックは進んでいく。本当にこっちでいいのだろうかとファイアが不安を覚え始めた頃、森の木々を抜け、そこに広がっていたのは広大な棚田であった。トラックは起伏のある細い畑道をずんずん進み、辿り着いたのは大きな蔵の前。そこに居たのは、赤い髪の少女のハレと、青い髪の少女のニニである。トラックに気が付いたハレはぶんぶん手を振り、誘導すれば、トラックは止まった。

 ハレじゃあないか! トラックから降りたファイアは見覚えのある顔に目を丸くし、声をあげた。お前、こんなところに住んでいるのか、と。ハレは答える。こんなところじゃなくて、アタシの家の領地! そんな様子に、ラゼンは、知り合いなのか、と。そして続ける。娑楽斎も顔が広いんだな。ハレとの再会を喜ぶファイアの横で、まあなと笑う娑楽斎。更にその隣で、ニニがはにかむ。娑楽斎さんは、私のお母さんと、ハレのお母さんとお友達なの。なんだか意気投合しちゃったみたいで。
 ラゼンはふと考える。ハレはここを家の領地と言った。そして、ハレの母親と仲がいい……。おい、それってつまり、領主の妻と友達ってことか? 娑楽斎は何でもないかのように、おう。あぁ、ハレの母さんが領主だぞ、と。ニニは続ける。私のお母さんも領主よ。もちろん、ハレの家とはまた別のね、と。おい、御令嬢じゃねぇか。想像以上に壮大な話になってきた様な気がする。ラゼンは不意に、眩暈を覚えた。が、とりあえず仕事のことだけ考えよう。何を運べばいいんだ。
 娑楽斎が指さしたのは、蔵の中の米俵ふたつである。なんだ、たったそれだけか。これじゃあ俺たちが来るまでもなかったんじゃないか。ファイアが呟くと、娑楽斎は首を振る。いやいや違う違う。これからお前たちには振舞う菓子の材料を作ってもらおうと思ってさ。ほら、あっちに石臼があるだろ。それと、トラックに積んでる空き箱はこの蔵を借りて入れさせてもらう。詳しい手順はハレとニニに聞いてくれ。俺はふたりの母さんたちと話付けんのと、他にもここでやる事があるから……振り回して悪いが、頼んだぜ。そういうや否や、娑楽斎の携帯が鳴り、そそくさと行ってしまった。

 残された男2人と少女2人。ハレが説明を引き継ぐ。米俵ひとつ分は米粉にしてお菓子に、もう片方はおこわとお餅にするからそのままね。今日は粉ひきして、明日他の材料も一緒に会場まで持って行って、前日にお菓子作りするみたい。で、石臼なんだけど……
 何か言い辛そうにしているハレに、ニニが続ける。製粉機があったんだけど、数日前に急にうんともすんとも言わなくなっちゃって。直すのは部品が無くて間に合わない、シーズンだから貸出も空いてない。かといって、新しく買うと決めるのは早すぎるし、石臼を使うにも里の男達は種蒔きとかで忙しくて手が回らない。
 ハレが拳を握る。で、娑楽斎さんに相談したら、ファイアさんとラゼンさん、に来てもらったんだ!
 ほぉ、なるほど。ラゼンは頷く。だからあいつ、急にこんな話を持ち出したのか、と。とはいえ、2人の男にとってやる事は1つ。契約通り、言われたことをやるだけだ。ファイアは腰に手を当てて、気合を入れる。早速取り掛かろうぜ。使い方を教えてくれ。