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ゑ/圓堂
2025-03-26 23:40:55
27579文字
Public
管理NO3250本丸
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【刀剣乱舞】その愛を何と呼ぶ・前編<web再録>【創作男審神者×一文字則宗】
2021年8月インテックス大阪開催の閃華の刻で頒布し現在は完売となったさにごぜ本のweb再録となります。こちらは前編となります。
再録にあたり(色々ととんでもなかったので)そこそこ加筆修正を行っています。
刀剣乱舞というジャンルにきて初めて出した、最初のさにごぜ長編です。さにごぜが特命調査慶応甲府を経て邂逅するまでの物語を綴りました。
本をお迎え下さった皆様本当にありがとうございました。
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一面に飴色をした洋風建築の部屋の中。その中心に設えられた応接用のソファの上で、一振りの刀剣男士が手にした書類の文面に目を走らせている。
書面は、現実世界でいうところの履歴書及び職務経歴書とよく似た書式である。冴えない風貌の男の顔写真が一枚張られ、その横に彼のものであろう個人情報がずらりと並んでいる。
ただ一つ、氏名の欄に管理番号と思われる数字の羅列が並んでいる事を除いて。
「で、この男が今後僕の主になるのかい?」
書類から視線を移す事無く、彼は部屋の重々しい造りの扉の前で音もなく立ったままのスーツ姿の男へ話しかけた。スーツにサングラス姿のボディーガードのような風体のその男は返答どころか、眉根一つ動かす事無く直立していたが、男士が気に留める様子はない。どうやら彼と自身の間に取り決められた制約を理解しているらしい。
「全く、お前さん方も随分と酷な事をしてくれるじゃないか」
ソファの男はやっと手にした書類から顔を上げ、スーツの男にやれやれといった様子で語りかける。相変わらず返答は無いが、彼は別に必要とはしていないらしく、そのままつらつらと勝手気ままに喋り始める。
「この男と僕が邂逅した時、どういった事態が想定されるか。それすら織り込み済みで僕にこやつの本丸へ赴けと?」
ソファから立ち上がった刀剣男士は、まるで舞台役者のように部屋の中を悠然と歩きながら、少しばかり芝居がかった口調で語り続ける。
「彼が時の政府を慈悲深いと思うか、残酷だと思うか
——
誰にも判りはしないのだよ、現時点ではね。
……
どうやらそこまで馬鹿な男ではないようだから、お前さん達に反旗を翻すなんて事は無いと思うが。
……
ただ、気は進まんな」
男は二重回しの裾を翻し、スーツの男に向き直る。色素の薄い顔立ちの、上等な絹糸の如くしっとりときらめく金色の髪の合間から覗く、透明な硝子玉のような瞳がその立ち姿を見据える。
「
……
まあ、こんな事をこんなところでお前さんに言ったところで詮無い事だ。ひねくれじじぃの独り言だと思ってくれ」
一拍置いて睨め付けるような視線を解いた彼は、軽快な口調と共にスーツの男の方へと歩み寄った。そして、手にしたままだった書類を男へ差し出す。
初めからスーツの男はただこの書類を彼に渡し、読ませ、そして読み終えた後に回収して去るためだけに遣わされた人物だったようである。彼から書類を受け取ると、一瞥も一礼すらもなく大仰な扉を開けて部屋を出て行った。
一振り、部屋に残された彼は暫く、手持無沙汰な様子で床の上を彷徨う。
不意に立ち止まり、懐から扇子を取り出した。彼がこの世界に顕現したその時から、それがあるのが当たり前のように持っていたものである。
そっと開いて、描かれた柄模様に目を落とす。
「
……
愛、か」
誰にともなく呟き、模様をそっと指でなぞる。
真紅の地紙に、西洋人形を思わせる白磁のような肌の色が眩しいほどに映える。
「まだ見ぬ主よ、お前さんの愛とやらは一体どういう形を成すのだろうな」
零れるような言葉は、堅牢な部屋の籠る空気の中で漂い、すぐに霧散した。
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