ゑ/圓堂
2025-03-26 23:40:55
27579文字
Public 管理NO3250本丸
 

【刀剣乱舞】その愛を何と呼ぶ・前編<web再録>【創作男審神者×一文字則宗】

2021年8月インテックス大阪開催の閃華の刻で頒布し現在は完売となったさにごぜ本のweb再録となります。こちらは前編となります。
再録にあたり(色々ととんでもなかったので)そこそこ加筆修正を行っています。
刀剣乱舞というジャンルにきて初めて出した、最初のさにごぜ長編です。さにごぜが特命調査慶応甲府を経て邂逅するまでの物語を綴りました。
本をお迎え下さった皆様本当にありがとうございました。




***

突如現れた時間遡行軍なる者達がこの世界の歴史を脅かし、それらに対抗すべく『審神者』と呼ばれる国家資格取得者が、政府直轄機関の一職業として一般認知され始めてから早数十年。

現代世界とは少しばかり違う次元に存在する世界で、審神者と呼ばれる者達は、『本丸』という名の区画内で生活をしながら勤めに励む。
審神者には『刀剣男士』と呼ばれる名だたる日本刀の付喪神達が部下として与えられ、彼らの主となって部隊を指揮し時間遡行軍の殲滅にあたるのが、審神者達の使命である。

しかし、審神者とて所詮は人間である。いくら現代における最難関試験を突破し資格を得たとて、必ずしも全員が志高く従事している訳ではない。





ここに一人の審神者がいる。

彼は本丸へと就任してから数年、ただ「いかに楽をして合格点ラインを保つか」に重きを置いて日々を遣り過ごしている。合理主義、といえば聞こえはいいが、彼のそれは些か度を越えていた。

よれよれの開襟シャツとスラックス、伸ばしっきりの髪を無造作に襟足で結い、下顎には無精髭、咥え煙草。それがこの本丸の主の基本スタイルである。
とはいっても、その姿を部下達が見かけるのは起床後に顔を洗いに行く姿か夕食時か、もしくは風呂に向かう姿くらいのものだ——というのも、それ以外の時間は殆ど『執務室』と呼ばれる彼の仕事部屋に籠りきりだからである。

彼は、自身の部下である刀剣男士達とのコミュニケーションが他の審神者と比較しても圧倒的に少ない。辛うじて夕食だけは皆で食卓を囲む事になっているため、その際に少しばかり言葉を交わす程度だ。一部の刀剣男士とは酒を酌み交わす事こそあれど、それも年に数度あるかないかといった具合である。
刀剣男士達の中にはそんな主の振る舞いを快く思わない者もいたが、それでも何とかぎりぎりの均衡を保ちながら今日までこの本丸は持ちこたえてきた。