ゑ/圓堂
2025-03-26 23:40:55
27579文字
Public 管理NO3250本丸
 

【刀剣乱舞】その愛を何と呼ぶ・前編<web再録>【創作男審神者×一文字則宗】

2021年8月インテックス大阪開催の閃華の刻で頒布し現在は完売となったさにごぜ本のweb再録となります。こちらは前編となります。
再録にあたり(色々ととんでもなかったので)そこそこ加筆修正を行っています。
刀剣乱舞というジャンルにきて初めて出した、最初のさにごぜ長編です。さにごぜが特命調査慶応甲府を経て邂逅するまでの物語を綴りました。
本をお迎え下さった皆様本当にありがとうございました。



***


——特命調査?急だな」

蜂須賀虎徹から受け取った封書の中身を確認し、主は怪訝な表情を浮かべた。


封書の中身は蜂須賀虎徹の見抜いた通り特命調査任務の報であった。任務開始の入電の日程は明日となっている。
従来の特命調査の報せはもっと早い段階で届いていた筈だ。主が言うのも最もで、異例の事態である。

「通常は入電まで一週間くらい余裕があった筈だ。余程急を要する任務という事か、或いは政府連中の正月ボケか……
「どちらにせよ、明日からの日課は予定の変更が必要そうだね」
「新年早々勘弁してもらいたいな、ったく……

主が文句を零しながら封書の頁を次へと移す。ぴたりと主の挙動全てが制止する。紙を手にした指先だけが微かに戦慄いた。
主の異変に気付き、怪訝な顔をしながらも蜂須賀虎徹が主の手元をそっと覗き見る。



『調査対象:慶応三年 甲府』

『放棄サレシ歴史ニ改変ノ兆シアリ』

『監査官ノ指示ニ従ヒ、速ヤカニ調査ヲ開始セヨ』



タイプライターか何かで印字された、インクの滲みが所々に目立つ文字が蜂須賀虎徹の目に映る。



「慶応三年……いつ頃の出来事だろう」
……蜂須賀、」

主の背後で呟く蜂須賀虎徹に主が呼びかける。
己の名を呼ぶ主の声の、そのあまりにもがさがさに掠れた声音に、蜂須賀虎徹は思わず身体を固くせずにはいられなかった。動揺を抑え込み、平静を装って言葉を返す。

「、何だい?」
……新選組の連中に、声をかけておいてくれ。それと……明日以降あいつらを日課から外して組んで欲しい」

字面だけを追えば、普段と変わらぬ端的な指示だ。しかし蜂須賀虎徹はその奥の事情を察し、同時に表情を曇らせた。
それは決して、かつて新選組局長・近藤勇の愛刀と伝えられた長曾祢虎徹の事を思ってではない。蜂須賀虎徹の胸中によぎるのは、主が未だ囚われ続けている彼の過去だった。

……解った。説明しておくよ」

蜂須賀虎徹は主の返事を待つ事無く、執務室を後にした。