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ゑ/圓堂
2025-03-26 23:40:55
27579文字
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管理NO3250本丸
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【刀剣乱舞】その愛を何と呼ぶ・前編<web再録>【創作男審神者×一文字則宗】
2021年8月インテックス大阪開催の閃華の刻で頒布し現在は完売となったさにごぜ本のweb再録となります。こちらは前編となります。
再録にあたり(色々ととんでもなかったので)そこそこ加筆修正を行っています。
刀剣乱舞というジャンルにきて初めて出した、最初のさにごぜ長編です。さにごぜが特命調査慶応甲府を経て邂逅するまでの物語を綴りました。
本をお迎え下さった皆様本当にありがとうございました。
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「主、一寸いいかい」
「おう、どうした?」
その日の夜、主の執務室を蜂須賀虎徹が訪れた。時刻は既に真夜中に足を踏み入れている。
「珍しいな、こんな時間に」
「何だか寝付けなくてね」
この執務室へ出入りする刀剣男士はほぼ蜂須賀虎徹ただ一振り
——
そういっても過言ではない。
朝に日課と月課の確認をし、夕食の頃合いを見計らって一日の報告をし夕食へと主を連れ出す。それだけでも、全刀剣男士の中でトップである。主を好かない刀剣男士達はまず近寄りもしない。更に、主とそれなりに親しくしている次郎太刀や大般若長光、日本号、長曾祢虎徹辺りも、わざわざ執務室まで呼びに行って酒の相手に誘う事はない。
それは長きにわたる主の態度によって築かれてしまった、彼らの間の見えない壁なのだろう。蜂須賀虎徹はそう考えている。
「
……
日光一文字が君の態度に苦言を呈していたよ」
「はは、だろうな。あの手のには大体嫌われるんだ。人にも物にも」
主は机に向かっていた身体を回転椅子ごと蜂須賀虎徹の方へと向ける。そして唇に挟んだ煙草をそのままにへらりと笑った。
蜂須賀虎徹にとっては最早見慣れた光景だ。ここまでは予定調和なのだ。
「で、わざわざその報告に?言い忘れたってほどの事でもないだろ」
「俺を誰だと思ってるんだい?こんな報告君にしたって無駄の極みだって事くらい百も承知さ」
「だろうな」
乾いた笑いを煙に乗せる主を尻目に、蜂須賀虎徹は彼の背後に備え付けられたソファへと腰を下ろす。すっかり主の寝床と化している、二人掛け程度のサイズのものだ。
普段は立ち話だけで終わらせるのが常の彼のその行動に、主は驚きを隠せなかった。しかし蜂須賀虎徹は主の様相を気に留める事もなく話を続ける。
「
……
君に昔言われた言葉を思い出したんだ」
「?」
「『名前だけがお前の価値を決める訳じゃない』」
「
……
言ったか?覚えてねぇな」
咥え煙草を長く武骨な指で捕えて、主はあからさまにとぼけてみせる。
そんな彼に蜂須賀虎徹は温和な顔立ちを破顔させた。
「主が忘れても俺は忘れないよ。この言葉があるから、俺はたとえ君がどんな誹りを受けようと、君の事で僕が八つ当たられようと、こうして近侍として支えているんだから」
「何だ、耳が痛い話になってきてやしないか」
「あはは、自覚があるならそれで充分さ。
……
本当に、感謝しているよ」
「
……
本当にどうしたんだ一体。何かあったか?」
穏やかな声音で語る蜂須賀虎徹に、主は探りを入れるような訝しげな色を隠そうともせずその表情を窺う。
しかし、蜂須賀虎徹は柔らかな笑顔を崩す事なく、首を横に振った。
「そんな事はないよ。ただ好い加減、君という人間をもう少し他の刀剣男士達にも理解してもらえたらな
——
とは思っている」
「
……
そんなに歪んでるか、この本丸は」
「そういう訳じゃない。俺以外にも君を主として認めている刀剣男士はいるさ。
……
ただ、そうじゃないもの達に誤解されているままなのは、俺としては少し悔しい」
ぽつりと零れる溜息のような蜂須賀虎徹の心情。それを間表に受けて、主は無為に指の間に挟んでいた煙草を灰皿へと消しもせず置いた。
紫煙が狼煙のように真っ直ぐに天井へと向かう。
「君だって、色々な想いを抱えてここまで来たんだって事を、俺は皆に知って欲しい」
「
……
いいさ、その気持ちだけで俺には十分過ぎる」
主は軋んだ音を立てて回転椅子から立ち上がると、引き摺るような足取りで廊下へ続く障子戸へと向かう。そして静かに外の世界へ向けて開いた。
正月も疾うに過ぎ、いよいよ本格的に冷え込む冬の夜の冷気が、主の横をするりとすり抜けて執務室に忍び込んだ。
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